望月 鏡翠
2026-01-22 20:21:07
30877文字
Public 庭師は何を口遊む 霊山班
 

やばい店に潜入捜査するパロ その2

自陣の二次創作/庭師通過済み前提/https://privatter.me/page/696cf10600785 の続き


 やはり睡眠は取るべきだ。形を整えるだけならミーティング前に終わると思っていたプログラムは、予測した通り一週間かかった。
 理想はネットワークに接続した瞬間に動き、以降は全てを自動で行ってくれるものだ。そうでないと、電子機器に詳しく巩心にあとの操作を任せることになってしまう。その場に留まる時間が長いほど、捜査員の危険は増す。
 しかし、必要な機能を織り込んだところ、挙動が重くなりすぎてプログラムが走った瞬間に一般的なパソコンのスペックでは端末がフリーズして落ちるようになってしまった。
 比叡の端末で動いても意味がないのだ。
 同等のスペックのパソコンが店内にあるのかなど、それこそプラグラミングをした人間が内部に潜入して調べなければわからないことだった。それができるなら、そもそもこんな手間は必要ない。
 遠回りはしたが、一応の完成は見た。
「USBを差すところがあって、インターネットにつながっているものならなんでもいいです。そこにこれを差してください。あとはなんの操作もしなくても、勝手に動きます」
 あとはこれを店内の巩心に渡せばいいだけだ。
 潜入してしばらく経ち、新人のキャストや黒服が入ることができない空間があることがわかっている。名目上は地位のあるお客さまの個人情報を扱うため、あるいはプレミアのついたお酒類のような高額商品を保存するためとなっている。
 また換気や空調設備の室外機の規模や数から見るに、あの店はもっと広い空間を備えているはずで、地下にも施設が広がっていなければ説明がつかない。
 ゲスト側としては霊山が特別な招待を受けていた。非合法な雰囲気を感じさせはするものの、婉曲な言葉遣いの中に犯罪の証拠としてあげられるような決定打はない。
 捜査一課は、身元不明死体が都内で暮らす一人暮らしの男性であることを突き止めた。顔が潰されていなかったため、歯のレントゲン写真から確認が取れたのである。しかし転居の続きをしていなかったようで、住民票に記載の住所には別の人間が暮らしていた。
 ここ数年の自宅の場所が不明となるため、勤務先や死亡直前の足取りはいまだにわかっていない。
 つまり、事件はあまり進展していないのだ。潜入捜査に焦りは禁物。とはいえ成果を求めるのなら、今回内部の情報を手に入れられるようになれば得るものは多い。
 店内に隠された空間があるというのが証明できる図面一枚でも手に入れられたなら、それだけで営業許可を取得する際の届出と異なることを理由に公に捜査の手を入れられる。他の課から人手を回してもらう大義名分ができるのだ。
 少しは、チームに何か貢献できただろうか。
 USBに収めたそれをテーブルの上に置く。
「これ、その辺のPCにぶっさしたらどうなるんだ」
 霊山が見た目はただの記録媒体と見分けがつかないそれをまじまじと見つめた。
「警察のセキュリティに穴が開くので、絶対にやめてください。絶対に。開けた穴が繋がる先が僕の端末なので、まあ別に悪用とかはないですけど。最悪僕がテロリストみたいになるので、本当に、絶対に、やめてください。流石に首が飛ぶだけですみませんよ」
「ハハ、本気にするな。言ってみただけだ」
「本当かなぁ」
 不安になる答えだ。
「じゃあ、渡してきます」
 比叡はそれを取り上げるように、自分の胸ポケットにしまった。