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由崎
2025-05-12 00:38:56
21437文字
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永遠よりも長く、君を待つ
英ベスツリーを大幅に加筆・改稿しています
仏ジャン匂わせ有
※5/19完成しました
誤字脱字あるかも
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「秋の隣人」
ベスの暮らす町では、ときどきチャリティーイベントが開かれる。
「家にあるものを売る」という小さな催しで地域の人々が古道具や雑貨を持ち寄り、通りに面した広場で市を開く。
今回が、ベスにとっては初めての参加だった。
父は出張中で不在。弟と二人、使わなくなったマグカップや絵本を小さなテーブルに並べて、出店の準備を整えた。
開始から間もなく、通りの先に長い列ができているのが目に入った。
列の先は隣人、カークランド兄弟の店だった。
「えっ
……
あんなに人気なの?」
ベスは首をかしげる。
「確かにカークランドさんの家、大きくて古いし
……
アンティークも多そうだけど
……
」
通りからは婦人たちの笑い声が聞こえてくる。
気になって、弟に「ちょっと見てくるね」と告げ、ベスは列へと向かった。
近づいてみると、 賑やかな輪の中で何人かの婦人が親しげに話していた。
その中のひとりがベスに気づき、にこやかに声をかけてくる。
「あら、あなた。最近引っ越してきたお嬢さんね」
「はい、あの
……
とても賑やかで楽しそうだったので」
そう答えると、婦人たちはうなずきながら言った。
「毎年恒例なのよ。カークランドさんの出品物はね、評判なの」
「とんでもなく古いのに、なぜか壊れないし、不思議と長持ちするのよ。まるでお守りみたいな感じっていうのかしら」
「私なんて三十年前に買った小さな椅子を、いまだに玄関に置いてあるの」
「三十年前
……
?」
ベスは思わず聞き返してしまった。
(両親の代の話? でも、あの家に両親らしい人はいないはず
……
)
小さな違和感が胸の奥に引っかかる。
「三十年前から
……
カークランドさんのご両親が?」
ベスがそう尋ねると婦人たちの表情が一瞬で凍りついた。
笑い声がぴたりと止まる。
空気が変わった。
冷たい風が肌をかすめたような背筋にぞくりと走る感覚。
やがて、ひとりの婦人がぽつりと口を開く。
「
……
そうなのね。あなたは最近越してきたから、知らないのよね」
その声には、どこか含みがあった。
優しいけれど核心を隠そうとしているような響き。
そしてもうひとりが言った。
「この町に住んでる人は、誰も“カークランドさんたちの親”を見たことがないのよ」
「え
……
?」
「私が生まれる前から、カークランドさん達はずっとあの姿のままで、あの家に住んでいるわ」
婦人の顔にわずかな迷いとそれ以上語らない沈黙が浮かんでいた。
ベスは言葉を失った。
目の前の婦人は明らかに六十代。
その彼女が「生まれる前から」と言っている
――
そんなはず、ない。
アーサーさんたちは、どう見ても若い。
アーサーにいたっては、せいぜい四歳上にしか見えないのに。
(
……
いったい、彼等は何者?)
胸の奥に、冷たい何かが落ちる感覚。
そのとき。
「おねーちゃん! お客さん来たよー!」
弟の声が現実へと引き戻す。
「
……
今行くわ!」
婦人たちに軽く頭を下げて、その場を離れる。
手を振って見送ってくれた婦人たちは、あくまで穏やかだった。けれど、その言葉は、耳の奥に深く残っていた。
(
……
ずっと、あの家に?)
ベスは帰り際、無意識に隣の屋根を見上げていた。
(アーサーさんたちは
……
何者なの?)
それは、静かに始まった違和感。秋の陽射しのなかで生まれた、ひとつの疑問だった。
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