イヌノカニ
2026-01-21 09:14:38
31075文字
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【創作BL・未完・更新中】ぬいぐるみが安心毛布の魔法使い・ファンタジー・総受け(固定)

ファンタジー設定はフワッと。
これは長期休みになったら一日かけて、一気にアイディアをまとめたいと思います。

メモ
26/02/03から記録

26/06/08:更新
26/02/23:更新、修正
26/02/22:更新
26/02/21:修正・更新、26/02/20:修正・加筆・更新、26/02/08:加筆・更新、26/02/07:修正・加筆・更新、26/02/03:修正



――時間は戻り、現在。
騎士様は僕を抱えて、茂みに隠れると魔法陣を描き出した。
「俺だって転移魔法を使えるくらいの魔力はある。二人分は初めてだが、どうにかなるだろう。さあ、手を繋げ」

言われるがまま、差し出された両手に手を重ねる。
あれ?なんか、
疑問に思ったがすぐに地面があっという間に光に包まれた。

瞬きをするような一瞬で、僕は綺麗に片付いた部屋にいた。

「とりあえず、俺の部屋に来た。ここで一旦、作戦を練り直すぞ」

そんなことよりも、違和感が確信に変わり、両手を確認した後に、自分の体をペタペタと触る。
ない、ないっ……
呼吸が浅くなり、パニックになっていく。

「おい、どうした」
「騎士様、騎士様っ、僕のぬいぐるみがありません!」

両目から大きな涙の粒を流しながら、縋り付くように言う。

「なんだと!?少しの間、我慢できないのか?」
「僕はぬいぐるみがないと、ダメなんですっ、騎士様っ、騎士様っ、僕こわい、どうしよう、たすけて」
「くそっ」

騎士様はクローゼットの中から、制服のジャケットを取り出し、ベッドの上に置いてあった枕を二つ縦に並べて、そのジャケットを着せた。受けをベッドに連れていき、それを無理矢理抱きしめさせた後に、包み込むように布団でぐるぐる巻きにする。

「そ、それは、俺のぬいぐるみだ。ここは第二騎士団の宿舎で安全な場所だ。悪い奴はいない。俺がすぐに、お前のぬいぐるみを連れて帰ってくるから安心しろ」

照れたように言うと、彼は床に魔法陣を描き、消えていった。



攻めは、先ほど転移魔法を使った場所まで戻って来た。
「俺の魔力は、アイツほど膨大じゃないんだぞ……
愚痴をこぼしながら言うが、あたりを見渡しても、あのカメレオンのぬいぐるみはなかった。

ふと足元に先ほど書いた、魔法陣が目に映る。

彼が第二騎士団の副団長へ任命されたのは、本人は自身の努力と聡明さであると考えているが、野生の勘というのも鋭く、いざという時の危機回避能力に長けていることもあった。そのため彼が王族にアピールするために参加していた最も人手が足りてないと言われている第八騎士団の魔物退治に参加した際、類稀な危機回避能力で何人もの騎士の命を救ってきたのである。

彼はふと思い立って、その魔法陣を足で消した。
なんとなく、消した方が良いと思ったのだ。

しまった、こんな所で立ち止まっている時間はない。
早くあのぬいぐるみを持って帰らなければ、アイツがいつまでも泣いたままだ。

攻めはそのまま、あの最初に着いた庭の方へ走り出した。
カメレオンのぬいぐるみは意外とすぐに、飛び越えたところの柵の下に落ちていた。

それを拾うとすぐに自分の宿舎へ走って戻って行く。

↓ここはちゃんと書くならカットするが、消した事は性格面での描写なので、伏線ぽく見えないようにどうにかするか、伏線にして。
受けを探していた王子は、先ほどの場所に辿り着いたが、消えた魔法陣のおかげで騎士と受けの関係は結びつかなかった。非番なはずなのに城内を走り回る騎士に疑問を抱きながら、そんなことよりも受けを見つけ出すことが先だと、すぐに興味を失った。



部屋の扉を勢いよく開けると、びしょびしょに顔と、即興で作ったぬいぐるみを濡らしながら、上目遣いでこちらを見てくる受けが目に入った。
自分の服に縋るように抱きつき、「騎士様」と消えてしまいそうな声で言う姿に胸がギュッと締め付けられた。

可愛い。

いや落ち着け、俺。
コイツは歳は二十を超えている成人男性だ。骨が浮き出ているほど痩せ細っていて抱き心地も悪い。自分の好みとは真逆だ。
そしてなりより、あの憎き男と顔が全く一緒ではないか。落ち着け、俺。コイツに可愛いと思うことがあるなんて、あってはいけない事だ。

「ほら」

それだけ言いカメレオンのぬいぐるみを渡すと、彼はおずおずと手を伸ばして受け取る。俺の服を着せた枕に抱きついたまま。か、かわい「騎士様」

受けに声をかけられて、なぜだか緊張してしまう。
「ありがとうございました。いっぱい泣いてしまってすみません。落ち着いてきました」

「い、良いんだ。気にしていない、それよりも、ってあぁ!?俺の制服がビショビショでシミが出来ているじゃないか!」
「ご、ごめんなさい」
「他のは洗濯中で明日着るのはこれしかないんだぞ!?」
「騎士様、一回僕の家に帰っても良いですか。家に服を綺麗にできる魔法薬があるんです。それで元通り綺麗にできます」
「本当に出来るんだろうな?」

疑うように言うが、受けは自身満々に「はい」と返事をした。
「そうだここに転移中継点を作っても良いですか?魔法陣を使って僕の家とこの部屋を繋げれば、戻ってくる時に楽に、しかも少ない魔力で帰って来れます」
「勝手にしろ」

それだけ返事をすると、受けは床に魔法陣を描き始めた。左右対称の美しい円を描き、歪みが全くない美しい魔法陣だった。
――〇〇家の出来損ない。
――無能が故に力を扱いきれずに持て余している

なんだろう、この違和感は。

魔法陣の光に包まれて、受けが消えて行く。
しばらく経つと受けはすぐに戻って来た。水色の液体が入った瓶を持って帰って来た。

「騎士様、これを制服にかければ、すぐに綺麗になります」
そう言い、彼が制服にこれをかけるとシミはみるみると消えて、なんならクローゼットにしまっていた時よりも綺麗なった。

「おぉ、すごいじゃないか!」
受けの頭を撫でながら言うと、受けは嬉しそうに笑った。

……ん、待てよ?わざわざ落としたぬいぐるみを走り回って探さなくても、これを使って家からぬいぐるみを取ってくれば、すぐに解決したんじゃないか!?」

受けはカメレオンのぬいぐるみを強く抱きしめると、バツの悪そうにしていた。「すみません、僕はあの時は取り乱していて、考えも及びませんでした」

そんな様子を見てため息を吐き、受けの手を取る「これは俺と一緒でも使えるのか?」「はい。少しの魔力があれば使えます。装置なので僕がいなくても使えます」「分かった、一旦帰って、もう落とさないような、ぬいぐるみを探すぞ」

受けは心の中で、転移装置を使う時は手を繋がなくても大丈夫なんだけどなと思ったが、攻めの優しさが嬉しかったから黙っていた。