はしびろこう
2026-01-29 21:30:58
25104文字
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メカクレ特異点

メカクレ特異点再録
アシュヨダと、ちらっとパーバソが香るかも
バーソロミュー、アシュヴァッターマン、ドゥリーヨダナ、カルナ、岡田以蔵、最後にパーシヴァルがそっと出てきます


戦場

 船上ではバーソロミュー同士が睨み合い、銃で戦い始めた。
 船員たちはどちらが本物の船長かわからず瞠目し、どちらに手を貸せば良いかわからず、とりあえず見慣れないアシュヴァッターマンと、先ほど船長に刀を向けた岡田以蔵を敵とみなして襲いかかる。
 岡田以蔵は、船内を案内されていると前回の通信で聞いた。
 バーソロミュー当人同士は、周りの茶々を気にせず戦える。しかも船員に手を出さなければ間違いなく主力をおける!その間に――メカクレ船員たちを掻い潜り、聖杯を手に入れてもらえばそのままおさらばできるという寸法だ。
 アシュヴァッターマンにその話は通してある。マスターはすでに無事を確認、確保済み。
 勝手知ったる船上で、優雅に踊るような銃撃戦、剣戟戦が繰り広げられる。――夜中に刀とチャクラム、カトラスがぶつかり合い火花が散る。
 ああ、夜の戦いはなんと華やかなのか!
「まさか、自分が敵にいるとは思わなかったよ」
「そうかい?でもそういう人生もあっていいだろう?存分に楽しもうじゃないか!」
 キン!――ズドン!キ、キィン!!ギチッ!腕力も胆力も、技巧も武器も全て同等。
 したいこと、されると嫌なこと、全部手に取るようにわかる。
 今宵一夜の奇跡を、船の上で踊ろうじゃないか!

 ▪︎

「イゾー!聖杯の場所はわかるな?!」
「おう!」
 インドの英霊と背中を合わせる。でかい声がよく通る男だ。
「ならさっさとかっぱらうぞ!一直線で構わねえ!背中はまかせな!前だけ向いていきやがれ!!」
 この男のことはよく知らないが、インドの坊さんみたいなもんらしい。
 完全にヤンキーにしか見えんが――ウデが確かなのは、知っている。
 ふっ、息を吐きながら体を落とす。落下の重さの反動で駆け出す。
「そっちこそ!置いてかれんようきぃつけぇ!!」
 地面を滑るように移動、船員を切りつけながら人の間を縫う。向こう脛、指、腕、手首。甲板に人体の部品が落ちていく。
 人がどういうかは知らない。しかし岡田以蔵にとっての切断時の感想としては、大根切るのとさして変わらない――しかし全員を両断するには数が多い。
 隙を見て着物の袖で血をぬぐう。
「この中じゃ!」
 ドアを蹴り開け、聖杯に手をかける。振り返れば、インドの英霊は見事に後ろを守り切って道道は死屍累々である。
 ――これであとは――撤退するだけ!

 ▪︎

「とったどーーー!!」
 船内から岡田以蔵の声が響く。
――目的はそれか」
 勘がいい。さすが私! 口元の微笑みと、ついでに銃弾をお見舞いすれば、流石に少し向こうの顔に冷や汗が落ちる。
 そうだよね。よく知っているとも。君は、私だから。
「なあ、君もこの世界を望んでいるだろう?」
「メカクレに溢れた、すばらしき世界のことかい?」
「そうだ!君も――私の味方になれば、この世界に生きられる!」
 カストルを構えながらの勧誘である。なんて情熱的で素晴らしい提案なのか。視線を滑らせて、流石にぐらつく。
「ふふ、ここでなければらしい提案だったな」
「今からでも遅くない、――この世界のために戦わないか?」
 キン!キン!キン!至近距離での戦闘なため、刃がらかち合うたびに火花が散る。手袋がなければ火傷まみれになっていることだろう。
「ーーキミも望んだだろう!メカクレの世界を!太く短く生きるなら!目にするものを好きなもので埋め尽くしたいと!!」
 ーーそうだとも。わかるさ。
「おおーーい!!バーソロミュー!撤退するぜよ!!!」
以蔵推しの声に現実に戻る。手には聖杯!!マスターのいる船は――よし、遠くに行っている。さすがカルナ
「お仕事お疲れ様!以蔵くん!」
「おう!わしに任せとけば、」
 ――ズルゥッ!!
 ――彼の名は岡田以蔵。
 ――でかい船は初めての男であった。沖田総司然り、歩法は剣技の基本であり、奥義でもある。無論、天才剣士の足腰は強い。しかしそれでも――ギッシギシに揺れる船の上でとんだりはねたり、ましてや船の上で突然の揺れに慣れた船員たちとの追いかけっこなど――
 
「なんじゃあああーーーー!?!」
 
 転倒、待ったなしであった。
 聖杯が、すっぽ抜ける。
 全員が月明かりを反射して輝く聖杯を口をあんぐりと開けながら目で追った。――弧を描き――海へ落ちそうになったところで、ちょうどマスターの少年がカルナの漕ぐ船のへりを思い切り踏み切って、空中でキャッチし――ドボン!夜の海へ落ちた。
「うおおお!みんな!聖杯確保ーーーー!!!」
「はっはっは!!さすがだマスターー!!」
「よし、引くぞ」
 
「待て!――君は!この世界に!未練はないのか!?」
 
 その言葉に、一瞬体が固まった。未練がないかだと?船員たちを見る。
 ああ、どこを見ても素敵なメカクレ。未練なんか、
 ――ドボン!一瞬意識を持っていかれた間に、船員が船から飛び降り――マスターの確保に泳ぎ始めた。
 今レイシフトしている中で、海の上で自由が聞くのは自分のみである。カルナも宝具で推進にできるが、今は海上に船員が浮いている。不要な殺しは、絶対にしない男だ。
「マスター、令呪を切れ」
「わかった!!」
 遠くから、声がする。カルナに、宝具を?
 ――否!!
 キンーーキンッキン!!海が光ったと思えば!身体に力がみなぎる。カルナの船に縋るびしょ濡れの少年が令呪を切った。
「バーソロミュー!宝具を!!」
「総員!戦闘準備!!」
 それと重ねて、過去の自分が悲痛な叫びをあげる。
「お前もメカクレ派のはずだ!!!」

ーーそうとも、それでも。
私は彼の、世界を救いたいという声に、応えたのだ。

「全砲門一斉掃射『高貴なる海賊準男爵の咆哮ブラック・ダーティ・バーティ・ハウリング』!!」

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