さもゆ
2024-11-16 22:21:28
45032文字
Public BF
 

【BF腐】ツイログ

ツイッターまとめ!女体化とか学パロとか暗かったりとかもあるから地雷原です!
最初の1ページだけ月英。あとはA英、CPなし。

2020.4.4 たまごのお粥pixiv投稿作品


(リクエスト、英ちゃん視点、テーマは木枯らし)

木枯らしが来た!




 短い秋が終わり冬がひょっこり顔を出してくるタイミングはいつだってどこだって寒さが身に染みてくる。出した顔からぴゅうぴゅう息をふきかけて、木に必死に引っ付いている枝葉を攫い、枯れた葉っぱを弄ぶ。日本ではそれを木枯らしと呼ぶ。
 ではアメリカではどう呼ぶのかというとそれについてはひと通り言語の違いの面白さに感心し合ったので置いといて、大事なことは、そう、冬の訪れを感じられるものは実質『木枯らし』と呼んでもいいんじゃないだろうか、ということだ。
 何が言いたいかっていうと、つまり、そう。
 僕の友人は木枯らし1号だ。

 木枯らし1号は感覚がとても鋭い。眠気に忠実だし些細な音でもすぐに拾うしにおいにだって敏感だ。でもその鋭い感覚をわざと鈍くすることもできるから、彼はきっとおそろしく理性的な感情家だった。
「やあ、起きてる?」
 木枯らし1号は朝が弱い。そのため、毎日僕が起こしに行かなければならない。起きてる? なんて訊きながら起きていないのは絶対に分かっているので同時に布団をゆさゆさ揺すって目覚めさせなければならないのだ。
 布団の中はあたたかそうだ。実際、とてもぬくい。だから木枯らし1号は中々そこから出ようとしない。
「さむいよ」
 と、薄目を開けてぶうたれている。
 もちろん僕は優秀な家政夫(と呼んでも差し支えないだろう。家の中は僕の守り場だ)なので、少しの優しさも持ち寄らず、ここから更に畳みかけてやる。
「寒くても起きる。起きるんだ。起きろよ」
「ううん」
「ううんじゃない」
 丸まる布団をぼこすか殴る。すると観念したのか、木枯らし1号が腕をひょろりと布団から出した。振っている。“起き上がらせて”
 しょうがないなあ。
 僕はふうと吐息をついてその手を掴んだ。
 あったかい。
 僕の手はさっきまで水を使っていたので、さぞかし温度差があるに違いなかった。ぐい、引っ張ってやる。寝起きでぐでぐでの木枯らし1号の上半身が起き上がる。瞼は半分ほど開き、あくびを噛み殺している。「ご飯できてるから、ちゃんと来いよ」僕は手を離して踵を返そうとした。が、しかし。
「アッシュ?」
 手が離れない。
 彼は、こちらからは指を解いている掌をがっしり握り、指の腹でこすこす擦ってきている。
 あ、冬が来た。
 僕はここで彼が木枯らし1号だと気づくわけだ。寒さに敏感、冬の訪れを気づかせる風のような存在だと。

 彼は僕より体温が高い。人種的に平熱からして違うから当たり前だ。
 そして、感覚が鋭い。僕が本当は寒がっているのをよく感じ取っている。
 更に、スキンシップが過多だ。これはほかのアメリカ人からしたらそうでもないらしいが、日本人の僕からしたら会話の最中に友人の肩など抱かないので過多と言える。(かた、だけに! なーんて。さむっ)
 以上から、彼は、冬になると、僕との物理的距離が途端にもっと近くなり、秋を終わらす木枯らし1号と化す。
 彼はあたたかい。
 隣で歩いているとき、冬にいつもより密着してくれるととても有り難い。
 ヒーターが部屋をあたためる前に首を触らせて暖を分けてくれたりもする。
 テレビを見るときだって、伸ばした片腕にすっぽり収まってしまえば眠ってしまいそうなくらいぽかぽかする。
「はあ~……
 寝起きの彼の手に握られている僕の手は悲しいほど冷たい。腕には鳥肌が立っている。目の前にはぬくい布団とあつい彼。
 ため息吐いた僕を見て、にや、と笑う。
「ん」
 両腕が広げられた。木枯らし1号の容赦ない攻撃。冬を受け入れろ、冬に気づいた僕に語りかけている。
 離された手を擦り合わせ、僕は、じとっと睨んではみた。
 でも、まさか、冬の訪れに勝てるわきゃないのだ。
 一拍置いて、僕はぴゅうっと木枯らし1号に飛び込んだ。

 冬だなあ、彼が楽しそうに笑っている。