柩木
2025-11-15 17:28:24
18035文字
Public 崩壊:スターレイル
 

丹穹|ワンライ企画参加作品まとめ

ワンライに参加した時の小説をまとめました。文字数の上限いっぱいになるまで追加していきます。



ハグ


「丹恒。やっぱりぎゅっとしてくれ」

滞在を許されたルトロに戻って仮眠を取った後、丹恒の目の前で両腕を広げた穹が唐突にそう言った。

「これからファイノンの火種の返還に立ち会うんだろう? あまり待たせるのは……
「ぎゅっとするのは一瞬じゃん。一分もかかんないし誤差の範囲内だって」

穹の向こう側に創世の渦心へ続くルトロがある。そして今、道を塞ぐ穹の眼差しには強い意志が宿っているように丹恒は感じた。抱きしめてもらえるまではここを動かない。言外にそう言われている気がする。
ここは穹の要望を叶えてしまった方がすぐに解放されそうだと判断し、両腕を広げた穹を迎えに行くような動作で抱きしめた。腰に腕を回して抱きしめると、お返しとばかりに肩へ彼の腕が回される。

「すんなり抱きしめてくれるじゃん」
「まぁ、今はな」
「あの時もすんなり抱きしめてくれよー。無言で拒否されてちょっと傷付いたぞ俺はー」
……TPOを考慮しただけだ」
「ふーん」

出立前の穹にぎゅっとしてくれないのかと請われた時には混乱してしまって何も言えなかった。アグライア達がいる前で何を、とか。これから神に挑むというのに緊張感がない、だとか。色々考えが駆け巡って疑問と呆れとが混ざり、何も言えなくなってしまったので、あの反応になってしまったのだ。
あとから、あの行動は穹の不安が表面化したものかもしれないと思い、何か言葉だけでもかけてやるべきだったかと少しだけ後悔もした。だから今は穹の要望を叶えたいと思う。

「あー……。癒やされる」
「そんなにか」
「うん。やっぱスキンシップっていいな」

穹の体を抱きしめると同時に、呼吸、体温、鼓動が伝わってくる。生きた人の証を全身で感じ取り、今この瞬間だけは何も心配しなくていいのだと精神的な安らぎを得た。
だがずっとこうしてはいられない。この後の予定も考えなければ。

「穹。そろそろ」
……そうだなー」

身体が離れ、体温が消えていくその瞬間。穹が顔をぐっと近づけて来た。たった一瞬のことで、丹恒はまぶたを閉じる前に唇を塞がれていた。重ねられた穹の唇は柔らかく丹恒のそれを食んで、離れていく。

「これで傷付いたのチャラ、な」