柩木
2025-11-15 17:28:24
18035文字
Public 崩壊:スターレイル
 

丹穹|ワンライ企画参加作品まとめ

ワンライに参加した時の小説をまとめました。文字数の上限いっぱいになるまで追加していきます。



じゃれる


丹恒の肌色に映える鮮やかな緑の耳飾り。翠色の石を削り出して作られたのだと思われるそれには細かい細工がされているのを初めて知った。めったにない機会だからと眺めていていたら触れたくなって、好奇心が促すまま艷やかな石に指先を這わす。すると丹恒の肩が大きく揺れた。
それまで本に注がれていた顔がゆっくりと振り向き、実に三十五分ぶりに丹恒と視線を合わせる。眉を潜め、怪訝そうにしている表情には大きく「何をしているんだ」と書かれているような気がした。

「急にじゃれるな。驚くだろう」

「だってもう少しで読み終わるって言うから待ってるのに全然終わんないんだもん。暇つぶしだよ」

こちらの言い分にも一理あると感じたのか、それ以上の苦言はなくため息が返ってきた。穹としては十分大人しくしているつもりなのにそれはないだろうと、自分の額を彼の肩口にぐりぐりと押し付ける。

「暇つぶしならスマホがあるだろう。ゲームでもしていてくれ」
「デイリーは終わらせてるし、今はスタミナ回復待ちでやることがない」
「ならこの作業が終わったら声を掛けるから――
「今は丹恒にくっついてたいから却下」
……そうか」

丹恒の腹に回した腕の力を強くした。そう、今は丹恒にくっついていたい気分なのである。スマホの充電をするように、穹にも充電が必要なのだ。ただ丹恒の傍にいるだけでもチャージされていくのだが、より近い方が急速充電が出来る。だから穹は資料室を尋ね、作業の邪魔にならないよう一応配慮した結果彼の背中から抱きしめているのだ。

「なら急に耳を触るのはやめてくれ」
「それはごめん。珍しくびっくりしてたもんな。嫌だった?」
「嫌、という程ではないが……

そこで丹恒は言い淀む。全然返事が帰ってこないので穹は顔をあげたが、丹恒の視線はもう本に戻ってしまっていた。だが、抱きついているからこその距離感だから分かる事もある。至近距離で見た丹恒の耳は薄っすらと色付いていて、穹は気を良くした。

「許可取ったら触ってもいい? 触るよ。今度は右耳ね」
「は、おい勝手に、ッ」

すり、と滑らかな肌の感触を楽しむように親指の腹で撫でた。大きなイヤカフが収まっている左耳とは違い、右耳には小さな石がワンポイントあしらわれたシンプルなデザインである。覆われている範囲が少ない分、弾力のある感触を楽しむことが出来た。
指で皮膚をなぞったり、軽く爪をそわせたり。色んな触り方をして、めったにないこの機会をすっかり楽しんでいた。

「なぁ、このピアスの石ってなんの」
――穹」

振り向きざま、ぐっと顔を寄せて来たかと思えばあっという間に唇を塞がれる。話の途中で塞がれた唇は中途半端に開いていて、その隙間へ無理矢理押し入るように舌を差し込まれた。同時に、穹の耳元で丹恒の爪が皮膚を優しく這っていく。その瞬間首筋から背中に向かって耐え難い痺れが走っていくのが分かってやっと、自分は丹恒に酷いことをしたのだと分かった。

「じゃれるなと言ったはずだ」

これは逆鱗に触れてしまったのではと内心焦っていた穹だが、いささか乱暴に重ねた唇が唾液に濡れて艶めく様に思わず見惚れてしまっていた。