イヌノカニ
2026-01-21 09:14:38
31075文字
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【創作BL・未完・更新中】ぬいぐるみが安心毛布の魔法使い・ファンタジー・総受け(固定)

ファンタジー設定はフワッと。
これは長期休みになったら一日かけて、一気にアイディアをまとめたいと思います。

メモ
26/02/03から記録

26/06/08:更新
26/02/23:更新、修正
26/02/22:更新
26/02/21:修正・更新、26/02/20:修正・加筆・更新、26/02/08:加筆・更新、26/02/07:修正・加筆・更新、26/02/03:修正



yy/mm/dd
数日前から何となく体が怠いと仰っていた。
熱もなく、体に異常は見られなかった。問診でも頭痛や吐き気、腹痛など目立った症状はないが、いつもに増して体がやたらと怠いと仰っていた。お忙しい方だ、体調を整える魔法薬を調合して渡し、可能であれば公務をお休みする事、忙しい合間を縫って行っている教会に行かない事を伝えた。

yy/mm/dd
魔法薬を調合して二週間後。
改善は見られず、体調はむしろ悪化していると仰っていた。もう一度診察、問診を重ねたが異常はみられなかった。少し強めの魔法薬を調合するが、どこが悪いか分からない以上、強めの栄養剤を渡すしかできない。

yy/mm/dd
公務中に◻︎様がお倒れになったそうだ。国王の動揺が酷く、宥めるために精神安定剤をお渡しした。
寝室まで運ばれてしばらくしたら意識を戻されたが、やはり原因は不明だ。本人の了解のもと直接回復魔法をかけるが効果は現れなかった。

yy/mm/dd
◻︎様がお倒れになったことに動揺した国王がしばらく公務を控えるようにと命じたらしい。おかげで暇だと嘆いていた。
国内でも医療魔法に長けた者を集めて、再度◻︎様の体調について調べる。これだけの人数を持って調べても異常は見つからなかった。代わりに街で原因不明の病が流行していると聞く。

yy/mm/dd
流行病の感染者が多い教会を調べる。そこは◻︎様もよく通っていた場所らしく、神父は教会に通う者が病に罹っていることに「何が神お怒りを買ったのでしょうか」と嘆いていた。
大人から子供まで病にかかった者を集めて検査をする。しかし、◻︎様と同じように異常はみられなかった。治療に関する手掛かりは得られなかったが、◻︎様はこの流行病にかかっている事を確信する。

yy/mm/dd
◻︎様の目覚めている時間が少なくなった。あの子に会いたいと、うわごとのような事を言っていた。恐らくあの方の事だろう。殿下と一緒に数回見舞いに来たが、それ以外は来ていない。騎士の仕事が忙しいのだろうと思うが、病は気からとも言うし、彼が来てくれれば◻︎様も回復へ近付くのではないかと思うと来て欲しい。
本日から国王が建てた医療専用の建物へ移動することになった。これで地下で研究を進めつつ、何かあった時はすぐに行けるようになった。

yy/mm/dd
教会に預けられている孤児が、内緒と言ってみんな元気になれる泉があると教えてくれた。期待したが、そこはただポーションが貯められている噴水であった。
教会では簡単な傷の治療をしているので、それに使っているのだろうと思ったが、藁にもすがる思いで持ち帰り◻︎様に飲ませてみた。僅かに回復したがすぐに元の様子に戻ってしまった。

yy/mm/dd
調査の結果、十代の子供は比較的早く回復するらしい。しかしなぜ完治するかは不明なままだ。そもそも体のどこにも異常がみられないため、どこを観察すれば良いのかが不明のため原因探ろうにも難しい。
どの患者も完治には、半年以上はかかっているらしい。子供の成長に合わせて完治しているのではないかと、ある者が仮説を立てていた。では、大人である◻︎様はどうすれば治るのであろうか。

……様、……し、様、
「騎士様!」
「うわぁ、びっくりした」

思ったよりこの治療日記とやらを、読むのに集中していたらしく、声をかけられて驚いてしまった。

「騎士様、◻︎様の容態ですが、変です」
「変とは」
「体の異常がどこにもありません。ご年齢の事を加味しても、頭から足の先まで検査してみましたが、何も異常がありませんでした」
「あぁ、知っている。先ほどこれを読んで……

言いかけて、不思議に思って聞く。

「王族専属の医師が使え、何人もの治療魔法に長けている者が検査した事を、この短時間に一人でやったのか」
「同じことか分かりませんが、僕のできる範囲でやりました。魔力だけは無駄に持っているので」

まただ、何か引っかかる。
例え高い魔力を持っていたとしても、こんな高度の魔法は知識とそれを使いこなせる技量がなければ出来ないはずだ。

「お前、本当は無能じゃないんじゃないか」
「何を言ってるんですか、魔力だけあっても意味ないんですよ。僕は剣術もダメで、人付き合いもダメ。それが全部できる弟の方がすごいんです」
「でも、」
「騎士様、そんなことよりも、◻︎様がとても変なんです」

そんなことよりもとは何だと言いたくなったが、王族である◻︎様の事を引き合いに出されてしまえば黙るしかなかった。自分は誰よりも王族を忠誠を誓い尽くすと決めている。

だが引くつもりもない。後でゆっくり話そう。
自分を落ち着かせるために息を深く吐いた。

「それで、変とはなんだ。体に異常が出ないのは、この病の特徴らしい」
「異常がないこともそうなんですが、治癒魔法がまるで底の抜けた瓶に魔法をかけているように、◻︎様へかからないんです」

どうやら話を聞くと、治癒魔法をどんなにかけても体のどこかへ消えていくように、全く効果が出ないのだと言う。
普通の風邪でも魔力耐性が落ちることはあるが、治癒魔法が消えるとなると、それとは別の理由な気がする。

「騎士様も知っていると思いますが、この国で魔力を持って生まれてくる人の割合は六割です。あったら便利だな〜くらいで、あってもなくても問題のないものです」

「確かにそうだが、魔法に対する偏見がすごくないか」

「◻︎様の身体に対する異常はありませんでした。一つだけおかしな所は、この治癒魔法がどこか消えていく、魔法が効かないという事です。そこで僕は一つ、仮説を立てました」

「どんなものだ」

「◻︎様の持つ魔力が、全て消えているんじゃないか。ということです」

「はあ」

意味がわからなくて適当な返事をしてしまったが、さすがにアイツにも伝わったようで、ムッとした表情をして俺を見てくる。

「僕だって、分かっています。だって、魔法はあってもなくても大丈夫なものだから、別に魔力がなくなったって、こんなに具合が悪くなったり、長く寝込んだりしません」

「よく分からないが、結局どうすれば◻︎様は治るんだ」

「分からないです」

「んー、そうだ。瓶の底が空いているなら、瓶が埋まるまで魔法をかけたらどうだ。大きな桶いっぱいに水を用意して、瓶を沈めれば底が抜けてても勝手に水が溜まるだろう」

「はあ」

今度は受けが気の抜けた返事をする。自分がやられると、ものすごく腹が立つな。彼のおでこに向かってデコピンをお見舞いすると「痛いです」とぼやきながら、おでこを撫でていた。

「だって、騎士様。僕はもう人にかけられる適正魔力量上限の治癒魔法はかけました。大きな桶というのは、つまり上限を越えて◻︎様だけではなく、外側からも魔力で一杯にするってことですよね。適正魔力量上限以上の魔法を人に使うのは危険です」

「なんだそれ、適正魔力量上限とか初めて聞いたぞ。まあ、いい。とにかくだ、今は魔力が溜まらない状態なんだろ?上限を超えないといけないんじゃないのか」

「確かに、……いや、でも、やっぱりダメです。適正魔力量上限は絶対に超えてはいけないんです。魔法は便利だけれど凶器でもあるんです。いくら上限いっぱいかけても、魔法が掛かっていないような状況でも、それを破るのはダメです」

受けの肩を掴み、こちらを向かせる。

「お前が言う通り、魔法をかけても掛かっていない状態なら、問題ないんじゃないのか。頼む、◻︎様は今にも命が絶えてもおかしくない状態だと言われている。どんなことでもやってくれ」

……でも、僕の判断が間違えているかもしれないし――

彼は俺から目を逸らして、自信がなさそうに言う。
思わず更に肩を力強く掴んで、怒鳴るように言ってしまう。

「そんなことない!俺の勘もそう言っている。自分を信じろ、もしそれが出来ないと言うなら、俺を信じろ。……頼む、◻︎様を救いたいんだ」

最後の方は語尾が弱々しく懇願するように言ってしまったが、◻︎様を救いたいというのは心からの思いだった。王族であるということ以上に、自分たち騎士にも労いの言葉をかけてくれ、教会にも通う、優しく聡明なお方だ。そんな方を救いたいと思うのは当然だ。
幼い頃から交流があり、優しく接してくれたというなら、同じ気持ちのはずだ。

受けは腕にいる、ぬいぐるみに手を置くと、覚悟を決めたように力強い眼差しで騎士を見上げた。

「分かりました。騎士様を信じて、僕は絶対に◻︎様を救います」