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お芋さん太郎
2022-07-26 21:11:55
38092文字
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僕のヒーロー
#ツイステ×映画ベイマックスのクロスオーバー
#シュラウド兄弟
#設定捏造
#オリキャラ・モブキャラ
#爽やか読後感
#最後にオマケあり
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◆
「タダシが死んだ」
イデアの言葉にオルトが顔を上げた。
いきなりの穏やかではない情報に、オルトは目を白黒させながらイデアの傍に寄る。イデアはもともとゴーストのように青白いのに、なけなしの血色まで奪われたかのような顔色で、呆然と立つ姿は本物のゴーストよりもゴーストらしくユラユラと不安定に揺れていた。ポカリと開けたままの口は音を発するのも忘れ、続く沈黙の中で、寮生らが推しがとか地雷がどうとかで争う声が廊下から聞こえた。
「タダシさんって、タダシ・ハマダさん?兄さんのお友達の」
オルトが疑問を口にすると、時が動き出したかのようにイデアが突然振り向いた。一つ息を吸い、ゆっくりと吐く。
「
…
友達じゃないよ、あんな奴。僕が一方的に絡まれてただけ。陽キャだし」
「でも、兄さんがあんなに楽しそうに僕もわからないような専門の話を語れるのってタダシ・ハマダさんだけだよね。タダシ・ハマダさんの話も興味深そうに聞くし、それって友達ってことじゃないの?」
「そ、それは
…
アー、いや、そうレスバトルだよ。戦ってる。出会って5秒で。喧嘩ってやつ。犬猿なんだ。もちろん僕が犬でケルベロス。あっちが猿、ただの猿」
もちろんオルトは、素直じゃないイデアが『友達なんだけど友達と認めたくない』からそんなことを言っているとすっかり分かってしまっている。だから「喧嘩するほど仲がいいんだね」と暢気にクスクスと笑った。弟に頭が上がらないイデアは、こうなってしまったが最後、肩を竦めるしかないのだ。
イデアがもう一度、たくさんのウィンドウが開くPCの画面を見つめる。浮かび上がった一件のメール。送信者欄にはタダシの名前が記載されているが、本当の送信者はキャスというタダシの保護者だった。
「キャスさんって、タダシ・ハマダさんの叔母さんだよね」
「タダシは早くに両親を亡くしてるからね。歳の離れた弟と一緒に彼女に引き取られてる」
「苦労したんだね」
「あいつ、こんな馬鹿だったなんて思わなかった。十分な教育を与えてもらって、世間を驚かすような研究をしてるくせに、いつも僕のこと振り回すくせに、陽キャのくせに、お、弟を
…
弟を、残して
…
し、死ぬなんて」
イデアがPCの画面を親の仇のように睨みつけ、ギザギザの歯をギリリと音がするほど噛み締める。目にはかすかに涙が浮かんでいた。初めて会ったあの時、観葉植物の後ろで出会った深いブラウンをもう見ることができないことの名残惜しさと、もう互いの研究について語り合うことができないことの物悲しさ、まだ14歳の弟を残して逝ってしまったことへの怒りが、心の中でグチャグチャになって爆発してしまいそうだった。
実を言うと、イデアは自分たち兄弟とハマダ兄弟を重ねていた。もちろんふたつの兄弟の境遇は比べるまでもなくまったく異なるが、工学好きな兄とその弟、ただそれだけでシンパシーを感じた。だからタダシの弟のヒロとオルトを重ねに重ねてしまい、ヒロのことは可哀そうに思ったし、タダシのことは自分に重ねていたので死ね(死んだけど)と思った。
イデアの場合はオルトを造った。寂しくて悲しくてどうしようもなかったからだ。でもヒロの場合は
…
。
と、イデアが考えてハタと思った。あのケア・ロボットは?名前は忘れたが、あのふわふわマシュマロボディは一生忘れられない。自分も原案の段階で少しだけ手を貸したあのロボット。タダシが死ぬ数日前に完成したと報告を受けた。正直な話、喉元をかきむしりたくなるほど悔しいがあのアイデアは最高だったと思うし、世界の常識が一変するほどの大発明だった。もちろんオルトと比べたら微妙だけど。
こんなこと言いたくはないがタダシは素晴らしい発明家で技術者だった。そしてあのロボットには、そんな彼のすべてが詰まっていた。いちおう口出ししたイデアにさえもその全貌を明かしたことは無いのは、彼が意地悪をしたのか、はたまた好意によるイデアへのサプライズか。タダシの性格からして十中八九後者であろうが、やっぱりそういうところがイデアをイラつかせた。
まァあのロボットを完成したところで、タダシが死んだ今、扱いは宙ぶらりんの状態だろうとイデアには簡単に予想できた。そして弟のヒロは、タダシ曰く「自分よりも才能がある」ときたもんだ。ヒロは、大学は、あのケア・ロボットをどうするつもりなのだろう。というか、もしかして燃えた?火事で燃えちゃった?いやでも、残っているとしたら
…
。
正直なところイデア個人としてもアレはかなり『そそられる』。ボディはビニールと言ってはいたが、あの手触りは絶対ただのビニールではない。きっと科学技術の最先端を行くあの国の新素材だ。素材の詳細は他国に出さない方針らしいから、ずっと解析したいと思ってはいたが今まで動けずにいた。それにハイパースペクトルカメラは魔導波でのスキャンも可能にすれば活動領域を広げることができそうだし、軽さも追求したいと言っていたから初期段階から骨格の素材も変えている可能性もある。
ボディも骨格も全部バラバラにして部品の一つ一つまで解析し、すべてを暴く。そのあとで、電気式ではなく魔導式に組み替えればツイステッドワンダーランドでも難なく起動できるだろう。
あのよちよちあるきの最高にふわふわなマシュマロちゃんを、ボルトの1本から油の一滴まで自分の好きなようにできるとしたら?それはなんて素敵なことなのだろう!
こうしちゃいられない、とイデアがワタワタバタバタと動き始め、オルトが怪訝な顔をする。
「どうしたの?兄さん」
「行こう、オルト」
イデアの目論見を微塵も知らない可愛いオルトが「どこに?」と首を傾げた。
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