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柩木
2025-11-15 17:28:24
18035文字
Public
崩壊:スターレイル
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丹穹|ワンライ企画参加作品まとめ
ワンライに参加した時の小説をまとめました。文字数の上限いっぱいになるまで追加していきます。
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傘
この日羅浮には雨が降っていた。それ自体は珍しい事ではないが、強く地面を叩く程の強い雨は中々ない。
雨は嫌いではない。水の気配は落ち着くし、雨脚が強くなれば人々はそれを避けようと傘の内側に隠れるか、屋内に留まる事を選ぶ。崩れた天気をきっかけに人通りの少なくなった通りを歩きながら、丹恒は指定された場所へ向かって歩いていた。自身を覆う傘の他に、左手には畳まれた傘を一本。これを使うだろう人物は、もう視界の中にいる。
「穹」
待ち合わせに指定された店は所謂喫茶店で、店先にはバルコニー席が用意されていた。円形テーブルの四カ所に椅子が置かれた座席が三つあるが、あいにくの天気であるからか穹の他に客はいない。屋根があるので濡れはしないが、体は冷えるだろう。
店に背を向け、ぼんやりと空を眺めるように座っていた穹は丹恒の姿を確認するとひらひらと手を降った。傘を畳み、穹の傍へ近づく。
「どうして中で待っていないんだ」
「なんとなく?」
「身体を冷やすぞ。
……
誰か来ていたのか?」
テーブルの上には穹のものと思われるカップの他に、もう一杯カップがあった。咄嗟に誰かと話していたのかもしれないと思うが、それにしては立ち昇る湯気の量が多い。
「それは丹恒の分。傘を届けてくれたお礼のカフェオレです。砂糖はお好みでどうぞ」
「
……
そうか。では遠慮なく」
穹の隣の席へと腰掛ける。自分ではあまり選ぶことのないカフェオレだが、断る理由はなかった。カップに触れると淹れたてのように温かい。
穹が勧めた通り、テーブルの上には砂糖やナフキンなどが置かれたトレーがあったがそれには手を伸ばさず、そのままのカフェオレを一口。ミルクで柔らかくなったコーヒーの苦みはとても優しい。喉を通り胃に落ちるとホッとする。
丹恒がカフェオレを一口飲む間も、穹はぼんやりと雨を眺めていた。
「心ここにあらずと言った様子だが、考え事か?」
「うん。丹恒について考えてる」
「俺?」
「
……
なんで俺の手に触れてきたのかなぁ、って」
二口目を飲もうとしていた動きが止まる。穹の疑問には心当たりがあった。きっと幽囚獄での出来事を言っているのだろう。必要に迫られて再度訪れることになった幽囚獄は、記憶の中と違わず寒い場所だった。丹恒はもうそこの囚人ではないが、記憶や経験は時に理性を超えて精神に作用する。
その結果の行動だったのだが、何も知らない穹の視点で考えればあまりにも唐突な行動だっただろう。過去とは違うのだと自分に言い聞かせたくて、穹の手に触れたのだ。
「そ、れは」
「最初は珍しい事もあるもんだなって、それだけだったんだけど
……
」
たった数秒の沈黙。雨がバルコニーの屋根を叩く。
「俺も手、触っていい?」
ぼんやりと空を見ていた穹の視線が丹恒に向けられる。それで納得出来る事があるのならと右手を差し出した。
幽囚獄で自分がそうしたように、今度は穹からそっと触れてくる。自分よりも温かい穹の体温が丹恒の指先へと移るのはあの時と同じだ。
このぬくもりが、あの時は必要だった。
「ありがと」
「もういいのか?」
「うん。なんとなく分かった気がする」
穹は聞かない。自分の正体を晒した時と同様に丹恒を大切に扱ってくれている。それが申し訳ないと思いつつもありがたく感じていた。
そこからは他愛のない話をしながらカップ一杯分の時間を過ごした。それでも雨脚は弱くなることなく、結局は降りしきる雨の中を歩くことになった。
「
――
そうだ。丹恒の傘に入ってもいい?」
「
……
狭いぞ」
「いいよ」
丹恒が持ってきた傘は畳まれたまま穹の右手に収まり、広げた傘の内側に入ってきた。
そのまま二人は身を寄せ合いながら雨の中を歩いていく
――
。
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