美結
2026-01-04 11:46:52
33619文字
Public ロール
 

🐯👒原作軸SSまとめ

2023年から2025年までのロール原作軸SSをまとめました!



『今ならではの特別さ』

「あ、トラ男!」
 食事中のダイニングから甲板に出たルフィは、すっかり姿が見えなくなってしまっていたローをようやく見つけて声を掛けた。
ローは甲板から晴れた夜空を見つめていて、その手元には氷の入ったグラスがある。近くの樽の上には酒瓶が見えた。
「麦わら屋か。肉はもういいのか?」
 ルフィに気付いたローはグラスを片手にこちらを振り返る。海風は心地良く、少し暑さを感じるこの島の夜にしては過ごしやすい。揺れる麦わら帽子を片手で軽く抑えながら、ルフィはローの隣に並び立った。
「おう、もういっぱい食った!」
「そうか」
「トラ男は?もう腹一杯か?」
 つまみを持ってきてはいない様子にルフィが疑問を示すと、ローの視線は再び夜空へと戻る。
「充分に食った」
「そっか!……月、見てんのか?」
「ああ」
 頷いたローが手にしていたグラスを掲げる。グラス越しに見える月は少し滲んで、まるで溶けかかっているかのようだ。
「今夜の月は特別なんだと」
「特別?」
「ストロベリームーンって言ってな。恋を叶える月らしい」
「恋……
 なんだ、とルフィは思った。それならすでに叶えている。自分とローの間にあるものを実感したあの日に、ちゃんと。
「叶ってるだろ、おれとトラ男の恋は」
 そう言ったルフィの声は力強く、ローの視線が再びルフィを捉える。そして、フッとローの口元に笑みが浮かんだ。
「だから特別なんだよ、今年のストロベリームーンは」
「ん?」
「恋を知ったお前と一緒に見られたからな」
 グラスを樽の上に置いたローの手が、ルフィの手を優しく取る。そのまま引き寄せられて、近づいた距離に息を呑んだ。ローの顔が近づいてきて、ルフィは黙って目を閉じる。いつもよりも少しだけ熱いローの唇が、ルフィの唇に重なった。
 吹き抜ける海風と、月明かりの下でのキスはいつもと違って少しだけ印象的に思えた。
「トラ男」
「なんだ、麦わら屋」
 暫くして離れた唇に、ルフィは思わずローを呼ぶ。そして少しだけ照れながら、しししと笑った。
「月、キレーだな!」
「ッ」
 その一言に息を呑んだローを見て、ルフィはやや首を傾げた。しかし、今はそれよりも月の方が気になる。改めて夜空を見上げるルフィに、ローは何故か額に片手を添えて顔を俯けた。
「トラ男?」
「てめェ、後で覚えとけよ。麦わら屋」
「え!?おれ、なんか悪い事したか!?」
「そうだ、今のはてめェが悪い」
 言い捨てたローも再び月を見上げて、置いていたグラスを掴むと一気に残りを飲み干した。
 今夜は長くなりそうだとルフィは覚悟を決めた。