botanin5
2024-11-14 03:17:26
18728文字
Public 薬さに♀(小説)
 

わたしの赤

ハッピーエンド
薬研から審神者への恋愛感情ゼロの状態で、お付き合いがはじまりますのでご注意ください





主の部屋に来てみれば、タオルや枕が散らばった部屋に呆然と立つ薬研がいた。小さくため息を吐いて落ちていた日記帳を拾い上げながら近づくと、ぽつりと呟く声が聞こえる。

「俺は、酷い奴だったか?」

いつも自信ある態度とその存在感を放っていたことで気が付かなかったが、肩を落とす背中は頼りなさげで、こうして見ると薬研は自分よりずっとずっと小さい。愛らしい弟を思い出して、あぁ、彼も短刀だったなと場違いなことを考える。

好かれたことを、後悔しましたか?」

意地悪な質問をすれば、弾かれたようにこちらを見た薬研は、苦しそうに睨みを利かせてくる。

「そんなわけ、ねぇだろ」
「どうしてもっと早く好きだと言ってやらなかったんです。初めは本当にその気が無かったんでしょうけど、気持ちは変わっていたでしょう?」
同じだと思ったんだ。そこに言葉があっても無くても、もう恋人同士になってたから辿りつくところは結局変わんねぇし、同じだって思ってた」
「同じなわけないでしょう」

ぐっと何かをこらえるように拳を握る薬研の手が、びくりと小さく震えた。

「言葉を持たなければ伝えることは出来ないのだと、この身をもって実感してきたんじゃないんですか」
……ばかだな俺は」
「えぇ。本当に、大ばか者ですよ」


「なぁ、俺は、信じてもらえるか?」

自信なさげに揺れる瞳は初めて見るもので、この男はこんな顔もするのかと意外に思った。

「それは、僕に聞くことじゃないでしょう」
探してくる」
「きっと、簡単には見つかりませんよ」
「見つけてやるさ」

ひとつ大きく深呼吸をして、薬研は部屋から駆け出して行った。