はしびろこう
2026-03-11 23:39:24
28368文字
Public
 

マハバ特異点

みんな大好き!1ページ練習のちよどさんが描かれたOPEDがはちゃめちに良くて‥三次創作書かせていただいたらアフターストーリーまで頂戴したっていうこの世の夢みたいな一週間でした‥
こちらに掲載許可頂いてるのでみんなぜひ
最初のOPED
最後のマハバ聖杯戦争後日談
がちよどさん作品です!


綱2

 戦うときに恐れはない。
 いいだけだからだ。
 無駄な力みも、精神の高揚もない。
 朝起きたら顔をあらうように。
 腹が減れば食事をとるように。
 人とあったら挨拶するように。
 毎日、毎日、粛々と行う――そう言うことの一つに過ぎない。
――
 目の前の男が、通路の半分を埋めるような巨体であろうが、神の子供であろうが、関係がないのだ。
 斬る相手であれば、斬るだけだ。
「遺言はあるか?あんたのマスターに言っといてやるよ」
「特にはない。お前はあるか」
 男の周りに風が巻き上がる。
「おいおい、俺に勝つつもりか?」
「体が大きくて気まで大きくなるのは結構だが、的がでかいだけだと気づかないか?」
 ゴッ!暴風のようなスピードで踏み込んでくる男が間合に入るのを待って斬り上げ、手を揃えて体を整え袈裟、ついでに脚を――とりあえず三回ほど斬りつける。
 風の鎧を纏う男。
 だが、纏う風の隙間に合わせれば問題ない。空気だって、層なのだ。物体だと思えば、切れる隙間は必ずある。それを見極める目が、あるかどうか。
 パアンッ!体をすり抜ける間に脅しのつもりも含めたらしいそれを含めて、斬りつけた跡から血が吹き出す。
……っ!?さすが最優のセイバー、ってことかよ……!」
「大振りが過ぎる」
 攻撃など、鬼を相手に飽きるほど捌いている。
 当世風に言うならば鬼殺しの得意技だ。
 チッ、廊下なので得意の槍に纏わせることもできずに再び両手に。もう一度同じ手で来るつもりかと思い、今度は腕を切り落とそうとすれば、刃先が飛んでいき、暴風で身体が廊下の隅まで吹っ飛ぶ。
「っぐ」
 ――濃密度に層を重ねて風を生成して二層目は一層目と風の向きをずらしたのか。
 刀でこれを貫くのは骨が折れる。
「おおおらぁっ!!!」
 追撃して来た男に刀を構え直す。
 次の手、せっかくならば巻き込まれてみるか。
 男の身体を覆う暴風巻き込まれた剣先についていくように体を巻き込めば、男は体の外に纏っている風のために拳を当てることはできない、ただし――纏った風には終わりがある。関節の後ろで終わる――そこで刀を返そうとすれば――
 ビタ!身体が止まり、そのまま転倒したおかげで、受け身は取れなかったがビーマの裏拳はもらわずに済んだ。
 動かない。なるほど、これが――令呪の強制力。
「何をしている!!」
 廊下の向こうから来たのは、オレのマスターだ。びき、本気で体を動かそうとするが、指一本動かない。
「お前にはドゥリーヨダナを殺すように放ったはずだ、何故ここにいる」
「俺は凶兆の魔性を殺すように召喚されたはずだ」
「は?」
「あれは、ただの子供だった。魔性ならざる子供を殺すことはしない」
……はあ」
 仕方がない、と言う顔。
「令呪を持って命ずる――渡辺綱、ドゥリーヨダナを殺せ」
――
 キンッ――男の手が光り、一つ模様が消える。
 ギリ、ギリ――体が、勝手に動いた。なるほど、これは、意思ではなく――体の方を勝手に操るものか。
「っ、なるほど」
 魔性と戦うのは無論だ、そして道具の自覚もある。
 だが無辜のこどもを殺すのは納得できん。
 それでも体は、勝手に子供を殺しに走るだろう。
 
「いけ、渡辺綱」
 
 俺は知っている。
 何も変わらない。
 人を殺す時は、動かなくなるまで斬ることだ。
 だがとりあえず、自分の時は腹にしておくべきだろう。
 武士として、矜持に死ぬならば。
 ぞず、腹を一文字に深く切りつける。
「なっ」
「やらないと言ったぞ」
 介錯も自前でやらねばならないが。
 人としての矜持ために死ぬのも、当たり前のことなのだ。やることは、死後だろうが、変わらない。

 20250323.