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由崎
2025-05-12 00:38:56
21437文字
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永遠よりも長く、君を待つ
英ベスツリーを大幅に加筆・改稿しています
仏ジャン匂わせ有
※5/19完成しました
誤字脱字あるかも
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幕間1 「怪物の花嫁」
――
とても、遠い昔のことだった。
庭園には黄金色の陽が降り注ぎ、バラが香り、白い鳩が石畳の上を軽やかに歩いていた。
ローブを着た楽師たちがリュートを奏で、宮廷の貴族たちが微笑みを交わす。
その中心に立っていたのは、若き日のエリザベス。
この国の女王であり、俺の妻だった。
「グロリアーナよ、あなたの時代はまさに黄金です」
「こんなにも誇り高く、美しい王が他にいるでしょうか」
周囲の者たちは口々に彼女を讃えていた。
俺の胸は誇らしさで満たされていた。
この国の中心に、彼女がいることが、ただ嬉しかった。
だが、その祝福の声の隙間に、別の囁きが紛れていた。
「
……
でも、やっぱり噂は本当だったのね」
俺は気づかれぬよう陰に身を潜め、その声に耳を傾けた。
「女王は“あれ”と結婚した
……
国と結婚したのよ」
「時が止まり、歪むわ。永遠なんて、恐ろしいだけよ」
「ずっと“あの存在”と共にあれば、人間は壊れてしまう」
「可哀そうに
……
女王は、怪物の花嫁になったのね」
“怪物”
――
それは、俺のことだ。
イングランドというこの国のかたちを持ち、千年を越えて生きている。
この土地を体現する存在。
そのとき、俺の胸にはじめて「恐れ」という感情が芽生えた。
なぜ彼女は、俺を選んだのだろう?
なぜ、この“国そのもの”という異質な存在と手を取り合ったのだろう。
思い出す。
兄たちの反応。
フランスが口を歪めて笑いながら言った。
「お前、正気かよ? 人間と結婚なんて、冗談にもならない」
スコットランドは吐き捨てるように言った。
「その女を巻き込めば、ろくな終わり方はしない」
ウェールズでさえ、ただ静かに目を伏せていた。
だが、俺にはわかっていた。
彼女は王でありながら、同時にひとりの女だった。
寂しさを知っていて、強くあろうとするひとだった。
もしエリザベスがフランスやスペインの王と結婚していたら。
その瞬間、俺、イングランドという存在のかたちは変わる。
この王国の権力が外国の手に渡れば、国の輪郭は曖昧になり、この島、ブリテン島は外から塗り替えられてしまうかもしれない。
だから、手放せなかった。
愛していた。それ以上に、必要だった。
彼女が王冠を手に取った瞬間、ベスは“イングランド王国”の女王になった。
国と女王が結婚した。
それは詩ではなく、現実だった。
ベスはもう「人」ではなく、「この国の象徴」そのものになっていった。
誰よりも気高く、誰よりも孤独で、誰よりも強く、
誰よりも美しい“花嫁”。
だから、誰も彼女に触れることはできなかった。
誰も、理解できなかった。
それが、彼女の宿命だった。
そしてそれを与えてしまったのは、
――
俺だった。
“怪物の花嫁”と囁かれたその言葉は、
ただの中傷でも誤解でもなかった。
俺という“国”が、彼女を変えてしまった。
時の流れを狂わせ、人生を、感情を、選択を歪めてしまった。
それでも、ベスは最後まで俺を恨まなかった。
笑っていた。
誰よりも凛と、威厳をまといながら。
俺の手を取り、こう言った。
「あなたと生きたこの国の時間は、私のすべてだった」
だから、俺は永遠に背負い続ける。
“イングランド”という名を持つ限り、
彼女が過ごした日々を、この国の記憶として。
俺の誇り。
俺の光。
俺の唯一の妻
――
グロリアーナ。
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