riririnf
2025-07-05 10:01:12
52804文字
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恋、薔薇薔薇

ヌヴィフリ花吐き病書いてみた・前編
【一章】花吐き人はかく語りき P1~【二章】罪人は睡蓮の夢を見るか? P4~【三章】恋、薔薇薔薇 P10~
※モブが結構喋ります。捏造・ネタバレ過多。

花吐き人はかく語りき

 街灯点るフォンテーヌの街並みを、二人の男女が連れ立って歩いていた。
 互いの手は掌を合わせて繋がれており、誰がどう見ても、二人は仲睦まじい間柄に見えるだろう。
 事実二人は──フリーナとヌヴィレットは恋人同士だ。今日は日中より街歩きをし、先程観劇とディナーを済ませ、今フリーナは自宅へと送り届けられている最中である。
「今日はありがとう、ヌヴィレット。おかげで楽しい一日だったよ」
 そうして無事自宅へと着いた時、フリーナは玄関扉を開けるより前に、親切な恋人へと向き直った。
「それは何よりだ。私としても非常に有意義な時間だった。また次のプランも考えてこよう」
「もう? 随分と気が早いことだね」
 さっそく次を仄めかす可愛らしい恋人におかしくなって笑みを零すと、薄い紫色の瞳が細められた。
 そのままふと沈黙が訪れて、扉を開けるタイミングを逸したフリーナは、長く歌劇場を盛り上げ続けた大スターとしての杵柄をフル起動させる。
「今日の歌劇、素敵だったね。主役とヒロインが最初から最後まで一貫して仲睦まじくて、見ていて安心感があったよ」
 砂糖菓子のように甘やかな台詞の数々を思い出しつつ前向きな評論を渡すと、ヌヴィレットも正しくそのバトンを受け取った。
「そうだな。想い合う間柄とはかくあるべきだと学習させてもらった」
 神妙な面持ちで頷くヌヴィレットに、フリーナはまた一つバトンを託す。
……僕たちも、やってみるかい?」
「それは……
 見開かれる薄い紫色の瞳の奥には今、フリーナと同じシーンが浮かんでいることだろう。舞台上の彼らはデートの始まりと終わりの度に、熱いベーゼを交わすのだ。
…………そうだな。倣うこともまた、必要なことなのだろう」
 少しの思考の末、そういう結論に辿り着いたらしいヌヴィレット。黒手袋に覆われた指がフリーナの頬に添えられ、美しい顔がゆっくりと近づいてくる。フリーナはそっと目を閉じた。
…………では、また」
 柔らかな感触が離れていくと同時、別れの挨拶が落ちてくる。フリーナも瞼を上げて、「うん、またね」と手を振った。
 脚の長い彼の背が見えなくなるのはあっという間だ。ほんの僅かな見送りを済ませたフリーナは、やっと玄関扉を開けて自宅の床を踏みしめる。そのまま閉めた扉に背を預けると、ずるずるとその場にしゃがみ込んだ。
 ──長い、長い一日だった。そう今日という日を振り返り。
「っ、……げほっ、」
 色とりどりの花束で、玄関を埋め尽くした。