botanin5
2024-11-14 03:17:26
18728文字
Public 薬さに♀(小説)
 

わたしの赤

ハッピーエンド
薬研から審神者への恋愛感情ゼロの状態で、お付き合いがはじまりますのでご注意ください






少し肌寒さを感じてかくりと目が覚めた。辺りは薄暗く、日が昇るまではまだ少し時間があるだろうが、うっすらとその片鱗を見せていた。座り込んだまま、泣き疲れて眠っていたらしい。軋む身体を無理矢理伸ばして深呼吸をする。気持ちはだいぶ落ち着いていて、頭も幾分すっきりしていた。部屋に戻って少し横になろうかと腰を上げたところで、ざざっと土を蹴る音が聞こえた。

「こんっな、とこに、いた!」

息を荒げて、苛立ったような声を上げたのは、薬研だ。いまいち現実味がなくて、見つかってしまったとか、どうしてここにいるんだというより先に、汗だくだな、なんてぼんやり思った。

「どんだけ、探したとっ、はぁっ、思ってんだ!」

乱した息を整えようともせずに、ずんずんとこちらに近寄ってくる姿はまるで鬼のようだ。正直言ってすごく怖い。薬研がかなり怒っている。はっと意識がクリアになって、逃げようと後ずされば厩の壁に突き当たった。目の前まで来た薬研に思わずぎゅっと目を閉じると、腕を掴まれて引き寄せられ、しっかりと抱きしめられた。

身体が冷えてる」
「あ、の、薬研」
「大将、俺の話を聞いてくれ」

頼む。そう言って抱きしめる腕に力をこめられてしまえば、暴れる気なんて起きやしない。押し返そうと上げかけた手を降ろして、大人しく待つ。

最初は、大将が喜ぶならそれでいいって思ったんだ。好きだという言葉を疑ったわけじゃなかったが、心から惚れこんでいるとまでは信じていなかった。あんたの気持ちをまともに受け止めもせずに、その場でただ願いを叶えてやることが一番だと思った。」

抱きしめられている腕が少し緩む。

「でも、一緒に居るうちにな、だんだん会うのが楽しみになって離れがたくなって。……朝起きて、今日は何を話そうかって一番に考えるんだ」

ゆっくりと身体を離して、私の顔を覗き込んだ薬研は、ちょっと困ったように笑った。

「はは、また泣かせちまった」

っ、薬研は、私の事が好きですかっ
「好きだぜ大将。あんたにはいや、お前には、ずっと隣にいてほしい」

急にお前なんて呼ぶから、自分が薬研のものになったようで、じわじわと顔が熱くなっていく。

「本当の恋人として、この手を繋いでくれるか」

差し出された手をそっと握り返す。涙が止まらなくて、上手く笑えないのがくやしい。薬研の目がきらきらと光っていて、あぁ、彼も泣いているんだと気がついた。

「はい、よろしくお願いします」

嬉しそうに笑った薬研の顔を、私は一生忘れないだろう。