3話✧燼械

✧執筆協力
ふかひれ。様

✧スチル協力
米2ろう様ふかひれ。様NoE様



ほんの数刻前、樊凌が死を覚悟した直後。

「リンリン!」

突然、響き渡る声で名前を呼ばれる。ああ、別れの挨拶か。彼は様式を大切にするから──

そう思ったのに。

「鍛練仲間が減って困っていたんだ!明日からはお前が相手をしてくれ!」

予想外の言葉に樊凌は目を丸くする。次の瞬間、歓声に満ちていた会場から一瞬だけブーイングが起きた。そしてすぐにその声は消える。

何事かと目を開き、ぼやける視界で観客席に目を凝らした。
そこには親指を立てて歓声をあげる観客と、その観客と同じポーズをして紛れているグラディエーターがいる。



その瞬間、旗が上げられ再度高らかなホルンが鳴り響いた。そして瞬きをした隙に気付けば元の荒地に戻っていた。

「え、なんで?」

樊凌が仰向けのまま困惑していると誰かが自分の顔を覗き込んでいる気配を感じた。

「グラ、ちゃん?」

彼の金髪が朝陽に照らされキラキラと輝いている。快晴の瞳は絶えぬ焔を奥に宿しており、金糸の髪と相まって、あまりに眩しい。
グラディエーターは樊凌を抱き起こし、肩を貸した。

「観客達はお前がまだいい試合を見せてくれると信じて、お前を生かす選択をした。それに俺もまだまだ強くなるお前が見たい!!」

そう笑うグラディエーターに樊凌は困ったように笑う。あの場で死ねていればきっともう辛い思いはしなくて良かったのに。
良くも悪くも自分の思い通りにいってくれない彼は、残酷なまでに自らの熱意に真っ直ぐなのだと樊凌は痛感した。

「もうしゃァないなぁ
「はは!どちらかが死ぬまで付き合って貰うぞ!覚悟しておけ!」

そう笑った2人を朝日が照らす。
そして彼らはふっとこの時代から消え、いつもの館へと戻った。



*3話 「燼灰」✧ 終*