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botanin5
2024-11-14 03:17:26
18728文字
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薬さに♀(小説)
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わたしの赤
ハッピーエンド
薬研から審神者への恋愛感情ゼロの状態で、お付き合いがはじまりますのでご注意ください
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一晩考えて、もう一度薬研に告白してみようと決めた。
あの様子を見るに、やはり薬研は私という人間の事を特別好いているわけではないのだろう。でも「恋人が欲しくて告白する」のと「相手が好きだから告白する」のは違うし、そこを勘違いされたままでいるのは悲しい。
うちの本丸では近侍は一週間交代で、今日から宗三が当番だ。顔を合わせればちらりと視線を寄越したが、小さくため息を落として近侍の席に着いた。昨夜の出来事を掘り下げる気はないようだ。態度が変わらない様子に少しほっとした。たまにこぼされる小言に耳を傾けながら黙々と仕事をこなしていけば、いつもより早く書類を終えることができた。一息ついて、伸びをしながら畳にごろりと転がると、障子越しに声がかかった。
「大将、ちょっといいか。外出許可が欲しいんだが」
執務室であることに気を使っているのかいつもより控えめだが、突然落とされた薬研の声に驚いて飛び起きた。障子を開ければ、彼は「なんだ、仕事終わってたのか」と部屋を見回してからこちらに紙を差し出した。買い物や遊びのために本丸から出る際に提出してもらうように作った外出届だ。
「薬研、出かけるの?」
「あぁ、ゴム手袋が切れちまって。他にもいくつか日用品を買いに行きたい。ついでに乱のしゃんぷーも頼まれたんだ。夕飯前には戻る。いいか?」
「うん」
外出届を受けとって、カードになっている許可証を審神者用の机の引出しから取り出す。薬研に渡す前に、ふと思いついた。これはもう一度あの告白について話をするチャンスじゃないだろうか。
「あの、私も買い物についていってもいい?」
「構わんが
…
本当に日用品を買いに行くだけだぞ?特に面白みのある場所にも行かねぇし。退屈させちまうと思うんだが
…
」
「薬研と一緒に出掛けたいの」
目を見ながら念を押すように言えば、薬研は戸惑ったような顔をして「そうか」とこぼした。近侍である宗三に少し空けるけどよろしくと声をかければ、呆れたような「気をつけてくださいね」という返事が返ってくる。薬研を先に玄関へ向かわせて、急いで準備をしてくるからと自室に駆け込んだ。
「乱のシャンプー選んできたよ」
「ん。ありがとな大将。俺には何が違うのか分かんねぇし、助かった。これで買うもんは最後だな」
会計を済ませて店を出ると、日はかなり沈んでおり夕焼けが空を赤く染め上げていた。荷物は全部自分が持つと聞かない薬研の意見を尊重し、少し後ろをとぼとぼ歩く。どうやって切り出せばいいのか。何から話そうかと言葉を選んでいると、正面から仲睦まじく歩く審神者と刀剣がやってきた。手を繋いで微笑み合っていて、誰がどう見たって良い仲だ。
もやもやと嫉妬がわき上がってきてしまって、そんな自分に悲しくなって視線を落とす。無言ですれ違ってから五歩ほど歩くと、ふと前を歩いていた薬研が足を止めて振り向いた。
「手、繋いだ方がよかったか?」
気を使ったような表情に、心臓がツキンと痛んだ。薬研のもとまでそっと近づいて、買い物袋を持っている手をそのまま両手で包む。
「薬研、あの、ちゃんと聞いてほしいんだけど」
「
…
どうした?」
「私ね、恋人が欲しくて薬研に好きって言ったわけじゃないよ。薬研の事が本当に好きだから、その気持ちを伝えたかっただけで
…
。薬研が私に対して恋愛感情を持ってない事は分かってる。でも、応じてくれたのは前向きに考えてくれるつもりがあるからだと思ってたから、昨日の夜はちょっとびっくりした」
明るく話そうと思ったのに、困ったような笑顔にしかならない自分の表情筋が憎い。自分が気持ちを押し付けているのだから、責めるような言い方はしたくないのに、言葉の選び方が分からない。ぐるぐると頭が回るうちに、もう一度告白すると決めたことを思い出した。
「
…
もう一回だけ、ちゃんと言わせて。
…
私、薬研の事が好きです。」
「
…
そうか」
「困らせてばっかりで、ごめん」
段々声に力が入らなくなっていく。泣いたらだめだ。もっと困らせてしまう。薬研の手をぎゅうと握ったまま、顔を上げられないでいた。どんな表情をしているのか、見るのが怖い。
「大将、俺は、あんたが望むなら恋人になるのはかまわないと思ってる。」
その言葉に、思わずぱっと顔をあげた。そこには変わらず優しい眼差しでこちらを見る薬研がいる。あの、縁側で告白した時となんら変わらない。がらがらと何かが崩れていく気がした。これ以上の言葉は得られない。薬研は、私の気持ちを正しく受け止めた。その上で「あんたが望むなら」という答えを出した。私は、薬研にとって「主」以外の何者にもなれないと突きつけられたのだ。
「薬研は、私のこと
…
好きにはならない?」
声が震えそうになるのを必死で我慢する。今は、泣くな。
「
…
そうだな
…
あんたの事をそういった目で見たことは、ない」
突きたてられた言葉に、息が止まった。分かっていたことなのに、改めて言われるとどうしてこんなに苦しいんだろう。足元から崩れ落ちそうだ。一気に体が冷えていって、二の句が継げない。
「でも、大将としては好ましく思ってるし、人の子としても気に入ってる。だから、恋仲になることに抵抗はないぜ。大将が望むなら、恋人として大切にする」
出口のない迷路に誘われている。
愛してないけど、愛してくれると言う。
―――
あぁ、もう、それでもいいや。
「そっか
…
。うん。
……
恋人に、なってほしい。改めて、よろしくお願いします。」
「
…
ん。よろしく頼む」
手を握ったままお辞儀をすると、薬研も小さくお辞儀を返してくれた。改めて「手繋ぐか?」と聞かれたため、お言葉に甘えて繋いでもらった。荷物は二人で分けて持った。薬研と手を繋ぐことが出来るなんて。夢にまでみていたはずなのに、手袋越しに包まれている手とは反対に、心にはぽっかり穴が開いていた。
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