柩木
2025-11-15 17:28:24
18035文字
Public 崩壊:スターレイル
 

丹穹|ワンライ企画参加作品まとめ

ワンライに参加した時の小説をまとめました。文字数の上限いっぱいになるまで追加していきます。



幸せ


「幸せってなんだろうな」

それまでプライベートルトロの天井をぼんやりと眺めながらカウチに寝そべっていた穹はそんな事を呟いた。考えても答えの出ない事は、誰かに尋ねてみるのもいいと思ったのだ。
幸いな事に今はすぐ傍に丹恒がいる。彼は穹にとって歩くアーカイブのような側面があった。分からない事は彼に聞けば大抵答えが返ってくる。
穹が寝そべるカウチとは別のカウチに座って資料を読んでいた丹恒が、文字を追っていた視線を穹に向けたのを視界の端でぼんやり認識した。

「何かあったのか」
「うーん、まぁ……。人助けって時々いいことしたなーってだけじゃ終わらないんだ。今回はそういうやつだった」

種族を越えた愛を見た気がした。そして、愛だけでは越えられないものも、見た気がした。
とある天罰の狩人の記憶を垣間見た穹は、過酷な環境に置かれた人間が狂っていく様を目の当たりにした。歳月の力を使って眺め見た記憶は穹にとって映画を見ているようなものだが、その後味はあまり好ましいものではなかった。こうして人助けが終わった後でもなんとなく考えてしまう。
もっと違った結末も選べたのではないかと。
しかし、過去は過去である。今更変えられない事を考え続けたところでただ時間が流れていくだけだ。そろそろ切り替えなければ。

「緊迫した状況が続くオンパロスで、隣にお前がいる事を俺は幸いだと思う」

無理矢理にでも話題を止めるか、変えてしまおうと考えていた矢先の思わぬ台詞に起き上がる他なかった。
そんな事をさらっと言った丹恒がどんな顔をしているのか。思わずまじまじと見てしまう程度には衝撃で、しばらく穹と見つめ合った後で丹恒は気まずそうにゆっくりと視線をそらした。

……それって俺をキュンとさせる作戦?」
「今は言葉を濁らせるべきではないと判断しただけだ。他の意図はない」

はっきりと言う割には視線は逸らされたままだし、頬も実感赤く色付いているように見える。それを指摘して茶化す事も出来たが、今はニヤニヤするだけにとどめた。

「幸せとは何かを聞いただろう。価値観によって幸せの定義は変わるが、……俺の幸せについてなら話せる」

再び真っ直ぐに穹を見つめて、そして――

「お前がいてくれて良かった」

そんな事を少しだけはにかんで言うものだから、穹は衝動的にカウチから立ち上がって丹恒を迎えに行くように抱きしめ、勢いのままにキスをした。唇の柔らかさを確かめるように軽くはんでから離れると、突然の事に呆けている丹恒と視線が絡み合う。

「なんかモヤモヤしてたのがどっか行っちゃった。ありがとう丹恒。俺も丹恒がいてくれて良かった。幸せ」

心の底から信じられるものがあれば、それだけで幸せなのだとなんとなく分かった気がする。少なくとも、丹恒が言う事ならば疑うことなく信用できる。
穹の腰にゆっくりと回される腕の感触だけで、ポッカリと空いた胸の穴が満ち足りていくのだから。