はしびろこう
2026-01-29 21:30:58
25104文字
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メカクレ特異点

メカクレ特異点再録
アシュヨダと、ちらっとパーバソが香るかも
バーソロミュー、アシュヴァッターマン、ドゥリーヨダナ、カルナ、岡田以蔵、最後にパーシヴァルがそっと出てきます



株価
「昨夜の彼は、実にスゴかったよ」
 
 褐色の肌、癖のついた艶のある黒髪からのぞく瞳は夢見るように細められ、以蔵さんの方に熱を持った視線を向けている。
「その言い回しやめとーせ」
 ちょっと具合が良くなった以蔵さんと、テーブルを囲みながら昨日の様子を聞いてみたらの言葉である。手の届く範囲っていうか、もうバーソロミューの後ろ、部屋の一番目立つところに聖杯がある。
 部屋に案内された瞬間、以蔵さんがとって逃げるか?と目配せしたが、ここは星四サーヴァント並みの膂力をした船員がひしめき合う船内である。しかも自分はメカクレとはいえ一発でももらったら間違いなくどこかへし折れる。交換作戦実施時のために動かない方がいい、と軽く合図。
 自分がいれば問題ないとしたようだが、それはそれ。ここで頼れるの以蔵さんしかいないんだからよろしくね、と言い含める。
 気をよくしたらしくまあそがな理由ならしゃーないのう!とのことである。
「昨夜彼はあの酒場でけんかを止めてね」
「ほえー、すごい」
「なんちゃあない、あんなもん」
「なんでもないことないさ。体格は二倍はある男たちの取っ組み合いだ。彼はその腰の『カタナ』を抜くことなく二人とも投げ飛ばしてしまった」
 
 誠にござるか?と言いたいところだけど、まごうことなく、以蔵さんは天才だ。やってのけたんだろう。
 
 前に映像資料で昔(と言っても映像が残せるくらい、だから昭和がせいぜいだけど)の剣豪の資料を見ていたら、以蔵さんが勝手にリモコンで早回し。
「下手くそ、人を斬ったことないぞコイツ」「使いもんになっとらん」「これは見てもええ。そっちじゃない、受け手の方じゃ。大した婆さんやき」と、見ている映像資料を仕分けしてしまった。
 俺からすると何が何やらなんだけど、ワザを持っているか否かを仕分けていると、後でアサシンの書文先生が言っていた。
「マスターの時代にはこがなモンがあったんじゃのう」
「うん、昔もあったら便利だったよね」
「そりゃどうかな。昔はワザを人に見せることらあなかった。構えも、なんもかんも」
「エッ?」
 以蔵さんに向き直れば、に、と頬を緩めていたずらっ子の顔である。
「見したら、わしみたいな天才が、ぜーんぶ技を盗むき」
 
 見たら、その技ができる。そんな人がうろつく時代に映像記録なんか、確かに御法度。ただしかし、その天才が今自分の護衛役というのは。
 以蔵さんに肩を寄せて、耳打ち。
「頼りにしてるよ、天才護衛役」
「ふん、任せえ」
 ちょっと船酔いと深酒で弱ってるけども。それでも以蔵さんは、護衛に関して一度も失敗したことがないと本人も豪語している。
「ああ、目の前でメカクレ推し一メカクレ推しニが戯れている……酒がうまいね」
 ――主に俺たちを見ながら酒煽ってるこの人から守ってもらうことになるかも??いやいや、バーソロミュー(サーヴァント)が言った乱暴目的で連れ込んだら極刑を思い出して耐える。
「さて、そろそろ私は商談にいかなければならないのだが」
 丸一日たくさんの船に乗せてもらって、日は傾いている。
「夜の消灯は早いが、船員たちに後のことは任せて――帰ってきたらまた一杯やろう」
 キラッと目が光る。だいぶん気に入られたみたいだ。そしてその、商談というのがドゥリーヨダナたちが取り付けた予定だろう。
 決行は今夜。
 船員たちの前髪もだいぶ伸びてきた。おそらく、交渉や寝技で済ませるならばこれが最後の機会だ。
 準備にこれ以上時間をかければ、船団全員メカクレになってしまう。――オレはなんの心配をしてるんだっけ?とか、おもってはいけない。

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