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botanin5
2024-11-14 03:17:26
18728文字
Public
薬さに♀(小説)
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わたしの赤
ハッピーエンド
薬研から審神者への恋愛感情ゼロの状態で、お付き合いがはじまりますのでご注意ください
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「
…
全部同じに見える」
「ぷっ」
選んでくれるというありがたい言葉に乗っかって、一緒に化粧品売り場へと足を運んだのだが、やはりと言うか予想通りと言うか、薬研には少し難しい任務だったようだ。綺麗に並べられている試供品を掴む手には迷いがないのだが、じっと見ては難しい顔をしている。
「手に塗ってみると結構違うよ。唇と肌の色は違うけど
…
参考にはなるかな。あ、薬研は手袋してるか
…
っていうか、私が使うんだし、私の手に塗ってみていいよ」
薬研にそっと手を差し出してみれば、踊りを誘う王子様みたいに優しく私の手を取った。手に持った試供品の口紅をそっと手の甲に滑らせてくる。ちょっとくすぐったかったけど、真剣な薬研にドキドキしてこっそり顔を眺めながら大人しく待った。
「これ」
薬研が選んだのは綺麗なレッドで、いつもピンク系の色を選んでいた自分にはとても派手に見えた。でも、薬研が私に似合うと思って選んでくれた色だ。それはとても特別な赤に見えた。
「ありがとう、明日からこれ使うね」
「ん。使ってくれ」
試した色を落として足取り軽く会計を済ませ、本丸に帰るためにいつも通り薬研と手を繋ぐ。ぎゅっと手に力をこめると、薬研はふっと笑った。
散歩がてら少し遠回りして本丸への帰路を歩く。大きな川に差し掛かって、遠く日が傾き始めているのが見えた。堤防をゆっくりと進んでいれば、ふと薬研が足を止めた。どうしたのかと振り返れば、少し言いにくそうに口紅をつけてくれないかと言った。
「え?」
「さっき買ったやつ。
…
せっかくだから一番に見たい」
不思議に思いながらも、珍しい薬研からのお願いだ。叶えないという選択は無い。手早く手鏡を取り出して、元々塗っていた分がもう落ちかけているのをいいことに上からさっと赤を引いた。むにむにと唇を少し馴染ませて、鏡を閉じて薬研を見れば、こちらがまだ口紅を持っているのも構わずにそっと頬に手を滑らせてきた。薬研が頬に触れてきたのも初めてで、今日は心臓が暴れてばかりだ。
「ど、どうかな」
「
…
似合ってる」
「
…
へへ、ありが
―――
」
近づいてきた薬研の顔と、唇に触れた柔らかい感触に思考が停止した。ちゅっと小さな音を立てて、ゆっくりと温もりが離れていく。
どうして。
真っ先に浮かんだ言葉はそれだった。
カツン、と落ちた口紅を気に留めず、持っていたカバンを投げつけて距離をとった。どうして。薬研は一線を踏み越えた。恋人のフリをするにしたって、やりすぎだ。中身の無いキスなんて、望んでなかった。欲しくない。
こんなの、あんまりだ。
「どうしてっ
…
キスしたの!?」
ぽろぽろと零れ落ちる涙を拭う余裕は無い。
落ちた鞄を拾った薬研は戸惑った顔をして、心底不思議そうに言ってのけた。
「
―――
何か間違ったか?」
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