〈後編〉紺色彼氏とオートクチュールプラン

18000字ほど〈後編〉 一次創作BL「レンタル彼氏」物 社会人CP 眼鏡年下大型ワンコ×紺色が好きな、しっかり者だが変わっているところがある美人 ハンドルネーム上の名前は櫂人(かいと)×透萌歌(ともか)です。一日デートと後日談。


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 来た道を引き返して、石段を下りていく途中には僕は櫂人くんの腕にぎゅっとくっついていた。
 石段を下りる前に、その傾斜を見下ろした櫂人は「大丈夫か?」というように僕を見たから、それに甘えさせてもらった(石段が長く、僕は立ち止まって見下ろしてちょっとだけ気持ち悪くなって、くらっとしていた)。

 休日の、帰りの客で混んだ電車に乗りこむ。
 並んで肩をくっつけて立った。夕焼けの薄らとした赤みはもうなくなりかけ、空はだんだんと暗く、夜のとばりがあちこちからおりて、燈る明かりが目立ち始める日の暮れた街並みの走る景色に重なって、残念そうな自分の顔が窓に映る。人がすし詰めで身動きもとれないなか、僕はぼんやりと、宵闇の街と、予定が狂ってしまって、残念で、悲しそうな表情を見ていた。

 最終目的地は眺めの良い観光スポットで、夕日を見て、それから地中海風バルで夕食というデートコースだった。
 数年前にオープンした、新名所である観光スポット『天越てんこえるタワー』の展望台から、美しい夕日の眺めを楽しむという予定は、もう陽が落ちてしまったから、無理で、地中海風バルは予約がしてあるので、その時間に合わせて、行かなくてはならない。
 僕が「しおり」描いた、夕方の陽光に満たされた景色をふたり、一望して、そのあと食事をして解散、というデートとして完璧なプランは完全に崩れ去ってしまった。何があるかわからないから当日券にしようかと前売りの休日料金の展望台チケットをあらかじめ買っていなかったのだが、それが、せめてもの、微量な救いかもしれない(前売り券でも二人分になるとそこそこ高いから、櫂人くんに前日に購入させてしまわなくてよかった)。
 とりあえず、予約してある地中海風バルは、遅らせることができないから、もうその時刻は迫っていた。
 こんなことなら、夜景の見えるタイプのレストランをチョイスするんだったと僕は後悔した。
 地上一階の楽器演奏タイムがある地中海風バルは、雰囲気は良いけど、夜景は楽しめない。
 僕はここで自分が暗い顔をしていてはだめだ、空気が落ちこんだものになってしまう、ここから気を取り直して、とデートプランが崩れ去って悲しい気持ちをあまり引きずらないようにしたかったけど、どうしても、残念な気持ちが消えてくれなかった。
 だから、会話のテンポも悪くなる。というより僕が「金を返す」などと変なことを言い出してからずっと、悪い。言葉数がとても少ない。
 自分は、きっとしょげて、落ちこんだ顔をしているから、櫂人も話づらくて居心地も良くなくて、いたたまれないのだろうと僕はバルの奥の席についても櫂人のほうをあまり見られなかった。
 櫂人がアルコールメニューを選ぶ。僕は下戸に近いからノンアルコールドリンクを頼んだ。