はしびろこう
2026-03-11 23:39:24
28368文字
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マハバ特異点

みんな大好き!1ページ練習のちよどさんが描かれたOPEDがはちゃめちに良くて‥三次創作書かせていただいたらアフターストーリーまで頂戴したっていうこの世の夢みたいな一週間でした‥
こちらに掲載許可頂いてるのでみんなぜひ
最初のOPED
最後のマハバ聖杯戦争後日談
がちよどさん作品です!



あとは

 セイバーは、なんだかわからないが引いて、あの様子ならばおそらくもう来ないだろう。
 ランサー、ビーマはどこかで戦ったような話も聞かない。あの派手な戦闘をする男が戦って、広範囲に何の噂も立たないことはない。――戦力として温存されている、と言うことだ。
 キャスター、ライダー、バーサーカーも退去済み。アサシンはあれから何もしてこないところを見るに、あれで退去したと仮定しても良さそうだ。
 ――別れが、近づいている。ビーマを倒しきれば、俺はお役御免。退去することになる。
「あーちゃー!出てこい」
「あん?どうしたよ」
実体化したら琵琶の実をくれた。
「むずかしい顔をしてるぞ」
 これをやるから元気だせ!とにこにこした旦那に、子供に難しい顔見せちまったかと思えば、旦那は頬を軽くぺしぺしと叩く。
 全員グルの、旦那を殺すための聖杯戦争もどきだとしても、旦那もマスターとして俺を使って勝つつもりなのだ。
 旦那はあれから、怖い思いをしただろうに、ずっと「わたしは怖くなかったぞ」「お前を信じてた」と励ましてくれて、本当に情けないことこの上ない。
 ――絶対に、旦那を生かしてこの聖杯戦争モドキを終わらせねばならない。
 幸いにも、今のところ魔力の温存はできている。ビーマ相手に、旦那の魔力を使わずに戦い切れるだろう。
 
「お前が、あのおっかないランサーを倒してもわたしと共にいてくれればいいのに」
 
 ――聖杯戦争が終われば、俺は退去する。
 ――それでも共にと、言ってくれるのはあまりに嬉しい言葉だった。
 ……戦争が終わっても、一緒にって。
 俺もそれを、望んでたんだぜなんて思いながら、もらった琵琶を食べ終えて礼をいって消えようとすれば、ダメ、と手を繋がれて。
「今日は抱っこして、昨日たくさん動いてつかれた」
「しかたねーなぁ」
……ふふ」
 どうしたよ、と思ったが、なるほどとも思った。
 百一人も子供がいれば、大人が一人の子供にかかりきることができる事はないだろう。
 今、一人の大人が自分一人に向き合ってくれることは、おそらく旦那にとってこの上なく贅沢なことなのだ。
「今日はあんたの乗り物になってやらぁ。どっか行きてえところはあんのかよ?」
「遠駆けしたい」
「あ?」
「お前は走るのが早いから、お弁当持って出かけよう」

 ※

 ギーの匂いがまだ残る少年に好きな飲み物を聞かれたから牛乳?と答えたら、牛乳と水を買って、持ち歩ける食事を買った。
 後はたくさん走って走って、いろんなものを見たいとねだられた。それくらいならばお安いご用。
 子供を抱えて走るくらいならば丸一日走ろうと余裕である。
 山に登って鳥の巣を見せて生態系を教えてやったり、崖に足をかけて蝙蝠みたいにひっくり返して世界を見せたり、抱えたまま滝の上から飛び降りて、空中で数回身体を捻って――滝の下の岩に着地してやったり。
 本来ならもっと時間がかかる街に行って食べたことないものを食べてみたり――
 これから先、この一日がドゥリーヨダナの宝の一つになればいい。そんな願いを込めた一日だった。
 最後に花畑が見たいと言うので、崖の上の花畑に連れてってやれば――花の冠を作って、俺の頭に乗せてくれる。夕焼けが地平に沈む前の輝きを見せて微笑んでいるようだ。
――ありがとよ」
 ――この身は、この少年が生き延びるための刹那の戦いのために。
 わかっていても、まだいたい、なんて思ってしまった。

「そろそろ帰らないと」

 ――そうだな、と返して抱きしめながら帰り道に駆け始める。腕の中の少年は、一日遊んで疲れたようでうとうとしていたので、ねれるなら寝ていいぜ、と言っておけば平気だもん、といいながらすぐに寝落ちでしまった。
 陽が、地平に沈む。それでも駆け出す。
 朝まで駆ければ着くことだろう。
 今回はたった一週間、少年と暮らしたあの宮殿に。

 ――朝まで、駆けたら。
 ※
 空は赤らみがみえてくる。
 すでに宮殿も街も見える。
 そろそろ朝の支度をするものが動き出す時間だろう――、そうしたところで。
 
 ――ドォッ!!
 暴風が、空から降って来た。
 
「よお、遠出ご苦労さん。」
 旦那を抱えて回避に転がったが、いきなりの反転に旦那は目を覚まして反射で俺に縋り付く。
 よく通る、風神の子の声に呼吸を落ち着ける。
 
 ――御伽話の序章はここで打ち止め、俺はこいつを殺して旦那を生かす。
 転がって見上げた男が、一応、と言葉を紡ぐ。
「なあ、一応聞くがわかってんだよな」
「あぁ?」
「そいつを生かせば地獄が来るぜ」
――だからなんだよ」
 俺にとっては、この人に会えないことの方が――地獄だろう。
 地獄を起こすために、この人を生かす腹積りは、もうとっくのとうに決まっている。
 
 「どの地獄かぐらい俺が選ぶぜ」

 20250323.