さもゆ
2024-11-16 22:21:28
45032文字
Public BF
 

【BF腐】ツイログ

ツイッターまとめ!女体化とか学パロとか暗かったりとかもあるから地雷原です!
最初の1ページだけ月英。あとはA英、CPなし。

2020.4.4 たまごのお粥pixiv投稿作品


(生存ifで、どっちが抱くかを二人で話し合ってる話)

じゃんけんで決めましょ




「俺を抱くのは汚いから、嫌か?」
 ──答え方を、間違えてはいけない、と英二は思った。
 そろそろ限界だったのかもしれない。あの頃と違い、緩慢な時の流れは穏やかに自分たちを殺しにきていて、世界を不明瞭なまま歩んでいくのを許してはくれなかった。
 友情だと信じていたものは確かに真実で、なのに、それだけでは到底足りなかったことに気づき、世界はそうして埋めるべきぼやけた空白を知らしめてくる。確信してはいても、ただ、現状に甘え、二人して見て見ぬふりをしていた。
 今は、じっと、アッシュは英二を見ている。
 答え方を、間違えてはいけない。
 もし間違えたら、世界はずっと不明瞭なままで、どころか、空白が、友情で保っている輪郭まで侵してくるだろう。そうしたら、何もかもが、無になる。それだけは嫌だった。それは、彼も同じはずだった。
 だから、その問いに、どれだけの勇気がいったことだろうと、ひっそり息を吐く。そしてか細く息を吸い、「僕が、」また一度、今度は大きく深く呼吸をし、吐き出した。
「僕が、きみを抱いた全ての人間を、殺してやりたいと言ったら、きみ、泣くだろう」
 英二は翡翠の瞳を見つめ上げた。
 彼は答えない。ベッドサイドの灯りを受けて揺らめく瞳で、隣に座るこちらの目を、黙って見ている。英二の答えは、まだ終わっていないのだ。
……僕は、普通の男だから。好きな子を、抱きたいって思うよ」
 空白が、世界に干渉している。
「そして、普通の、男だから。好きな子が、過去に何回も、何人にもレイプをされたら、そいつらを全員殺してやりたいと思う。……今なら、赦さずに、殺すだろう」
 あの頃の友情の部分が、悲鳴を上げている。
「でも、きみは、」
 世界が、震えている。
 英二は微かに、力なく微笑んだ。
……それを、望んでいない。きみは僕を、イノセントだと思っている。僕が奴らに殺意を向けたら、きみは自分のせいだと、泣くだろう。それが、嫌なんだよ」
 そっと、瞼を伏せた。眼球が、薄い皮膚の裏側で瞬く光を追い、震え、それは痙攣というのかもしれなかったが、英二は涙を滲ませるその予兆動作をすっかり無視した。「だから、汚いなんて言うな」みっともないくらい涙声だった。
 次に瞼を開けた時、世界はどうなっているだろう。全てを、無にしてしまっただろうか。それとも不明瞭なままだろうか。
 けれども、英二の答えは、それで全部だった。
 代わりに問いだけが、ひとつ、残されているけれど。
 僕を抱くのは怖いから嫌かい、などと。そんなものは、答えが分かりきっている。自分と同じような答え方をするだろう。埒が明かない。意地悪ではなく、往来の粗雑さで、英二は問いを口にはしなかった。任せ切りでいい。これは彼の望み通りにしないと、英二が苦しい。彼が自分から望み、欲して、決めたことなら、どっちだって僕は構わないのだ。
「英二」
 さて、世界を空白にするにはあまりにも優しい呼びかけに、英二はようよう瞼を開ける。
 やっぱり優しい微笑みをして、アッシュは、拳を持ち上げた。
「じゃんけん、しよう」
「は」
「じゃんけんしようぜ」
 rock paper scissors ……英二はこの時ばかりは自分の耳がうまく単語を拾えなかったのかと思ったが、そうではないことは、持ち上げられた拳と、彼の穏やかで柔い笑みと、震えて何も残らなくなると怯えていた世界が、ただの温かな寝室に戻ったことで、深く、察した。
「運で決めてしまって、いいのかい」
 いかさまをするつもりなら、それはそれでも、いいけれど。
 アッシュは握った拳と、英二の握りそびれている片手にひとつひとつ視線を寄越し、いいんだよ、と答えた。
「これなら、毎回悩めずに、決めれるだろ」だって、俺は、俺だって、お前が望むなら、どっちだっていいんだ。
 英二はきょとんとして、ふふと笑った。あはは、と口を開ける。なあんだ、なんだよ、きみってやつは。
 やっぱり僕が思ってるより、もっとずっと、タフなやつだ。
 それでは、と。もとからある輪郭はそのままに、空白が埋まりかけ、世界が明瞭さを帯びていく。二人ははしゃいだ声とともに、腕を振った。
 Rock─Paper─Scissors!