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アスナショウコ
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【創作|馬子軸】アンシーリーコート
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外伝 バスカヴィルの魔犬【後編】
あらすじ
舞台は英国。不可思議な事件を巡る、残された者の物語――。
ベイカー・ストリート221Bに暮らす小説家、エマ=ジェームズ・ワトソンにある人物からとある純血貴族の不可解な死を解き明かしてほしい、と依頼が届く。忽然と姿を現した魔の犬。青い炎を吐き出す口、真っ黒なその犬に狂気を見出して死んだ男。これは殺人か、それとも神秘の気紛れか? ワトソンとシャルルマーニュはその地、ダートムーアへと向かう。
前編→
https://privatter.me/page/6596ce95596b9
中編→
https://privatter.me/page/6598c6d08eaa3
ついに後編です。クソ長いです。これで終わりなのでお付き合いいただければ~。頑張ってミステリっぽくしていますが、ガチでミステリ書いてる人が読んだら怒りそうだな…とちょっと思っています。概要欄に色々書いたら余計なネタバレしそうなので黙っとこうね~~。
感想や応援よければ→
https://wavebox.me/wave/b064pup7uhwd9l39/
スペシャルサンクス:笋様、Littorio様
いつも遊んでくださってありがとうございます。
笋様より『鳥の一族』の皆さまのお名前や一部語録などをお借りしております。
Littorio様より『渡りの一族』の皆さま、アマネセール家の御家名をお借りしております。
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***
余剰魔力は全てこの奇跡へ回す。龍脈から、大地から、全てから魔力を吸い上げる。
全て、全て、この昏く遥か数億光年先にいる外宇宙からの尖兵を葬る為だけに。
嘗てこの世界には奇跡があった。
私がまだエマ=ジェームズ・ワトソンという、ジョン・ワトソンという意識を持つ以前の世界は水であり、泡であり、陸には葦が生え、星と月、太陽の光だけがあって、人がいた。
以前の私ならば彼らが来ようと何もすることはなかっただろう。他の原生神秘に任せて、私はひとり深海を揺蕩っているだけだったはずだ。
だがそれでは駄目だ。英国を愛した男がいた。人を愛した男がいた。謎解きを愛した男がいた。
人助けは謎解きでついてくるオマケだと言いながら、あの男は常に誰かの味方だったのだ。
「フィニア。貴方の気持ちはよく分かる」
私は呟く。ダートムーアという場所を愛したチャールズ・バスカヴィル卿。そしてその優しい叔父を慕ったフィニア・バスカヴィル。
理不尽にその思い出すら踏みにじられ、他者に蹂躙される痛みを私はよく知っている。
「だからこそ貴方を止める。その獣たちは決して貴方の痛みに寄り添うことはない。
貴方の痛みに寄り添えるのはこの星の者だけだ」
魔力が収束し、小さな真球を生み出す。
瀬川がシャルルマーニュに走れと叫んだ。流石に長年神秘に携わるだけあり勘がいい。
〈__凍てつく海を割り、真なる聖者は辿り着く。いつの日か貴方は気づくでしょう〉
〈__嘆きは海、海は怒り。泡はここに、貴方は暗闇〉
歌は省略できない。獣たちはいつの間にか数百匹まで増え、巨大な意志を持った一つの生命体のように私へ襲い掛かった。
〈__波間に揺れて、悲鳴を奏でろ〉
____彗星の声を聞きなさい。
獣は一様に動きを止めて天を仰ぎ見ていた。彗星がこちらに向かって降ってくる。優美な曲線を描き、いくつかの星が地を抉る。だが地面にはクレーターどころか石のかけらすら降ってくることは無い。
唯々、バスカヴィルの魔犬をその青い炎で焼き払っている。
私は遠くにフィニア・バスカヴィルが立っているのを見た。彼女の表情を伺うことはできない。銀色の長髪が風に吹かれて暴れていた。白いスカートとブラウスは泥にまみれている。ただじっとそこに立ち、私を見ていた。
「本当に、その気があればこの島ごと皆殺しにできるのね
……
」
「
……
疲れた。
……
私は休む。逃げるなら逃げたらいい。どうせもう神秘管理局は嗅ぎ付けて、秘匿執行官を派遣するか会議しているだろう」近場の岩に腰かける。フィニアは迷いなくこちらへ近づいてきた。右肩から先の腕が外れかけている。先程獣に食い千切られそうになった傷だった。
「ワトソン先生」
「
……
何だ」
フィニアは私の前で膝をついた。人を燃やすことのないはずの青い炎が彼女の足を燃やしている。
彼女は最初から人ではなくなっていたのだと気づく。あの猟犬たちと契約した時から、使徒になってしまったのだと。
「私の事を本気で案じてくださって、ありがとうございました」
「
……
私は貴方を救えなかった。気休めにもならない、誰かの行為を模倣した優しさだった。貴方の心に寄り添えてなどいるものか」
「そんなこと、ありません」フィニアは初めて会った時のように少し頬を赤らめて微笑んだ。「嬉しかった、です。嘘ばっかりだったけど、これは本当」
「フィニア。君は
……
こんな風に復讐で身を削るべきではなかった」
「そうですね。本当に、そう。だって、敵わないもの。ワトソン先生には敵わない」
フィニアはそう言って、私の唇に自分の唇を重ねた。
伝える熱など持ってはいない、触れるだけのもの。私の心は捧げ尽くした。誰にも渡す気などなかった。
「貴方が好きでした。優しい人。貴方の毒は、優しくないけど
……
これでいいの」
激しくフィニアは血を吐く。赤黒い血液が草原を染めた。
ふらつく彼女を私は抱きとめる。
「だって、これぐらい、の、
……
痛みは、背負わなくちゃ。私、人殺し
……
だもの
……
」
フィニア・バスカヴィルはこと切れた。
彼女の足は燃え尽きて、なくなっていた。
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