〈後編〉紺色彼氏とオートクチュールプラン

18000字ほど〈後編〉 一次創作BL「レンタル彼氏」物 社会人CP 眼鏡年下大型ワンコ×紺色が好きな、しっかり者だが変わっているところがある美人 ハンドルネーム上の名前は櫂人(かいと)×透萌歌(ともか)です。一日デートと後日談。


 携帯を取りだして、昇っていくゴンドラの窓のした、黒い海へ夜の光をゆらゆらとこぼしながら建て混んでいる街を撮る。
 空が近くなる、と窓から上空を見た。月を探して、ところどころ雲がかかっているとわかる。
 景色にばかり夢中になっていると、ふいに窓に映った櫂人と目が合った。無表情に近い、ほほえましいものを観察するような顔つきで僕を見ていた。その視線に捕えられたみたいに、窓越しに長く見合った。
 キシキシと鳴って、ようやっと、僕は振り返った。

「紺色と藍色が好き?」

 ほほえましいものに訊ねる調子で櫂人は静かに言った。
 僕はまた、はっとして、居ずまいを正すようにしていちどをおいた。
 そしてまず、藍色の蘊蓄を語る。藍という染料、染めの歴史。
 藍色には染めの具合によって種類が四十八色もあるということ。縁起の良い色としても使われること。
 その、四十八種類の中でいちばん深い色、最も深い藍色が留紺とめこんという。
 この知識を披露すると、いつでも会話は広がった。色の組み合わせやカラー診断、ファッション、コスメの話にもなり、話が弾むのだ。
 ひととおり話して、櫂人の「ふうん」というような冷静な反応に、ひとりうなづいて、これまでなら好きな色を訊くし、配色美の文化である重ねの色目という色彩の話題も出すのだけど、この場では、僕は別のことを言った。
「僕は夜空は紺色だと思う」
 だんだんと天辺に昇る窓の外を見ながら「夜空の色……」とひとりぼんやりとつぶやく。窓に映る、なんと返そうか迷っているような表情の櫂人に僕はにこっと笑いかけた。
 眉をひそめ、気難しいことを言う声音で「となりに座っても?」と僕の横の空いた空間を、そっちにというように見て櫂人は言った。
 ああさっきの手の動きはそういう意味かと、気が利かなかった、と僕は思った。狭いゴンドラ内を見上げ、まあ頑丈そうだし二人が片側に座っても傾かないかと考え、だが櫂人が動くより僕が動くほうが揺れないだろうと、そっと立ち上がって櫂人の空いている右の空間に座った。