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由崎
2025-05-12 00:38:56
21437文字
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永遠よりも長く、君を待つ
英ベスツリーを大幅に加筆・改稿しています
仏ジャン匂わせ有
※5/19完成しました
誤字脱字あるかも
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「隣人の正体」
アーサーと再会したのは、それから二ヶ月後のことだった。
弟は変わらず隣人たちと仲良くしていた。
特に赤毛の「ノースさん」とは気が合うようで、一緒に子ども番組を見ては大笑いしている。
その様子が、ベスにはなぜかとても安心だった。
「またお邪魔してるかもね
……
」
そう言いながら、ベスは自然とあの屋敷を見上げた。
古びたカーテンの隙間から、やわらかな灯りと笑い声が漏れている。
そこだけ時間の流れが違うような、不思議な空間。
(今日も、きっとあの中にいる)
そう思って門をくぐった瞬間、玄関の扉が開いた。
出てきたのはアーサーだった。
「
……
アーサーさん?」
思わず漏れた声に、彼はほんの一瞬だけ目を見開き、すぐに落ち着いた表情に戻った。
「
……
久しぶりだな。元気だったか?」
少しだけ照れたような、遠慮がちな声。
ベスは小さく笑ってうなずく。
「ええ、相変わらず元気よ」
そして、一瞬だけ迷いながら問いかけた。
「
……
チャリティーのとき以来、見かけなかったけど
……
どうしてたの?」
本当は知っている。
ロンドンで彼の姿を見たことも、フランスという名の男との会話も。
でも、それは言えなかった。
アーサーは少しだけ視線をそらし、空を見上げて息をついた。
「
……
出張があってな。仕事も詰まっていたし」
曖昧な返答。
けれど、その目に、あの日、ロンドンのカフェで見た影と同じものを感じた。
ベスは一歩、彼に近づいた。
胸の奥で冷たいものと熱いものが交差する。
けれど、視線はそらさなかった。
「
……
あなたは誰?」
アーサーの瞳がわずかに揺れる。
「あなたは、私より少し年上で、週末にはこの町に帰ってきて。お兄さんたちと喧嘩もするけど、とても仲が良くて、私は、そんなあなたしか知らない」
声がわずかに震える。
「でも
……
時々、私は、ずっと年上の人に話しかけてるような気がするの。言葉の重さも、仕草も、目の奥の寂しさも
……
全部が、まるで何百年も生きてきた人みたいに感じるのよ」
ベスはまっすぐに問いかけた。
「
――
Who are you?」
その瞬間、アーサーの仮面のような表情がすっとほどけた。
とうとう、この時が来てしまったという顔だった。
やがて彼は、静かに口を開いた。
「
……
俺の個人の名は、アーサー・カークランド。
それは、仮初めの名だ」
その声は深く、迷いのない響きを持っていた。
「本来の名は、イングランド。
正式には、グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国。俺はこの国そのものだ」
ベスの中に、静かに広がる波紋のような沈黙。
言葉にならない思いが胸の奥から溢れてくる。
そして、そっと唇を開いた。
「ああ、やっぱり
……
あなたは」
まっすぐに彼を見つめた。
「この国そのものなのね、アーサーさん
……
イングランド」
その名を
――
あの名を呼ばれた瞬間、アーサーの瞳が大きく見開かれた。
胸の奥にしまっていた何かが、確かに揺れた。
イングランド。
世界でたったひとり、あの時代に自分を「夫」と呼んだあの人が。
四百年の時を越え、まったく同じ声で、同じ眼差しで、今、自分の名を呼んだ。
その名が、この世に再び響いたことが、彼の魂を深く震わせた。
イングランド
――
アーサーは、今にも泣き出しそうな顔で、それでも静かに微笑んだ。
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