botanin5
2024-11-14 03:17:26
18728文字
Public 薬さに♀(小説)
 

わたしの赤

ハッピーエンド
薬研から審神者への恋愛感情ゼロの状態で、お付き合いがはじまりますのでご注意ください





「もうすぐ一ヶ月ですね」
「そうだねー
「一ヶ月記念日おめでとうございますとか言った方がいいですか?」
やだ、宗三らしくないなぁ」

縁側で寝っ転がってアイスを食べながらだらだらと休憩していれば、兄弟でおやつを食べたのだろう、空の食器を持った宗三が通りかかった。通り抜けるのかと身体を起こせば、思いがけず隣に腰を下ろす。一口食べる?とアイスを差し出せば「いりませんよ」とぴしゃりと断られた。

調子はどうですか」
「ふふ。心配してくれるなんて宗三は優しいなぁ」
「はぁ」

なんとなくはぐらかしていると、畑当番を終えたらしい薬研がタオルで顔の泥を拭いながら通りかかった。やげん~と手を振れば、にっと笑って近づいてきてくれる。

「お疲れさま。暑かったでしょ」
「まぁな。いいもん食ってんじゃねぇか」
「食べる?」
「一口もらう」

すっとアイスを差し出せば、ぱくっと一口食べてぺろりと口元を舐めた。こういう、一々の仕草が可愛くて心臓を締め付けてくる。今日は日記にこれを書こう。自分の世界に入り込んでいるうちに、薬研は着替えに行くと部屋へ戻ってしまった。

「こんな調子です」
そうですか」

呆れ顔の宗三は、それでは僕も行きますと食器を運びに厨へ向かっていった。






「薬研、これあげる」

いつものように部屋へ遊びに来て話し相手になってくれたあと、そろそろ寝るかと立ち上がった薬研に手渡したのは、綺麗な細工が施されたステンレスのしおりだ。律儀に恋人を演じてくれる彼になにかプレゼントしたくなって、でもあまり高級なものを渡して負担になるのも嫌だったので、お手頃だけど綺麗で使いやすいしおりを選んだ。

「へぇ、綺麗だな。なんで急に?」
「なんとなく。貰ってほしくて」
「俺には贈り物すんなって言ったくせにな」
「私はいいんです~。薬研が喜んでくれたらうれしいなって思っただけ」
ふぅん。ありがとよ」

薬研は少し照れたように視線を外した。喜んでくれたようだ。受け取ってもらえなかったらどうしようとも考えていたのだが、案外素直に手に取ってもらえてほっとする。

「いつもありがとね。薬研、好きだよ」
なんだよ、急に」
「へへ、何となく言いたくなった。」
「そうかい」

にっと笑って私の頭をくしゃくしゃに撫でると、薬研は障子を開けて「おやすみ、大将」と優しく声をかけて戻っていった。すっかり乱れてしまった髪を手ぐしで戻しながら、はぁぁぁと大きく息を吐いてしゃがみ込む。

「やっぱり、だいすきだなぁ



思いがけず漏れた声は、静かな廊下に佇む小さな影にひっそりと届いていた。