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アスナショウコ
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【創作|馬子軸】アンシーリーコート
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外伝 バスカヴィルの魔犬【後編】
あらすじ
舞台は英国。不可思議な事件を巡る、残された者の物語――。
ベイカー・ストリート221Bに暮らす小説家、エマ=ジェームズ・ワトソンにある人物からとある純血貴族の不可解な死を解き明かしてほしい、と依頼が届く。忽然と姿を現した魔の犬。青い炎を吐き出す口、真っ黒なその犬に狂気を見出して死んだ男。これは殺人か、それとも神秘の気紛れか? ワトソンとシャルルマーニュはその地、ダートムーアへと向かう。
前編→
https://privatter.me/page/6596ce95596b9
中編→
https://privatter.me/page/6598c6d08eaa3
ついに後編です。クソ長いです。これで終わりなのでお付き合いいただければ~。頑張ってミステリっぽくしていますが、ガチでミステリ書いてる人が読んだら怒りそうだな…とちょっと思っています。概要欄に色々書いたら余計なネタバレしそうなので黙っとこうね~~。
感想や応援よければ→
https://wavebox.me/wave/b064pup7uhwd9l39/
スペシャルサンクス:笋様、Littorio様
いつも遊んでくださってありがとうございます。
笋様より『鳥の一族』の皆さまのお名前や一部語録などをお借りしております。
Littorio様より『渡りの一族』の皆さま、アマネセール家の御家名をお借りしております。
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__数刻前
バスカヴィル邸 シャルルマーニュの部屋
瀬川の鍼灸治療により、幸い私の体が四肢爆散するという最悪の事態は回避した。日本の魔術というか陰陽道や鬼道というものは、そうした魔力の体内循環を強く意識することが重要になってくるらしい。
私の場合体外への出力が阻害されていたため、秘孔をつけばすぐに改善するだろうとの事だった__実際に施術開始から数分も絶たぬうちに魔力のめぐりが良くなり、私は虚空からペナンローヤーを取り出すことができた。
「国が違うだけでこうも魔術への向きあい方が変わるというのも、興味深いな」
「俺は貴方が幻想種だったことに驚きが隠せませんけどね」人間への擬態がうますぎるでしょう、と瀬川は困り顔で笑う。
「
……
私が幻想種であることは、他の者には漏らさないで貰えるとありがたい」
「無論言いません。ですが今日は嫌に冷えますね」
「確かになあ。今六月だぜ? 初夏だってのにクソ寒い
……
ジェームズ、俺の上着取って」
椅子の上で器用に丸まっているシャルルマーニュは、一歩も動きたくないのかベッドの上に放り投げていたガウンを所望した。私は仕方ないのでそれを取って投げ渡す。今はシャルルマーニュに頭が上がらないのである__何と言っても瀬川と渡りをつけてくれたのはこの牡馬だった。
受け取ったシャルルマーニュは爺臭い緩慢な動作でガウンに袖を通す。震えながらもブランデーグラスを手に取りストレートで数ミリ呷る。多少は体が温くなったか、気のせいだろうが足を椅子からおろして丸くなるのを辞めた。
「しかしベリル嬢、怖かったなあ」
「
……
あそこまでフィニアにきつい物言いをするとは、正直思っていなかった」
単なる食客にしては態度が大きすぎないかと今は思う。フィニア・バスカヴィルは故チャールズ・バスカヴィル卿の姪であり、このバスカヴィル家の正当な跡継ぎだ。
ベリル・イライザには何かこの家に関係があったのか? だが三か月前にジョージ・ステープルトンと共にこの邸宅へ食客としてやってきたはず。目の前の瀬川迅一は一年前からここにいる。そう考えると彼が何か、私たちの知らないベリル・イライザとジョージ・ステープルトンの情報を握っているのではないかと思われた。
「瀬川。ベリルがあそこまで強い物言いをするのに思い当たる節はあるか?」
「そうですね
……
ミス・イライザ
……
まず彼女は嘘をついています。看護師のはずです」
「看護師ぃ!? なんでそこ偽った?」シャルルマーニュは叫び勢いよくこちらを向く。
「さあ。とにかく、住み込みの看護師として三か月前やってきました」
「住み込みの看護師
……
」
ステープルトンの方も自分の身分を偽っていたのかと問えば、そちらは違うらしい。ベリルはなぜそんなことを?
「ミスター・ステープルトンから聞いているかもしれませんが、亡くなったチャールズ卿は心身を病んでいました。俺がここに食客として迎え入れられた時には、既にあまり心臓の調子も良くなかったと思います。しょっちゅう医者が出入りしていましたから」
「その医者、何者よ?」シャルルマーニュが椅子を抱えて瀬川の近くに置き、座りなおしながら聞いた。
「ロビン・モーティマーという年配の内科医です。プリンスタウンにあるヤードの派出所の近くに個人病院を持っています。元はロンドンのチャーリング・クロス病院で循環器内科医をしていたそうです」
「
……
随分よく知っているな」
「外交官特権に似たような権限を持っているので、これぐらいは簡単に調べられます。他に何か必要な情報があれば、日本領事館の螺旋捜査部を通じて調べられますが」
「いや、今は大丈夫だ。ありがとう」
明日にでもモーティマーの病院を尋ねるか、と頭の端で考える。だがそこまで心身が不調だったならば他の病院に紹介するなり、入院して治療するなり何か無かったのかと思うが。
ベリルが身分を偽っていたという点に引っ掛かる。別に看護師など隠さなければならない職業でもないだろうに。少なくとも故チャールズ卿はこの屋敷で療養していた。看護師をわざわざ住み込みで働かせるということは、余程他の地域に行きたくない理由があったのか__それとも、別の思惑によってここに留め置かれていたのか。
「そういやさ迅一。お前、何だっけ。神秘の遺物を回収するためにここへ来たんだよな」
「そうです。まあお二人も俺と目的は殆ど同じようですし、隠しても意味なさそうですね」
瀬川はそう言ってブランデーグラスを取りだし、シャルルマーニュはそれに少し注いだ。
「こちらの国においては確か『十三の秘匿事項』と呼ばれているそうですね」
「
……
!」
私は驚き、一瞬息を飲んだ。まさかその言葉が出てくるとは少し予想外である。
「一年半ほど前に日本である事件が起きたんです。一家の跡継ぎ候補が次々不審な死を遂げていくというもので、既にそれは解決されました。犯人は相続権を有する人物の母親であり、息子も共犯関係だった。でも息子の方は一切何もしていなかったので罪には問われませんでした。シャルさんはご存じかもしれませんが、『犬神事件』というものです」ああ、とシャルルマーニュは声を上げた。
「殺人教唆という訳でもないのか?」
「母親が自分を家の跡継ぎにするため他の跡継ぎ候補を殺しまわっている事を察したが、何も言いだせなかった、という所でしたからね」確かにこれでは罪に問うのは難しいだろう。
「
……
その犬神事件と『十三の秘匿事項』に一体何の関係がある?」私は純粋に疑問を感じて問う。
「二件目の殺人がチャールズ卿の死に方と全く同じなんですよ」
瀬川は残っていたブランデーを飲み干して続けた。
「バスカヴィル家はその『十三の秘匿事項』に関わるある遺物を厳重に封印する任を与えられていました。しかし何者かがその遺物を持ち去り、そして犬神事件で使用した。螺旋捜査部はそう考えています。結果的にその証拠は発見できず、呪いの痕跡なども
……
国家陰陽師たちまで動員して探し回りましたが
……
。故に二件目の殺人だけは未だ殺害方法が分からず、未解決事件のままです」
「犬神事件っていやあ湖から足が生えたような
……
あの凍死体がやたら有名だよな」日本ではそんなに有名な事件だったのか、と私はシャルルマーニュに視線を遣る。
「そうですね。マスコミが勝手に事件現場に入り込んで写真を取って、スクープ記事にしたせいで面倒事が増えた」瀬川は辟易したように言った。「俺は事件当時、外事課から出向して犬神事件の捜査に参加していました。その過程でバスカヴィル家の事を知り、調べさせて欲しいとチャールズ卿に連絡をしたんです。その後はお二人に以前話した通り、一年前からここに滞在して周囲を色々調べまわっています」
「
……
だが一年間調査してなお、その遺物は見つかっていない」
「そうなんですよ」瀬川は項垂れる。「館内の部屋は調べ尽くしましたが、隠し扉の類なども無し。昔要塞として使用されていたはずなので、隠し部屋の一つや二つあってもおかしくはないとは思うのですが」
「
……
魔術的に秘匿されている可能性は?」
「残念ながら、俺はその手の『秘匿破り』が大変苦手で」瀬川は苦々しい表情で打ち明けた。
「調べてられていないわけか」私は空からペナンローヤーを取り出す。「そういう調査は早い方がいい。
……
この館全体に私の魔力を張り巡らせて、隠し部屋の類が無いか探そう」
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