美結
2026-01-04 11:46:52
33619文字
Public ロール
 

🐯👒原作軸SSまとめ

2023年から2025年までのロール原作軸SSをまとめました!



『冬の楽しみはたくさん』

 「うほー!積もった積もった!」
 「ちょっとルフィ!喜んでる場合じゃないわよ、雪かきしなきゃ困るでしょ!」
 
 サニー号の甲板に敷かれた芝生は、今や一面の銀世界となっている。昨夜、ルフィ達麦わらの一味と泊まりに来ているローを乗せたサニー号は冬島の海域に差し掛かったのだ。ナミの話ではこの海域を抜けるのに数日はかかるらしく、暫くは朝起きたら甲板の雪かきを交代でするという事になっていた。
 そして、今朝はルフィとロー、チョッパーが雪かきの担当になったのだ。
 「分かってるさ、ナミ!でもこんなに積もってんだ、興奮するだろ」
 答えながらルフィは片手に持ったスコップを真っ白な雪の上から差し込む。ザクッと音がして、ずっしりとした雪の重みがスコップに加わる。力を入れて持ち上げ、端の方に雪を退ける。赤いコートを羽織ってはいるが、今朝の空気は一段と冷たい。白い息を吐きつつ、手際よく雪をかき出していく。
 「ったく、なんでおれまで……
 ルフィとは反対側の位置から、黒いコートに身を包んだローが雪かきを始める。文句を言いながらもその手際は実に良く、チョッパーが感心して目を輝かせた。
 「トラ男、雪かき上手いな!?」
 「前に言わなかったか。ウチは北の海の極寒港出身だ。雪の扱いには慣れてる」
 身体を大きくして雪かきしているチョッパーも中々力があるが、コツを掴んでいるローの方が手際が良い。すると、二人の会話を聞いていたルフィが振り返る。
 「ならよ、トラ男は雪だるさんも上手く作れるのか!?」
 「雪だるさん?」
 「雪だるまだ、トラ男!」
 チョッパーの訂正を受けてローは頷く。
 「まァ、手慣れてはいるな」
 「じゃあ、雪かきが終わったら作ろうぜ!」
 「は?」
 「いいな!楽しみだ、おれ!」
 「よーし、頑張るぞチョッパー!」
 ローの返事を待たずして、拳を突き上げるルフィにチョッパーの声も重なる。そこから二人は雪かきのペースを見違えるほどに上げていき、ローも負ける事なく任された箇所の雪かきを終えた。
 「どう?雪かきは順調……って。もう終わったの!?」
 中から甲板へ、ピンク色の上着を羽織って出てきたナミの声にルフィとチョッパーは胸を張る。
 「おう、終わったぞ!」
 「終わったからよ、ナミ。雪で遊んでもいいよな!?」
 「終わったんならいいけど、程々にしないと風邪引くわよ」
 やる事はやったのなら、と納得するナミにルフィとチョッパーはハイタッチして退けた雪の方へと走っていく。その様子を眺めながら、船内へ引き返そうとするナミにローが声をかけた。
 「アイツらの事だ。加減を知らねェだろうし、黒足屋に何か温まるものを頼む。それがいい切り上げ時になるだろ」
 「それもそうね。サンジくんに伝えておくわ。トラ男も風邪、引かないようにね?」
 雪かきありがとう、と笑って礼を述べたナミが船内に引き返していくのを見送ってからローもはしゃいでいるルフィ達の所へ向かう。ルフィとチョッパーは既に雪だるまの土台となる雪玉を作り始めていて、ローは二人の間に入る形で雪だるまを作り始めた。三人で黙々と土台になる雪玉の形を整え、頭部の方の雪玉に取り掛かる。
 「おー!トラ男の雪玉、キレイだな」
 「本当だ、バランス良いな!」
 左右で手袋をした手を動かすルフィとチョッパーが、ローの手元を覗き込む。
 「お前らは大きさばかり考えて、バランスに気が回ってねェ」
 「デカい方が迫力あるじゃねェか」
 「カッコいいしな!」
 ルフィの言い分にうんうんと頷くチョッパーの雪だるまは、それなりにバランスが取れてもいる。雪だるまに格好良さを求めているのは珍しい気もするが、その気持ちが全く分からないローでもない。どこがどう良くないのかを教えるくらいはいいかと、口を開きかけたその時だった。
 「おいルフィ!チョッパーにローも、一旦暖を取りに入れよ」
 「サンジ!」
 船内から姿を見せたサンジの手元にはトレイがあり、そこにはルフィ達三人それぞれ専用のマグカップが載っていた。マグカップからは湯気が立ち上がり、風に乗って流れてきた匂いにチョッパーの鼻がぴくぴくと動く。
 「なんだ?なんだか甘い匂いがする!」
 「ホットチョコレートを淹れたんだ、冷えた身体には効くぞ?」
 「ホットチョコレート!?」
 目を輝かせて立ち上がったルフィとチョッパーに、ローはサンジの方を見てこっそりと親指を立てた。丁度いい頃合いに現れたサンジは、ローの出したサインを見てニッと笑う。ナミからの伝言は上手く伝わったのだろう。喜んでサンジの元に駆けて行くルフィとチョッパーを追い、ローもサニー号の船内へと入る。
 船内に入り、コートを脱いだルフィとチョッパーは早速サンジの手元のトレイから、それぞれのマグカップを手に取った。ローもマグカップを手に取ったところで、三人は乾杯をしてから口を付ける。
 どろっとした食感のホットチョコレートは優しい甘さをしていて、とても温かい。サンジはそれぞれに別のトッピングを施していたようで、ルフィとチョッパーにはマシュマロが。ローのものにはビターチョコレートが含まれていた。雪遊びで冷え切った身体にはとても染み渡る。
 「美味いな、チョッパー!」
 「あァ、最高だ!トラ男はどうだ?」
 「美味い」
 チョッパーの確認に即答したローは、ふとチョッパーの隣にいるルフィの鼻の頭にホットチョコレートが付いていると気付いた。チョッパーを間に座らせたまま、ローはルフィの肩をポンと叩く。
 「ん?なんだ、トラ」
 呼ばれて顔を上げたルフィの鼻筋を、僅かに身を乗り出したローがペロリと舐める。一瞬の出来事に近くで本を読んでいたロビンとキッチンから様子を見ていたサンジは目を瞠る。間に座るチョッパーはマシュマロに夢中で気付いておらず、ローは何食わぬ顔で自分のホットチョコレートを飲みに戻っていった。
 「ッ、トラ男!」
 遅れて、何をされたのか理解したルフィの声がローを呼ぶ。僅かに赤くなったルフィの頬を見て、ローは悪びれもせず口角を持ち上げながら言った。
 
 「これで暖は完璧に取れたな、麦わら屋」