柩木
2025-11-15 17:28:24
18035文字
Public 崩壊:スターレイル
 

丹穹|ワンライ企画参加作品まとめ

ワンライに参加した時の小説をまとめました。文字数の上限いっぱいになるまで追加していきます。



真似


※丹恒がオンパロスを離れても騰荒としての力を振るえるのか不明ですが、この小説では使えるとしています。



「丹恒も存護になって、列車の守りはさらに堅くなった訳だな」

紡がれた物語のページを捲りながら穹はそう呟いた。
オンパロスでの一件が終わり、次の星へ向かうまで小休止の時間を過ごしている。列車のラウンジには今、穹と丹恒の二人しかいない。彼とはここで待ち合わせていた訳ではなく、ひと息つこうとラウンジを訪れたところ、そこで本をめくっている場面に遭遇したのだ。そんな穹の隣に座ってぽつりぽつりと他愛のない話をしていた流れの中で、丹恒が新たに歩むことになった存護の話になった。

「俺もなのも丹恒も存護じゃん? もう列車の守りってカッチカチなんじゃないかって思うんだ」
「そうかもな。……存護の力があればと思った事はあったが、まさか本当に手に入れる事になるとは思わなかった」
「そうなのか? 全然気付かなかった」
「言ったことはなかったからな。……攻撃は最大の防御という言葉もある。列車の護衛として俺は俺が出来うる方法で列車を守ってきたつもりだが、それでも力不足を憂う瞬間はあった。――今回の旅では……特に」

自分の手が届く範囲であればまだ何とか出来たかもしれないが、そうでないこともある。特に穹は本人すら知覚できないところで何かに巻き込まれていることが多くて、オンパロスでは特にそういった場面が多かった。
槍を振るうことでどうにか出来た場面というのがあまりにも少なく、手を伸ばしてもすり抜ける喪失感も味わった。旅の初めに追撃されたことも。それにより穹が一度命を落としたことも。千年の孤独の中に穹を取り残してしまったことも。どれもこれもが、丹恒にはどうすることも出来なかったことだ。

「そう? 丹恒はずっと守ってくれてた気がするけど」
……初手で守れなかっただろう」
「あー……。あれはまぁ、その後なんとかなったし」
「何とかなったのはオンパロスの特異性があったからだ。次同じ事が起こればどうなるか……

考えたくはないが、最悪の事態を想定することはその対処にも繋がる。だからこそ反芻することはやめてはいけないと思うのだ。その為丹恒は時々考える。次は、次こそは俺が――
そんな丹恒の思考だが、不意に頬を突かれて止められた。穹が手を伸ばし、丹恒の頬をぐりぐりと突いている。

「な、んだ急に――
「もしまた、誰かが犠牲にならなきゃならない時が来たら」

穹は真っ直ぐに丹恒を見つめている。その瞳はいつになく真剣味を帯びていたが、丹恒にはそこへ僅かに怒りのような物が見えた気がした。

「一人目は丹恒にさせないから」

聞いたことがある台詞だ。これは紛れもなく、幽囚獄で丹恒が口にした言葉。監獄に閉じ込められて不安そうにしている穹にかけた言葉だ。

「そ、れは」
「丹恒の真似ー。どう? ドキッとした?」

ぱっと表情を明るいものに変えた穹は、丹恒の頬を突くのをやめて笑った。

……ある意味、だいぶ」
「だよなー。俺もあの時ドキッとしたし、そんなことにならないようにしようってめっちゃ思った」

本を閉じ、穹はおもむろに丹恒の指先をそっとすくう。指先だけを重ねるだけの、柔い繋がり。
しかし、これだけでふっと心が軽くなる。

「俺達二人共守る力があるんだから、背中預け合っていこうぜ」
「ああ。……これもあの時の真似か?」
「へへ、さすがにバレるか」

ただ重ねていた指先を深く絡めて、ほとんど恋人繋ぎのようになった二人の手。それを穹は掲げて、眩しいくらいに笑った。