はしびろこう
2026-03-11 23:39:24
28368文字
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マハバ特異点

みんな大好き!1ページ練習のちよどさんが描かれたOPEDがはちゃめちに良くて‥三次創作書かせていただいたらアフターストーリーまで頂戴したっていうこの世の夢みたいな一週間でした‥
こちらに掲載許可頂いてるのでみんなぜひ
最初のOPED
最後のマハバ聖杯戦争後日談
がちよどさん作品です!



ビーマ

 赤らむ空。睨み合い。
 ビーマのマスターは、身を隠しているのか、それとも千里眼を持つようなバラモンなのか姿は見えない。ランサーで顕現しているビーマに単独行動のスキルはない。マスターを殺すか、サーヴァントを殺すかである。
 ビーマを呼べるだけのバラモンが旦那と敵対しているのはこの先少しばかり不安なので、マスターを倒せて仕舞えば良かったのだが。
 
「デート中によそ見なんかすんなよ」
「何がデートだ気持ち悪ィ」
 ギリ、この男、ビーマを前にするといつでも新鮮に怒りが湧いて来ていい。手の中に法輪を顕現させ、構える。
 旦那は――もうこうなれば見えないところにかくすようなことはできないし、こいつの目的は俺との戦いじゃなく旦那の命。大人しく抱えて戦うしかない。
「あーちゃー?」
 寝起きでよくわからないらしい旦那がまどろみの間であげた声に背中を軽く叩く。
「悪い旦那、絶対怪我させたりしねえから我慢してくれ」
「ああ!」
 信頼して、任せる。それを手放しにされちまうと――こっちはやる気がでちまうよなぁ。仮面の下で笑って、身体を密着させる。重心が狂わないよう、意識する。
 全身を視界に収める。呼吸と誘いの飛ばしあい――お互いどちらかと言えば特攻殴り合いが好きなタイプだ。――それでも俺は旦那を抱えている。後の先一択。
 沈黙が、破れるのは一瞬。
 痺れを切らせて、風の防御を張りながらビーマが地面を滑るように駆け出してくる。拳の周りに乗る風を見つめる。風を纏わせると言うそれの弱点は、拳を中心に巻かねばならないと言うこと。
 拳の直線の先は、こちらを向いていなければ、風の方向を見誤れば、自らの力で腕をもぎ取ってしまうだろう。
 ギャリン、法輪から神々の法具が飛び出してくるのを指の先に体重をかけて同じ拳の先を狙う。
「おおおらぁあ!!」
「おああああぁ!!」
 法具がまともに同じ場所を抉って少し軌道がずれる。ドオオ!!助走をつけていた力が、体の真横に大穴を開ける。
 旦那の身体に石つぶてが当たらないよう一瞬だけ身体を捩り砂埃を避けながら、法輪に指をかけてビーマの後頭部を叩く――
 ぎゃりん!何度か回転と共に抉ったはずだが、いってえな!!と叫んで血が出たようだが、それだけだ。
「くっそ頑丈!!テメェはそういうとこがよぉ!」
「なんだってぇ?!」
 ――こいつはこの、半神の頑丈さを旦那にまともに向けていたのだと思えば、はらわたが煮えくり帰る。
 俺はお前の!優しさのない強さに!ムカついてたんだ!その強さを、理解にも使えていたのなら!半分は、神である自覚のひとつもあったなら!
 旦那ひとの強さも!ずるさも!良さも!少しはわかったんじゃねえのか!!
 
 カッ、お互いが宝具を起動する。
「戦士の誓いはとうに消え、我らは堕落した!」
「我は風神の子。剛力無双を示す者。嵐の力よ、集いて我が手に!吹き飛べ!!」
 
 ――ガァンッ!!宝具の文言を同時に出し切り、ダメージをまともに喰らう。向こうも、ようやく鎧が欠けまともなダメージが通る。
 ――クッソかてぇな!
「ッン゛おらアッ!!」
「オラオラァっ!!」
 ダメージをいくつかもらったが、まだ、まだまだやれる!体力が減る方が、やる気が出る。
 向こうもダメージが増える。削れ!削れ削れ!先端から、からだから、体が欠けても血がこぼれ落ちても構うな!!
「あ、ちゃ」
 胸の中で、泣きそうな声で、ぼたぼた血が落ちて、欠けた仮面が落ちそうになったのを小さな手が支える。
「血が、」
「問題ねえ!!あんたが俺のこと信じてくれりゃあな!」
……っん!」
 涙声の、表情を確認する時間はない。
 ――キィン――遠くで、赤い光が飛ぶ。
 令呪の解放――やはり千里眼もちで遠くで見ていたか――ビーマの削れた体が、戻った。
 そして――来る!!
 一気に増えた魔力、胸の間の少年だけ、全力で守りながらそれ以外はこちらも宝具の展開に注力する。
 
 バキィッ!鎧がひび割れて、弾けて壊れた。
 ――こちらの宝具は、ビーマに当たらず飛んでいった。
「あ、あーちゃー!あーちゃー!!」
「っか、」
 どうにか旦那には、怪我一つない。俺の血でドロドロなことだけは許して欲しいもんだが――身体に穴が空いたにしちゃ、マシな方だろう。
「あー、ちゃあ……ッ」
…………は、ふ」
 あーあ、肺と喉、だめだわ。
 
「お疲れ、お前が死んでからにしてやるよ」

 振り返れば、ビーマが立っている。に、口から血が出て、ああくそ、煽り言葉の一つも出ねえが。
 俺の笑いに、ハッと気づいたようにビーマが街を振り返る。――令呪を切った時に、マスターの場所を把握したのだ。
 旦那にまた、こんなくだらねえ戦争用意されちゃたまらねえから。
「っくそ、」
 ビーマが旦那に手を伸ばすが、ひかり始めて透けてしまい、掴むことができなかった。口惜しげな顔をした男が、俺より先に空気に消えた。
 
 俺の勝ちだ、このやろう。

 20250323.