〈後編〉紺色彼氏とオートクチュールプラン

18000字ほど〈後編〉 一次創作BL「レンタル彼氏」物 社会人CP 眼鏡年下大型ワンコ×紺色が好きな、しっかり者だが変わっているところがある美人 ハンドルネーム上の名前は櫂人(かいと)×透萌歌(ともか)です。一日デートと後日談。


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 またバスで駅まで戻り、電車でこのデートの最終目的地へ行く、というときだった。
 櫂人くんとときどき手をつないで駅前を見渡して歩いていると道向こうの細長い看板が視界にすっと現れた。
 遠い距離なのにそれはなぜかくっきりと見えた。
 白地に紺色の優美なフォントで

『幻影アクアリウム展』

 と書いてあった。大きな矢印とともに。
 おもわず立ち止まって、看板の端の文字を読んだ。
 この道を行くと催事館、イベントホールがあって、そこで期間限定で開催されているらしい。
 僕がそれをじっと見ているを、櫂人も横で気づいたらしい。僕の視線の先をたどるようにして少しかがんで顔を向ける。
 行ってみたい。でも「しおり」の予定にない。駅から移動する前に、どこかでひと息つく予定だ。

 移動時間に猶予はない。どこかに寄る余裕はない。なのに僕は猛烈に、『幻影』と『アクアリウム』という言葉に惹かれて行ってみたい気持ちになって動けない。
「行ってみますか?」
 こともなげにそう言う櫂人を、僕は見上げた。
 はい、と答えて、看板を目指してそろって歩き、大きな矢印の案内に従った。
 坂の階段とカーブの細い道路をやや時間を気にしつつ、急ぎ足だった。大きく看板を掲げたイベントホールの建屋が見えてきた。

 このイベントに人気が無いのか、知名度、告知に難があったのか、場所が悪いのか、人があまりいなかった。
 催事館の無機質な入り口の空間で、僕はどこに『幻影』の用意があるのかと、きょろきょろとして、受付で櫂人が入場料を払っている。
 会場の扉の前で「こちらは、お子様や高齢の方、バーチャル空間、3D空間に酔いやすい方はご注意ください」と係の女性が言い、リーフレットを係の男性が渡してくる。
 以前『デート』でテーマパークに行った女性とVRゴーグルを付けて簡単なシューティングゲームしたことがある。そのときには酔わなかったから、おそらく大丈夫だ。
 もしや櫂人くんはそういうのダメかも、と心配になって櫂人に訊いた。
 リーフレットをめくりながら櫂人はこちらに、ふっと笑った。
 少年のような、楽しそうな表情で
「ワクワクします」
 答えられて、僕は嬉しくなった。

 金属の扉が開かれる。分厚く重たく、頑丈な扉だ。