イヌノカニ
2026-01-21 09:14:38
31075文字
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【創作BL・未完・更新中】ぬいぐるみが安心毛布の魔法使い・ファンタジー・総受け(固定)

ファンタジー設定はフワッと。
これは長期休みになったら一日かけて、一気にアイディアをまとめたいと思います。

メモ
26/02/03から記録

26/06/08:更新
26/02/23:更新、修正
26/02/22:更新
26/02/21:修正・更新、26/02/20:修正・加筆・更新、26/02/08:加筆・更新、26/02/07:修正・加筆・更新、26/02/03:修正



棚に並んである中で一番小さなぬいぐるみを選び、騎士様は僕の腕に付けた。それはリスのぬいぐるみで、くるんと丸まっている尻尾の下から紐を通して腕に巻き付けていて、小さな手を広げて、まるで上目遣いで僕を見ているようだった。

「しまった、さっきから二時間も経っているじゃないか」
「騎士様、昼食もありがとうございました。サンドイッチ美味しかったです」

ぬいぐるみを選び、紐で結んだ時間が約三十分。
城内を全速疾走したため、お腹空いた攻めが昼食を作るのに掛かった時間が約二十分。
そこから、談笑しながら食事をした時間が七十分。ちなみに片付けは受けが魔法で十秒で済ませた。

かなりのんびりした行動だが、このおかげで王子が諦めて自室に戻ったことをもちろん二人は気付いていない。

「さあ、行くぞ。今ならパレードの真っ最中で、城内にいる人間も少ないはずだ」
「なんだか、緊張してきました」
「俺とお前の弟は普段全く会話をしない。二人で歩いていたら怪しまれるから、俺の後を少し離れて追ってこい」
……え?」
「右よし、左よし、よし今だ!」
「えぇ!?もしかして僕一人で歩くんですか、ちょ、早、ま、待って……

受けは涙目になり、すぐに後を追おうとしたが扉の前で足を止めた。

弟はどのように騎士として過ごしているのだろうか。

幼い頃の記憶を思い出す。父と母によく笑いかけ、母と手を繋ぎ楽しそうに前を歩く弟。学院に入学すると、王子をはじめとした友人達と共に、勉学や学校行事など学院の中心生徒としてよく活躍してる姿をよく見かけた。
しっかり者で、愛想が良く、みんなに好かれていた双子の弟。
自分とは真逆の弟。

使用人達に無視される僕の世話をも全てやってくれた。優しくてしっかり者の弟だが、二人きりになると甘えん坊に変わる。
僕がぬいぐるみに抱きついて眠るのと同じように、僕に抱きついて頬を寄せていつも言うのだ。

「受け、受けの辛いことは俺が全部なくしてあげるからね」

そんな頼もしいことを言ってくれるが、僕は弟に頼ってばかりの自分が情けなくなる。

「だから、こうやって抱きしめて頭を撫でて、俺を好きだって言って」
「僕の大切な弟。……どんな事があっても大切な家族だよ。大好き」

たまに会う◻︎様がしてくれることを真似て、弟のおでこに唇を寄せて言う。すると彼は眉毛を少し下ろして切なそうに笑って眠りにつく。

夜、たった数時間。
それが僕たちの時間だった。
弟は朝日が昇る前に自室へ帰っていく。しばらく経つとパンを持って急いだ様子で僕を着替えさせに来るのだ。
忙しい弟の時間を僕に使わせてしまうのが、申し訳なかった。

今、弟はどんな風に過ごしているのだろうか。
非の打ち所がない完璧な弟。
甘えん坊なところがあるが、自分がいなくなった後のことは何も心配はしていない。彼の周りには常に人がいた。

周りの人を助けて、助けられて、そんな風に生きていく事ができる自慢の弟なのだ。きっと騎士としても、みんなに好かれて立派に過ごしていると思う。

――変身魔法を使う時は怪しまれないように、堂々とすること。

そして僕が弟になるには、胸を張って背筋を伸ばして、みんなに好かれるような立ち振る舞いをしよう。

顔を隠している前髪を弟の真似をして耳に掛けて、微笑むように笑う。

扉を開けて、大きく一歩を踏み出した。