はしびろこう
2026-03-11 23:39:24
28368文字
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マハバ特異点

みんな大好き!1ページ練習のちよどさんが描かれたOPEDがはちゃめちに良くて‥三次創作書かせていただいたらアフターストーリーまで頂戴したっていうこの世の夢みたいな一週間でした‥
こちらに掲載許可頂いてるのでみんなぜひ
最初のOPED
最後のマハバ聖杯戦争後日談
がちよどさん作品です!



召喚
「告げる――
 声が聞こえる。歩いて、歩いて、歩いて歩いて擦り切れて、何もわからなくなったような脳みそに響く。
「汝の身は我が下に、我が運命は汝の剣に。
聖杯の寄る辺に従い、この意、この理に従うならば応えよ――
 その声を、知っている。
――誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者――
ああ、その声が望むならば。
――汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ――

 現界した瞬間に身体に感じる重さに、生きていた頃を思い出す。そして、召喚の光に目をくらませた目の前の少年――というにも幼い少年を前に、――ああ、この男に、再び遣えることができるなんて。再臨段階を第二再臨へ。
 光に目が眩んだ少年は、押さえていた目元をあけて何度か目を瞬かせた。
「神兵……ほんとうに……
 溢れた声に、膝を折る。
 立てば腰ほどまでしかない矮躯に、声変わりもまだのボーイソプラノ。自分の記憶とはまるで遠いが、間違いない。間違いようがない。
「サーヴァント、アーチャー。召喚に応じ参上いたしました」
「わたしはクル国の王子、ドゥリーヨダナ」
 存じております、とは言わない。
 ああ、また、この場におさまれるなんて。
「あーちゃー!お前はなんでも願いを叶えてくれるんだろう?パーンダヴァの奴らを追い払ってくれ!」
 俺の名前をだと思ったようで、そう呼ぶ少年の手の甲に刻まれた令呪に目線を滑らせる。
 火傷したように刻まれたそれは輝いて、霊脈に引いたであろう魔法陣とともに緩やかに光が馴染んでいっていた。
――今あいつらに何かあったら、疑われるのはアンタだろう?」
 ゆら、空気が揺れる。ああ、これには覚えがあった。
「でも、でも――あいつらがきてから、弟たちも怪我させられて!」
 ピン、張ったような殺気に、ドゥリーヨダナの頭を抱える。
 「それにあいつ!わたしに!お前女か?なんで侮辱を――んぶぅ?!」
 甲手で後頭部を包み胸に抱えながら後ろから飛んできた槍を掴む。槍を構える男を見上げれば、舌打ちをして音を紡ぐ。
――そいつはそこで死んでおいたほうが世界のためだ」
「いると思ったぜ」
 ギチギチギチギチ、落ち着いた声の応酬と思えないような圧が甲手にかかる。旦那は後ろを取られて今しがた命を狙われたのを理解したらしくギュッと黒い鎧を掴む音が聞こえる。
「ビーマァ!!」
 甲の受ける角度を変え滑らせて懐に入り込む。大人しく身を縮こめてくれたドゥリーヨダナを宝物を持つように包みながら、入った懐から肘をかちあげて顎を狙うが、薄皮一枚――纏った暴風で肘を逸らされた。ちっ――舌打ちをして肘を落とし裏拳を叩き込もうとすれば、数歩下がり、腕に暴風のような風が纏う。
「オラァア!!」
「おおお!!」
 振り抜かれる前、肘まで腕をつっこんでもう一度顎を突き上げる。暴風は俺とドゥリーヨダナを避けて後ろの森を円状に弾き飛ばした。掴んだ顔面を地面に叩きつけようとしたが、逆の腕が旦那の方に伸びてきたので、旦那を抱え直し身体ごとひいた。
……
「あ、ちゃ、」
 声が震えて、泣き出す一歩手前なのがわかる。恐怖で涙が引っ込んでるだけかもしれない。
「安心しな、あんたにゃ傷一つつけさせねえよ」
 声はつとめて優しくしたが、効果があるのかないのか、必死に首に回された腕が震えている。
 チリチリ、神経一つ、指先で誘いと様子見を繰り返しながら一つたりとも気を抜かない。いつでも動けるように緩めた身体で向かい合う。
 向こうのマスターは少し離れたところにいる。とにかくこのまま――ここでこいつを叩き潰すか、逃げるかの二択だ。
 思案を巡らす間に、向こうのマスターが声を上げた。
「ランサー、撤退だ!」
「ああ?まだまだだろ。怪我なんてしちゃいねえぜ」
「目立ちすぎた」
……チッ」
 舌打ちをしたビーマは、俺に抱えられたドゥリーヨダナを睨みつけて、旦那は怯えたように胸板に縋りついた。
 行くならさっさと行けよ、と睨みつければ言われなくとも、とマスターを抱えて暴風に消える。
 神秘の秘匿、というやつだろうか。
 この時代に?未だ神仙やら神の息吹が濃い時代だ。森を半分吹き飛ばしたくらいならば、なくもないと思うのだが。
「あ、あーちゃー……
 まあいい、懐で怯えている主人を抱え直した。旦那に色々、説明したり聞いたりしねえと。

 ※

 真昼間から部屋の中にこもって、旦那は俺の話に耳を傾けていた。
 令呪、聖杯戦争、そのほか必要そうな知識もいくつか。
「へー、つまり最後まで勝てばあいつらをどこかにやれるんだな」
 十に満たない子供の興味である。まあそれくらい理解してくれりゃいいか、と座り直す。
「それでこれが、れいじゅ!」
「おう」
「なんでも三回、お前に言うことを聞かせられるんだろう?」
「おう」
 ものすごく考えてから、悪いことだとわかっているのかこしょこしょと耳元に顔を寄せたので、頭を傾けて近づける。
「これ、しねって言ったらあーちゃーしんじゃうのか?」
「死んじまうな」
……
 おっかないもの、と理解してしまったようで、手の甲の令呪をごくりと唾を呑みながら恐々と触れていた。
「じゃあ、令呪にあーちゃーの顔みせて!って言ったら見せてくれるのか?」
「コラァ!そんなことに令呪使うんじゃねえ」
「きゃはは、やめろぉ!」
 脇をくすぐって膝に乗せてやれば、くすぐったさにキャッキャと笑ってはあ、ふう、と落ち着いたようで手の甲を見ている。
「だっておまえの顔気になるじゃないか」
「勘弁してくれ」
「ううん」
 気になる、と顔に書いてあるが、この男は事情があるものの事情を詳らかにしたりはしない。理由があるのだろう、と放っておける男である。
 気になるけど仕方ない、あきらめる、としょんぼりしたドゥリーヨダナに、ありがとよと膝をつく。
 膝をつけば、喉が渇いたと侍女が持ってきた茶を渡される。ああ、ちゃんと毒味を他人に任されるよう教育されているのだ。
 ぱちん、パーツをいくつか外して口元だけあらわにしてひとくち。
 口の中で転がして、問題ないと判じて嚥下。
「ん」
「おまえ色男ではないか」
「は?口しか見えてねーよな」
「そんっっな無駄のない口元しといて色男じゃないなんてありえん」
 まあわたしにはおとるが!と胸を張った少年に頬が緩む。
「ありがとよ」
 顎元に落としたそれを戻して再び嵌める。
「えー、隠しちゃうのか?」
「隠しちまうんだよ」
「なんで?」
「見せられねえの、ごめんな」
「もったいないな」
 顎周りをはめているのをガチャガチャと掴んで、もったいない!と言いながら外すのを諦めたらしくベッドに体を投げ出した。
 ああ、この手を再び取って、守らせてもらえる日が来ようとは。

 20250319.