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botanin5
2024-11-14 03:17:26
18728文字
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薬さに♀(小説)
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わたしの赤
ハッピーエンド
薬研から審神者への恋愛感情ゼロの状態で、お付き合いがはじまりますのでご注意ください
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まさか薬研とお付き合いすることに成功するなんて!
この日ばかりは、部屋に戻るとまず初めに日記に日付を書き込んで、嬉しい気持ちをたくさん詰め込んで、何度も何度も読み直した。ずっしりと恋心を溜めこんだ二冊の日記帳と、特別な日を書き込んだ今の日記帳。三冊を並べて眺めて、ようやく叶ったのだという喜びに思わず上がる口元を抑えることは難しい。
とはいえ、入浴を済ませ熱を追いやり、再度日記帳を見返していれば流石に冷静さを取り戻してくる。頬杖をついて一番新しい日記をパラパラと捲ってぱたりと閉じた。
どうして薬研は、告白に応じてくれたのだろう。
薬研が私に恋愛感情をもっていないことは、これまでずっと彼を見てきた私が一番分かっている。だから、今まで告白しなかったし、これからもする気はなかった。
「
…
友達から
…
始めましょう
…
ってやつだろうか
…
」
それとも、冗談だったのだろうか。やっぱり、暑さにやられて白昼夢を見たのか。ちらりと時計に目をやれば、その針は0時を指そうとしている。さすがに今から薬研の部屋に出向いて「昼間言ってたことって本気?」と聞きに行くのは憚られる。いやでも、気になってしまって眠れる気がしない。どうしよう。
うじうじと迷ってついに部屋を出てしまい、廊下をうろうろと歩いているうちに部屋へ戻ろうとしている宗三左文字に遭遇した。ひらひらと手を振ってみれば、はぁ、と気だるげにため息を吐いてこちらに近づいてくる。
「
…
こんな時間になにをしてるんですか」
「宗三こそ」
「僕は喉が渇いたので、厨でお水を頂いてきただけです」
「あぁ、今夜も暑いもんね」
「
…
それで?」
今度はそちらが答える番だと言わんばかりに、ちらりと視線を寄越される。どうしてこの刀はこうも流し目が様になるのか。悔しいので口にしたことはないが、確実に色気で勝てる気がしない。
「私も
…
水を飲みに
…
」
「嘘ですね。貴女の部屋から厨に行くなら、この廊下は遠回りでしょう」
「う。
……
薬研の
…
ところに
…
」
「薬研、ですか?
…
こんな時間に?」
意外そうな顔をして、話の続きを促すように沈黙されれば答えないわけにはいかない。初めに誤魔化してしまったので、今更「ちょっと怪我しちゃって」も通じないだろう。もごもごと言い訳を探していると、宗三はもう一度はぁ、とため息をついた。
「付き添います」
「えっ!?」
「こんな時間に、短刀とはいえ男の部屋へ一人で行くのは感心できる事ではないですよ。廊下をうろうろして、大方喧嘩でもしたんでしょう?明日からは僕が近侍の番ですし、職務中に居眠りされても困ります。ほら、早く行きますよ」
「えぇ!ちょっと!」
どうしよう。上手に躱す言葉が見つからないまま、宗三に付き添われて薬研の部屋の前まで来てしまった。部屋に明かりはついているが、声をかける勇気が出なくてもじもじとしていると、後ろではぁ、と小さなため息が聞こえて、そのまま障子越しに声をかけてくれた。
「薬研、僕です。主が貴方に話があるようなので、少しいいですか」
「
…
ん?おう、今出る」
かたりと開いた障子から顔を見せた薬研は紺色の浴衣を身につけていて、いつもよりさらに大人びて見えてどぎまぎする。目が合って、心臓が早くなるのを抑えるように胸の前で手を握りしめていると、後ろから宗三が話を促してくる。でも、宗三の前でこの話をしてもいいのだろうか?不思議そうな顔をする薬研にますます焦りが募る。どうしよう。
「ほら、さっさとしてください」
「
…
あの、昼間の
…
」
「ん?
…
あぁ、なんだ、やっぱりやめとくか?」
「え?」
けろりとそう言い放った薬研の顔を思わず凝視してしまう。やめる、とはなんだ。恋人同士になることを?なぜこんなに平然としているのだろうか。まるで、店先で悩んだ品物を買うのかどうか確かめるような物言いだ。混乱して何も言葉を発することが出来ない。
「
…
?
…
なんのお話ですか?」
宗三の訝しげな声にびくりと肩が震えて、握りこむ手に力がこもる。
「昼間に大将が、俺と恋仲になりたいって言うもんだから了承したんだが、やっぱりやめるって言いに来たのかと思ってな」
「恋仲に
…
?受けたんですか?貴方が?」
「あぁ」
「貴方、主の事を
…
いえ
…
『この娘のことを』好いていたんですか?」
「ん?大将のことは好いてるぜ」
「
……
」
宗三からの質問の意図を、薬研はおそらく分かっていない。少し冷静さを取り戻して、宗三を見上げると戸惑ったような表情を返してくる。大丈夫だという意味を込めて口元に笑みを作り薬研へ視線を戻すと、未だ不思議そうな顔でこちらを見ている。声が震えないように深呼吸をして、無理矢理笑顔を作った。
「違うよ。これからよろしくねって、改めて言いに来たの」
「
…
そうか。律儀なのは結構だが、こんな夜中じゃなくても良かったんじゃないか?」
「そうだよね、ごめんね。なんだか、我慢できなくて」
もう一度笑えば、薬研も少し困ったように眉を下げて笑った。
「突然お邪魔してごめんね。もう戻るよ」
「部屋まで送るか?」
「ううん、宗三に送ってもらうから大丈夫」
「そうか、もう夏とはいえあんまり薄着でうろついて身体冷やすなよ。」
「うん、気をつける。おやすみなさい」
「おやすみ」
障子が閉まる前にさっと視線を外して廊下の角まで一気に歩いた。ゆっくりとついてきた宗三は、私の後ろに追い付くとはぁぁと今日一番の大きなため息を吐いた。
「貴女もなかなかの、うつけ者ですね」
「あはは
…
宗三に言われると辛いな」
「どういうつもりで薬研に恋仲になりたいなんて言ったんです?」
弾かれるように宗三を見上げると、真剣な顔でこちらをじっと見つめていた。
「恋仲になりたいってお願いしたんじゃないよ
…
好きって言った」
「
……
」
「付き合いたいとか、恋人になりたいって意味で、好きって言ったの」
「
…
なるほど」
「私、言い方間違えちゃったかな」
「
……
そうですね
…
僕は間違えているとは思いませんが、薬研にはしっかり伝わっていない可能性はあります。
…
というか貴女、薬研のことが好きだったんですね」
宗三は少し眉を寄せて、難しそうな顔をしている。そんなに意外だっただろうか。たしかに、今まで誰かに恋バナなんてしたことはない。それに、日誌にみんなの様子を書くため、なるべく色んな刀剣と話をするよう心掛けていた。表面的には分からなかったのかもしれない。
「うん。
…
ずっと、好きだったの」
「
…
そうですか」
思ったより宗三の声が優しくて、乾いた心臓に染み込んでいくようだった。
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