〈後編〉紺色彼氏とオートクチュールプラン

18000字ほど〈後編〉 一次創作BL「レンタル彼氏」物 社会人CP 眼鏡年下大型ワンコ×紺色が好きな、しっかり者だが変わっているところがある美人 ハンドルネーム上の名前は櫂人(かいと)×透萌歌(ともか)です。一日デートと後日談。


 ゴーグルなどをかけることも無く、これはどういう仕掛けでここまでリアルに映し出しているんだろう。
 こんなに、リアルな空間を上映する技術なんて、想像できなかった。
 すっぽりと自分が巨大なアクアリウムのなかに居るような、不思議な蒼白い『幻影』だった。
「すごい……
 僕は頭上の群れに手を伸ばかけたが、それが方向を変えて尾を揺らして指先を透明にすり抜けていき、びくっとした。
 触れられない、美しく、妖しく輝く魚たちが泳いでいる。
 アクアリウムのなかの水草や砂利のような足元に感触は無かった。
 だが、それが不可解に思えるくらいにリアルで、どこからかやってくる大きな気泡が次々、通り過ぎていく。
 会場は蒼白く、薄暗くて、なんとなく、ここではぐれたらいけないような、完全に姿を見失ってしまうような、怖い気がして僕は櫂人の手を離さないようにしていたのだが、こっちにやってくる一匹に目を奪われた。

 リュウグウノツカイと呼ばれている深海魚に似た、平たいシルエットの魚が白く透き通って悠々と泳ぎ去っていくのを眺めているうちに、僕は櫂人から手を離してしまった。

 そして自分の身体のそばに、月のような金色の小さい竜のような一体と、緑色で細長いヒレの付いた龍のような一体がくるくると回っているのに心を奪われ、魅入った。僕が腕を動かすと、それに沿うように回る。まるで、僕に懐くみたいに、その二匹が肩から腕へくるくると動く。
 使い魔みたいだ、と楽しくなって目が離せなくなり、二匹の様子をずっと見つめていた。

 時間がどのくらい経ったか、はっと気づいて、僕は櫂人を探した。
 すぐ近くに立っていた。
 ほっとしてすぐとなりに行こうとしたが、二匹がじゃれるようにまたくっついてくる。
 名残惜しく、ばいばいと手を振ると、動作自動感知AIセンサーのようなものが作動しているなのか、すっと身を引いて泳いでいった。それを見送り、僕は櫂人と手をつないだ。
「もう行きましょう」
 たぶん、ずいぶんここに、長居しているような、今日の最終目的地のプランを思い出して、僕は櫂人の手をひいた。
 だが、アクアリウム空間が広くて、出入り口の扉がどこか、すぐわからず、逆に櫂人に手をひかれて歩いた。
 よく見ると、出入り口付近には催事の係員とおぼしき数人がすっと立っていた。
 その数人が扉を開けてくれる。

 会場から出た途端、眩しくて、薄暗い空間と外の明るさがあんまりに違って僕はくらっとした。
 ちょっと酔ったかもしれない。泳ぎくるくると回っているのを見過ぎた。
 気持ち悪い感じで目眩がした。
 足から寒気がして、後ろに倒れそうになる。横の櫂人の腕に掴まるようにもたれ、そのまま、体勢を保てなくて、ずるずると落ちる。
 驚いたように、支えるようにがっしりとした腕が背中に回される。
……ちょっ…………ひんけつ」
 声を出すのも苦しかったが、伝えた。
 全身をきしめられるみたいにかかえられる。