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望月 鏡翠
2026-01-22 20:21:07
30877文字
Public
庭師は何を口遊む 霊山班
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やばい店に潜入捜査するパロ その2
自陣の二次創作/庭師通過済み前提/
https://privatter.me/page/696cf10600785
の続き
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覚悟などできているはずなのに、指先が震えた。
痛みのせいだと言い聞かせる。アドレナリンが本当の骨が折れた痛みを遠ざけているうちに、事を片付ける必要がある。
比叡が落ち着くまでに、店は折れた手を冷やすための氷を用意してくれた。これから殺そうというのに、何の気遣いだろうと愉快なきすらしてくるが、それは悪趣味なショーを楽しむために、必要なものだったのだろう。
小瓶を手に取る。
息を止めると一気に逆さにして口の中に流し込んだ。
どろりとした粘性のある液体は、落ちてくるまでに時間がかかり喉にへばりつくような不快感を残した。妙に甘ったるく、そして花粉のような粉っぽさと青臭さが残る。
吐きそうになるのを、堪える。
何度も言い聞かせる。これは心理的な反応だ。毒だと思って飲んだから、体が拒否反応を起こしているだけだ。多量に摂取したときに、どれほど効果が出るまでの時間に、差が出るだろう。
それまでに少しでも、量を稼いでおくしかない。
一瓶ですら、残すわけにはいかない。
二本目を喉に流し込む。
喉から何かせり上がってきて、無理やり口を塞いで押し込んだ。体が震える。蠕動を全身を使って押さえ込む。黒くねばつく毒が胃液と混ざって、泡となり、唇からこぼれた。息がうまくできない。
予想していた症状と違う。だが、今更引き換えすことはできない。
視界が揺らいだ。目測を誤り、瓶を掴もうとした手が空を切る。霊山が、優しくその手に瓶を握らせてくる。
「ほら、まだ半分以上残っているぞ。頑張らないとなぁ?」
ひったくるようにそれを受け取った。正しい力加減がわからない。想像以上に指先に力が入らなくなっていて、渾身の力で握りしめるしかない。
喉に流し込む。もはや味などわからない。感覚がなく、口に入ったかどうかもわからない。ただ唇の場所で小瓶を逆さにして中身を流し込むだけの動作に集中する。
呼吸音に水音が混ざる。
巩心の叫びは、言葉になっているのかもしれないが、比叡には聞こえなかった。耳鳴りが酷い。掠れた息の音がうるさくて他の音が聞き取りにくい。
嘲る顔で見下ろす黒服たちの顔が、混ざり合ってぐるぐると回って見える。
鼻水が垂れてきている気がする。指先で拭うとベタつくどす黒い血で、手が染まった。ぼたぼたと垂れて服を汚し、口の中に流れ込んできた。
巩心が椅子の上で身を捩り、体を揺らして何か言っている。手錠をかけられた手首が、赤く擦り切れて痛ましく血を流している。
大丈夫です、と口にしたかったが声が出なかった。
「うるせぇ! 騒ぐんじゃねぇ」
彼の押さえつけられている椅子が、蹴り飛ばされた。腕を戒められ、受け身すらとれないまま、顔面から床に落ちる。這いずるように顔を上げた唇に、鼻から垂れた血が筋を作った。
「
……
れ、ぃは、手お
……
出すな」
痙攣する内臓を抑えながら、声を絞り出す。
男を睨みつける。
死の状態で絞り出す声と殺気に気押されたように、椅子を蹴り飛ばした男は後ずさった。
「おい、手を出すなと言っただろう。まだ、ショーの途中だ」
霊山が手のひらで、場外の揉め事を制す。
「あと二本だ」
ゴボ、と喉から血が溢れた。
テーブルの上の二本を見た。たったそれだけ。
もはやここに至れば、量など問題ではない。
二本まとめて掴むと、口の中に喉の奥に流し込んだ。もはや血を吐き出しているのか毒を飲んでいるのか、わからなかった。
体を支えることができない。平衡感覚もない。
気がつけば、視界が横になっている。
排水溝が立てるような、ゴボゴボという音がどこから聞こえるのかと思えば、比叡の喉が鳴っているらしいのだ。
床に倒れたままの巩心と、目線の高さが同じだった。
――
大丈夫ですよ。大丈夫。君は助かる。
手を伸ばす。届く距離ではなかったし、もとより届いたとして、この血に塗れた手では、彼に触れてやることなどできるわけもなかった。
視界が白く滲んだあと、比叡は意識を手放した。
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