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由崎
2025-05-12 00:38:56
21437文字
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永遠よりも長く、君を待つ
英ベスツリーを大幅に加筆・改稿しています
仏ジャン匂わせ有
※5/19完成しました
誤字脱字あるかも
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幕間2 「栄光なる女王」
「
……
イングランド様。陛下に、お会いにならないのですか?」
老いた侍従が、どこか怯えるような声音で問いかけた。
薄暗い書斎の中、イングランドは黙って本を閉じた。
返事はなかった。
ただ静かに窓の外の重たい空を見つめるだけだった。
――
もう、長く彼女に会っていなかった。
エリザベスの時間が、少しずつ
――
けれど確実に歪み始めたあの晩年から。
俺は距離を取るようになった。それが彼女のためだと、自分に言い聞かせて。
「そろそろ
……
崩御されても、おかしくない状態なのです」
その言葉が胸の奥を冷たく刺す。
まるで、凍ったナイフの先端を内側から当てられたように。
ベスがそんな年齢になっていたとは。
時間がそんなにも過ぎていたとは。
――
いや、俺が目を背けていただけだ。
ベスは今年で六十九歳。
彼女は尋常ではないほどの長命だった。
“国”である俺と共に生きることで彼女の時間は、確実に狂っていた。老いは遅れ、感覚はずれていき、まわりの人々と徐々に噛み合わなくなった。
レスターも、セシルも、フランシスも
――
彼女を支えた者たちは次々に先に逝き、ベスだけが、ひとり静かな孤独の中に取り残された。
それでも彼女は俺を恨まなかった。
「愛しているわ。
……
この国を、あなたを」
死の床でそう言ってくれた。
俺の手を、最後まで握っていてくれた。
だからこそ、それが残酷だった。
俺が“国”である限り、彼女を壊す運命だった。彼女の時間を狂わせ、周囲から孤立させ、そしてその果てに狂気にも似た孤独を与えてしまった。
俺はそれを見ていることしかできなかった。
(なぜ、彼女だったのだろう)
(なぜ、俺は“人”ではなかったのだろう)
もし普通の人間だったなら、彼女とは結ばれなかっただろう。だが、俺が“国”であり、彼女が“王”だったからこそ、俺たちは夫婦であることができた。
イングランドの最も美しい時代。
劇場に笑い声があふれ、港には交易船が並び、芸術が花開き、知識が広まり、人々がこの時代を「黄金」と呼んだ。
そのすべての中心にいたのが、エリザベスだった。
気高く、孤独で、誰よりも誇り高く、この国を背負った女王。
彼女こそが、俺の誇りだった。
この国の“光”だった。
――
何百年が過ぎても、
俺は、あの光を決して忘れない。
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