botanin5
2024-11-14 03:17:26
18728文字
Public 薬さに♀(小説)
 

わたしの赤

ハッピーエンド
薬研から審神者への恋愛感情ゼロの状態で、お付き合いがはじまりますのでご注意ください





朝ごはんまでもう少し時間があるので、手を繋いだまま厩の壁に背中を預けてのんびりすることにしたのだが、

「えっ絶対にやだ!」
「そんなに嫌がることないだろ。もう全部読んじまったし、今更じゃねぇか」
「だからって、薬研にあげるとか無理だよ!恥ずかしい!!読み返すんでしょ!」
「当たり前だろ」

とんでもない事に、薬研は書き終わっている二冊の日記帳を、真顔で「くれ」とのたまった。今書いている一冊も、書き終わったら寄越せと言う。
ラブレターのつもりで書いてたようなものだけど、言葉は日記調で綴っているし、どう考えても恥ずかしい。

「ま、二冊はもう俺の手元にあるからな。寄越す気がねぇなら返してやんねぇよ」
「どのみち私の手に戻ってこないじゃん
「新しい日記帳は俺が買ってやるからな」
冗談でしょ?」

にやりと笑った薬研に不貞腐れた顔を返していると、彼はふと何か思い出したようにポケットをまさぐり始めた。取り出されたのはあの時買った赤い口紅で、拾ってくれてたんだと驚いた。
薬研はおもむろにキャップを外して「動くなよ」と頬に手を滑らせてくる。塗りやすいように軽く口を開けて大人しくしていると、体温で少し溶けていたようで口紅は乗せた途端に柔らかく崩れてしまった。

「あ、付けすぎた」
溶けちゃったみたいだね、――んっ!?」

突然、食いつくように覆われた唇に目を白黒させていると、逃がさないとばかりに後頭部へ手が伸びてくる。ぎゅっと目を瞑って、呼吸のタイミングを見計らっていると下唇を舌が辿ってゆっくりと離れていった。

「ごちそうさん」

ぺろりと口元を舐めた薬研の舌を目で追う。

「また買いに行かないとな、赤」


私から移った赤い口紅は、薬研の白い肌によく映えていた。