イヌノカニ
2026-01-21 09:14:38
31075文字
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【創作BL・未完・更新中】ぬいぐるみが安心毛布の魔法使い・ファンタジー・総受け(固定)

ファンタジー設定はフワッと。
これは長期休みになったら一日かけて、一気にアイディアをまとめたいと思います。

メモ
26/02/03から記録

26/06/08:更新
26/02/23:更新、修正
26/02/22:更新
26/02/21:修正・更新、26/02/20:修正・加筆・更新、26/02/08:加筆・更新、26/02/07:修正・加筆・更新、26/02/03:修正



うぅーん。
小鳥の囀りを耳にし、寝返りを打って目を開けると、目の前には鋭い剣の先があった。

「う、うぇ!?」
「どういうことですが、第二騎士団副団長殿?」

僕を組み敷いた状態で、昨日の騎士様が僕に剣を向けながら聞いてきた。
その言葉に一気に頭が覚醒していく。
あぁ、ついに迷惑を掛けてしまった。

「ち、違う!僕は弟ではありません。信じてもらえないかも知れませんが、僕は双子の兄です!」

疑うようにこちらを見てくる騎士に必死に言う。

「あの、昨日は逃げてすみませんでした。弟に迷惑掛けてしまうと思い咄嗟に逃げてしまったんです。もう逃げませんから、お話聞いてもらえませんか」

納得してもらえたようで、剣は収めてもらった。

そして僕は説明をしていく。
僕は〇〇家の元長男で、学生時代に事故を装って逃げたこと。それ以降この森に建てた家でポーションを作りながら生計を立てて暮らしていたこと。学生時代に教わったポーションの作り方で作っていて違法性があったとは思わなかったこと。ポーションの判断は最初にあの薬屋が小中大に分けたものを基準に作っており、それが正規の基準だと思っていたことを説明した。

「あ、あの、弟には迷惑かけたくないんです!お願いです、僕を捕まえる時には〇〇家の者ではなく身元不明の男として捕まえてくれませんか?変身魔法を使った時の、あの姿で捕まえてください」

「あれは気持ち悪いから却下だ」

作った物を見せろと言われて、工房へ連れてきた。
何かを考えるように僕の話を聞きながら、騎士様は作った魔法薬を眺めている。

「ふむ、だいたい分かった」
「ありがとうございます!」

分かってもらえた。そう思い笑顔で返すと、騎士様はこちらを振り返り呆れるような目で言った。

「世間知らず、常識知らずのバカが、見事に悪人に騙されていたとはな」

「世間、常識、知らず?」

「あぁ、そうだ!この大馬鹿者!我々の発見が一歩遅れていたら、これは脅威になっていたかも知れないんだぞ!」

そう、これの恐ろしいところは、飲むだけで回復することができる、いわば無限の兵力を手に入れられるということ。倒しても倒しても減らない兵力ほど脅威なことはない。

「も、申し訳ありませんでした」

貴族として、〇〇家の者として、弟よりも不出来だったがそれなりに勉強をしてきたのだ。たった一言それを言われれば、だいたい予想はつく。
騎士様は僕の方に近づいてくると、顔をジロジロと眺めた。

「ふん、双子といえどここまで似るとは驚きだな。しかし性格はまるで正反対だ。おい、名前はなんと言う」

「受けです」

「分かった、受け。今回の件は、上量酌量の余地があるとして見逃してやっても構わない。そうすれば弟に迷惑をかけることも、バレることもないだろう。ただし、条件がある」

「なんでしょうか」

「どうにか薬を作り、王弟殿下の病を治してくれないか?」

「◻︎様がどうかしたのですか!?」

騎士は受けの方を見ながら、なるほど〇〇家の者だったら交流があるなと納得した。



攻めは王家に対して忠誠を誓っていた。
〇〇家程の関係は築けていないが、我が家の方が忠誠心も高いと自負していた。

学園でも魔法剣術共に常にトップの成績を収め、魔法省からも声が掛かっていたが、やはり王家の盾となり側にお使いしたとして騎士になる道を選んだ。
わずか三年という期間に血の滲むような努力をし城の警備を中心に行う第一騎士団の副団長の地位についた頃、あの憎たらしい男が入団してきたのだ。

〇〇家の者でありながら、城下町の警護を中心に行う第二騎士団に自ら志願し、それでも殿下からの信頼は厚く、実質第一騎士団と第二騎士団を兼任しているような、胡散臭い笑みを浮かべ常に笑っている男だ。
何よりもムカつくのは、剣術に長けており、俺が苦労して三年でついた副団長という地位にわずか一年でついた。〇〇家の者は魔法に長けている者が産まれると聞いていたが、剣術まで長けていると、これはもう勝ち目がないではないか。彼が副団長に就任する頃には、副団長というのは若くて将来有望な人材がつくような風潮すら出来始めた。俺の努力すらも踏み躙られたような気分になった。

そんな時に、王弟殿下が病に伏せた。
どうやら最近流行っている原因不明の病らしく、どの医師もお手があげの状態で、日に日に彼が弱っていくのを皆んなが目の当たりにしていく。城内が悲しみに満ちる中、とある噂を聞いた。

何やら闇市でどんな病も癒える薬が売っているらしい。

噂を辿るとポーションで、それはもう書き表せないくらい致命傷を負った者でも、それこそ怪我など追う前くらい元通りに戻るというものであった。

王家への忠誠心から、何がなんでも王弟殿下を救うことを誓い藁にもすがる思いで、突き止めたあの薬屋へ行った。
そもそも相手は違法物を売っている犯罪者なので、どうにでもなる。

そこから知る衝撃の事実。
見た目と喋り方がチグハグな男は、違法性があると知らなかったのであろう。簡単に証拠を提出した。
そして、魔法省に勤める者でも特に高度な技術と魔力がないと出来ないであろう転移魔法を、魔法陣も書かずに簡単にやってのけて消えた。

咄嗟に付けた追跡魔法で追って、騎士団でも街に被害が出そうな時以外は決して近付かない森の中へ入っていた。なんとか凶暴な魔獣と一晩中戦いながら、ついにこの家まで辿り着いたが、アイツが置いていった、このポーションがなければ諦めて今日は帰っていただろう。このポーションの効力は凄まじかった。

明け方になり、魔獣除けの結界が何重にもついた家に侵入すると、そこは子供の部屋のような、ぬいぐるみが至るところにある家だった。その中心の大きなぬいぐるみに縋るように眠っていたのは、あのいけ好かない男と同じ顔をした男だった。

しかし、話を聞いているとすぐに、それは誤解だと言うことが分かる。

「僕は事故を装って逃げてきたんです」

〇〇家の長男が事故で行方不明になったのは有名な話だった。誰もが崖から落ち、魔獣に喰われてしまったんだろうと結論付けたか、王子が証拠が出るまでは行方不明として扱うようにと命じていた。さすがは王子だ、彼はこの通り生きていた!

そして、〇〇家の出来損ないの長男というのは貴族間では有名な話だった。いい年をしているのに、ぬいぐるみを常に持ち歩いている。勉学も剣の扱いもダメ。恥晒し。
王子がそんな彼を正そうと、ぬいぐるみを池に捨てたのは有名な話だった。
そんな王子の努力も無駄にし、こんなぬいぐるみに囲まれた家まで作っている。

攻めは一気に受けを見下した。
世間知らずの無能が、悪人に騙されるなんて、王家に使える〇〇家の者の癖に恥知らずめ。

しかし、この魔力の高さこそ、〇〇家の者という証明でもあった。代々魔力に長けた者が生まれてくると言われている〇〇家は、この出来損ないの兄が最も力を持っていると言われていた。しかし、無能が故に力を扱いきれずに持て余しているとも言われていた。

高い効果を出すポーション。
魔法陣も書かずに転移魔法が使える程、高い魔力の保有量。

全てが辻褄が合う。
コイツなら王弟殿下を救う薬を作れるかも知れない。

それに〇〇家の無能というところが気に入った。
ソイツの弱味を握り、俺が好き勝手利用することが出来るのだ。気分が良い。

死ぬまで飼い慣らしてやろう。そう決めた。

「おい、まずは薬に対する知識を……」そう言いかけたところで、急に受けが体をふらつかせて倒れ込んできた。
「おいっ、どうした!」

「あの、お手数をおかけしますが、棚から三番目の黄色の薬を取ってくれませんか?」
「これか?」
「はい」

取ってくれませんか?と言いながら、口を開けてくる。飲ませろというのか?この俺に?とはいえ、コイツが唯一の頼みでもあったので大人しく飲ませてやる。

喉が上下するのを見届けると、彼は未だに自分に支えられたまま言う「あと五分もすれば、回復します。すみませんが、このままお話の続きを聞かせてください」「あと五分もこの体制でか!?」

キョトンと目を丸くしながら、頷く。
〇〇家の者とは、本当に相性が合わない。