riririnf
2025-07-05 10:01:12
52804文字
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恋、薔薇薔薇

ヌヴィフリ花吐き病書いてみた・前編
【一章】花吐き人はかく語りき P1~【二章】罪人は睡蓮の夢を見るか? P4~【三章】恋、薔薇薔薇 P10~
※モブが結構喋ります。捏造・ネタバレ過多。


 
 フォンテーヌ廷はヴァザーリ廻廊の一角に位置するフリーナの自宅。元とはいえ神が住まうにはあんまりだとも評されるのは、建材も建具も、ただの一つも唯一無二が存在しない、言わばプレタポルテであるからかもしれない。
 歌劇場を出てから何処に立ち寄ることもなく、早足で既製の扉を転がり込むようにくぐったフリーナは、扉を閉めるなり、その場に膝をついた。
「ぅ、……ッ」
 胃の奥から暴虐的な衝動が這い上がってくる。口元を押さえつける手がぶるぶると震えて、蓋の役割を果たしきれない。
……ぇ、けほ……ッ」
 室内に響く乾いた音と、ぱさぱさと落ちる滑稽なほどに軽い音。二種の不協和音が鳴る度に、パールホワイトの床色に彩りが増えていく。
 赤、黄、桃、橙──まさに万花繚乱。帰宅数分で咲き広がった花畑。
 もう花弁どころじゃない。茎こそついていないが、一つ一つが立派な〝花〟だ。
 おかげで一目で正体が知れる花もあるけれど、込められた意味を調べる気にはなれなかった。
 どうせ寒々しい程にお綺麗な言い回しで、恋を主張しているに違いない。
「っぐ、ごほッ」
 喉とお腹と、それから頭も痛い。吐きすぎるとこうなるらしい。知らなかった。
 サロンメンバーを呼び出せば、水くらいは持ってきてもらえる。ジェントルマン・アッシャーの柔らかなタコ足で背中をさすられたら、ひんやりして気持ちいいかもしれない。でも、こんな惨めな姿は彼らにだって見せたくない。──それが、答えだった。
 フォンテーヌを出よう。もう一年だなんだと言っていられない。仕事は今引き受けている限りにして、片付き次第、この家を引き払おう。
 そうして独り、花に囲まれ散っていくのだ。
 ……悪くない、かもね。
 水神役の仮面を被り続けるうちに己の素顔を見失ってしまったフリーナにとって、吐き出し続ける花だけが、唯一間違いのない本心だった。
 だから最期を花と迎えるのなら、それはある意味、自分らしく幕を降ろせると、つまりはそういう結末で────
……ッ、う、ぇ……っ」

 ──ああ、今日は眠れそうにない。