イヌノカニ
2026-01-21 09:14:38
31075文字
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【創作BL・未完・更新中】ぬいぐるみが安心毛布の魔法使い・ファンタジー・総受け(固定)

ファンタジー設定はフワッと。
これは長期休みになったら一日かけて、一気にアイディアをまとめたいと思います。

メモ
26/02/03から記録

26/06/08:更新
26/02/23:更新、修正
26/02/22:更新
26/02/21:修正・更新、26/02/20:修正・加筆・更新、26/02/08:加筆・更新、26/02/07:修正・加筆・更新、26/02/03:修正

双子の弟の手を握り、前を歩く母親。
自分も手を握りたくて手を伸ばすが、もう片方の手は乱れた髪を直していた。では父の手をと思い父を見ると、退屈そうに欠伸をしていて、僕の視線気が付くと面倒臭そうに目を逸らした。
僕はどうしたら良いのか分からずに、先を歩いて行ってしまう家族を追いかける。必死に手をのばしながら。

ハッと目が覚める。
どうやら遠い昔の夢を見ていたようだ。
寝返りを打って、隣で眠っている自分よりも大きなテディベアの胸に頭を埋める。

「いやな夢を見ちゃった……

部屋一面にビッシリと埋まった、テディベアを中心とする、クマやウサギやら、ライオンといった大小さまざまな、ぬいぐるみたち。
そんなファンシーな部屋に住むのは、可愛いらしい女の子ではなく、骨が浮き出ているほど痩せ細っていて、前髪で顔を隠した、二十歳前半の暗い雰囲気の男だった。

モソモソと布団から無理矢理体を起こすと、ベッドのすぐ近くにあった棚から、ぬいぐるみを選ぶ。

「今日は君にしよう」

手に取ったのはバクのぬいぐるみだ。
彼の頭を撫でながら言う。

「嫌な夢を見たから、食べてね」

僕は、ぬいぐるみと常に一緒にいないと、不安でたまらなくなる。

幼い頃、双子の弟と違って両親にあまり構ってもらえなかった僕は、両親の代わりをぬいぐるみに求めた。
僕はあまり、人付き合いが上手ではなく、勉学も弟には敵わなかった。弟と比べられ、苛立ちをぶつけられ、嫌われ続けた僕は、両親には王家を支え続けた由緒正しき貴族である〇〇家に相応しいないと、社交界デビューしてすぐの七歳の頃には失望された。
仲良くしなさいと言われていた王子に、ぬいぐるみを池に捨てられて「気持ち悪い!」と言われたことが両親の中で決定打となったようで、それ以降まるで僕はいない子として扱われたのだ。

唯一、人よりも凄かったことは保有する魔力の数値だったが、行き過ぎた魔力は脅威となり、まさに腫れ物状態。
弟は優しかったが彼には彼の役目やコミュニティがあるから一緒にいる時間は少なく、結局こんな僕を受け入れてくれたのは、ぬいぐるみだけだった。

両親と弟の笑い声を聞きながら、一人でぬいぐるみを抱えながら暗い部屋にいた時を思い出す。
そんな日々に耐えきれず、学生時代に事故を装い、この人の寄りつかない凶暴な魔物が住む森に逃げてきたが、ある頃と変わらずにひとりぼっちだ。

「ごはん……、なんか食べる気なくなっちゃった。朝は、いいや」

家の一部に作った工房に行く。
こちらにもいたる所に、ぬいぐるみがあって、大きなぬいぐるみから後ろから抱きしめられるように座れる椅子に腰をおろす。

そこに座ると落ち着く。
邪魔にならない所にバクのぬいぐるみを置くと、僕は作業を始めた。

僕は有り余る魔力を注ぎ、学校で習った回復用ポーションを3段階に分けたものを作り売っている。
他にも魔法薬を試しに作ってみているが、専門的に学んでいる訳ではないから、さすがに売ることに抵抗があり、このポーションのみで生計を立てている。

ボーン、ボーン、ボーン、

古びた時計が鐘を鳴らす。
時間を見ると十五時過ぎ。

「しっ、しまった。今日はポーションを売りに行く日だった」

慌てて黒いマントに身を包み、体型をガタイの良い筋肉質な男の姿へ変える。念のため顔も変えているが、前髪で顔がきちんと隠れていることも鏡の前で確認する。
片方の手ではマントの上から背負った、ポーションが入っているカバンに手を添え、もう片方の手はマントの中に隠してコッソリとバクのぬいぐるみと手を繋いでいる。

家から出る時、もう一度前髪を手で撫で付けて顔がちゃんと隠れているかを確認する。
ここまで不安になるのは、僕が事故を装って逃げたからではない。あの優秀な僕と全く同じ顔した弟が騎士団の副団長として活躍しているからだ。