イヌノカニ
2026-01-21 09:14:38
31075文字
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【創作BL・未完・更新中】ぬいぐるみが安心毛布の魔法使い・ファンタジー・総受け(固定)

ファンタジー設定はフワッと。
これは長期休みになったら一日かけて、一気にアイディアをまとめたいと思います。

メモ
26/02/03から記録

26/06/08:更新
26/02/23:更新、修正
26/02/22:更新
26/02/21:修正・更新、26/02/20:修正・加筆・更新、26/02/08:加筆・更新、26/02/07:修正・加筆・更新、26/02/03:修正



離れて前を歩く騎士様のあとを追い歩く。城内にある第一騎士団の宿舎、馬小屋、倉庫のような場所をあっという間に通りすぎた。◻︎様がいるのは別邸と言っていたから、少し距離があるのだろう。僕が幼い頃に王子の友人役として王宮に出入りしていた頃に行った場所は、煌びやかなお茶会が開かれる庭や、舞踏会が行われたホール、そして、王子と一緒に行ったあの池。華やかな部分ばかりを見ていたから、こんな場所があるなんて知らなかった。

「お疲れ様です‼︎」

前から野太く大きな声が聞こえてきて、思わずビクッと体が動く。驚き過ぎて心臓の音がバクバク言っているが、弟ならきっと何とも思わないだろうと思い、慌てて笑顔を作る。

あれは、青色のアクセントカラーが入った制服。
第一騎士団の人達だ。

これから、あの人たちとすれ違う。
バレてはいけない緊張感が高まり、心臓の音がますます大きくなる。

前を歩く騎士様と少しだけ会話をすると、ついに僕の方へ向かって歩いて来た。二人のうち一人の騎士は僕の顔を見ると、まるで不快だと言いたげに顔を歪めた。もしかすると、もうバレてしまったのかも知れない。だって弟にそんな顔をする人がいるわけがないのだ。制服だって、僕が着たらブカブカだし、こんなのすぐバレ――

「お疲れ様です、第二騎士団副団長様?」

てない!

「お疲れ様です」

笑顔でそう答えてみる。

「第二騎士団は全員街に出ているはずだが、副団長ともあろう方がサボりですか。自分の職務を怠慢し、あっちこっちにフラフラとするのはいかがなものかと。もう少し騎士としての誇りを持って行動したらどうですか」

不愉快そうに顔を歪めた騎士が、苛立ちをぶつけるように言った。もう一人の騎士は困ったような顔をして彼を宥めている。
どうしよう、僕のせいで弟が怒られている。とは言え、上手く返せるようであれば、ぬいぐるみに囲まれた部屋で引きこもって過ごしてないのだ。どうにか別の方法で、弟の好感度を取り戻さないといけない。

ちょうどその時、彼のタイが曲がっているのが見えた。
学生時代、弟が僕のタイをよく直してくれたことを思い出す。
これだ。

一歩前へ踏み出し、彼のタイへ手をかける……はずが、よろけて彼の胸に飛び込んでしまった。驚いて僕を支える彼に笑いかけ、どうにか失態を取り戻そうとタイを直そうと引っ張る。しまった、直すどころが解けてしまった。

そういえば、思い出した。
どうして弟が僕のタイを直してくれたのか。
僕はタイの結び方も分からないから、結ぶのも、直すのも、全部、弟がやってくれていたのだ。

ど、どうしたら、ここからどうすればいいの!?
タイから手を離すタイミングを逃したせいで、どうしたら良いのか分からずに、そのまま引き抜いた。あと思ったよりも彼と近くにいたようで、顔をあげると彼の鼻先と自分の鼻先が軽くぶつかる。とりあえず僕は笑った。そしてそのまま、どうしようもない事実を伝える。

「解いちゃった」

「解いちゃった……じゃない!」

後ろからバシッと頭を叩かれて、振り向くと騎士様がいた。涙目で叩かれた場所を押さえると続けて騎士様が怒鳴る「この馬鹿、うちの騎士を誘惑するな!」

「ゆうわく?僕は彼のタイが曲がっているから直してあげようって……

彼の方を見ると、顔を真っ赤にして固まっていた。

「あれ、どうしたのですか。ごめんなさい、僕上手くできなくて、その、大丈夫ですか」

固まったまま動かない彼の元へ近付いて様子を確認しようとすると、今度は後ろから騎士様に首根っこを掴まれた。

「いい加減にしろ!……おいっ、タイくらい自分で結べるな」

ギロッと睨みを効かせて聞く騎士様に、ハッとした様子で「は、はいっ!」と大きな声で返事を返していた。騎士様は僕の手から彼のタイを奪うと、彼に返した。

「俺は今からコイツに指導してくる。お前達も今日はイベントだからと気を緩めるな、こういう日こそ一層、気を引き締めていけ。分かったら、さっさと行け!」

二人の騎士達は、もう一度騎士様に敬礼をすると、慌てた様子でどこかへ行ってしまった。



僕は騎士様に腕を引っ張られて建物の影に連れていかけれた。

「この馬鹿っ、ちゃんと弟らしく振る舞え!」
「すみません……、僕やっぱり弟みたいになんて無理です。タイの結び方も分かりませんでした」

ちゃんと弟らしく笑顔で、愛想良く挨拶をして歩いたつもりだが、やっぱり自分には無理だった。

「弟の真似をしてタイを直して上げたかったんですけれど、直し方を知らなくて、失敗してしまいました。すみません」
「弟の真似をしてタイを直すぅ?アイツがそんなことするわけないだろ!」
「僕には毎日してくれましたよ。最後にギュッと抱きしめてくれるんです」
「お前まさか、そこまでやろうとしていたのか」

騎士様の質問がよく分からずに首を傾げる。

「はい。そこまでがセットでしょう?」

バランスを崩してしまい何もかも失敗したが、本当はタイを直して軽く抱擁をし、その場から去る予定だった。

攻めは受けの頭をもう一度引っ叩く。

「風紀を乱すな!お前もう「お疲れ様」以外喋るな、何もするな、分かったな」

涙目になりながら「はい」とだけ返事をした。

「しかし、すごいな。アイツ、自分の兄に対してはそんなに甘く接していたのか……想像が付かない」
受けは攻めの言っていることこそ、意味が分からなかった。
「弟は愛想が良く、武術も勉学もよくできて、誰からも好かれて良い子ですよ」

「武術も勉学もできるのは知っているが、愛想良くというより作り笑いを常に浮かべているだけだろ。あと誰からも好かれる……?少なくとも第一騎士団は快く思っていないぞ」
「それこそ信じられません。だって僕は弟を嫌いになる人なんて会ったことありません」

話はどうやら平行線を辿るようだった。
無理矢理切り上げて、また距離をあけて暫く歩き続けると小さな建物が見えて来た。その門の前には護衛の騎士が二人立っている。

騎士様は僕の方を振り向くと立ち止まった。
僕が彼に追いついて並ぶと、小さな声で「副団長同士で見舞いに来たという設定でいく」とだけ言った。

二人で歩き始めると、こちらに気付いた騎士達が驚いた顔をしつつも、騎士様が何かを伝えると大人しく扉を開けた。騎士様がわざとらしく眉毛を寄せて言ったからか、さっき言っていたお見舞いに来たというのを、誰からの指示で行っていると解釈したのだろう、同情するような顔をして騎士様を見て、僕の顔を不快そうに見ていた。
二人の騎士は青色のアクセントカラーが入った服。どうやら弟が第一騎士団から嫌われているというのは本当のようだった。