柩木
2025-11-15 17:28:24
18035文字
Public 崩壊:スターレイル
 

丹穹|ワンライ企画参加作品まとめ

ワンライに参加した時の小説をまとめました。文字数の上限いっぱいになるまで追加していきます。



ツンデレ


丹恒が騰荒としての力を得てから、その周囲に動物達がひしめき合う場面が増えた。大地の黄金裔としての権能を求めてか。それとも大地の半神に安心感を覚えるのか。動物が多い森等ではそれが特に顕著だ。神悟の樹庭のような場所を歩けば丹恒を中心に動物達が集い、それに対応せざるを得なくなる。
はじめは穹もその光景を見て楽しませてもらっていた。動物達に頼られている丹恒を見て自分のことのように誇らしくなったし、そんな彼らへ真摯に対応する丹恒にもすでにマックスまで高まっている好感度がさらに上昇した。丹恒の頭の上に小動物が落ち着いた時にはスマホで何枚も写真を撮ったものだ。
しかし、である。歩く度にこうなってしまえば多少なりとも辟易してしまうのは仕方のない事だと思う。
今日も今日とて動物達に優しく接する丹恒。探索の為に神悟の樹庭を訪れた二人を見つけると、先行き不安な彼らは一時的なものであっても安心感を求めているのか駆け寄ってくる。穹が潮に飲まれている間に大きく、逞しく成長したその体躯をなるべく小さくなるよう屈み、尾てい骨から伸びる立派な尾で彼らを潰してしまわないよう自分の体にくっつけるように丸め、キメラ達の話し相手になっている。その眼差しは温かい。
彼らの境遇を思えば仕方ない。そう自分を無理矢理納得させるのは簡単だ。見ないふりをすればいいのだから。だが、こんなこと思ってはいけないと分かっていても、それが少し、寂しい。
こっちを向いてほしいと思ってしまう。

「すまない穹。待たせてしまった」
「別に。そうでもないよ」

戻ってきた丹恒に対し、思いの外冷たい声が出てしまった。自分でそう感じるのだから、丹恒はもしかしたらもっと冷ややかな返答に感じたかもしれない。内心冷や汗をかきながらちらりと丹恒の表情をうかがうと驚いたように目を見開いている。

……穹、その」
「大丈夫だってば。ほら、行こう」

もたもたしていたらまた動物達に囲まれかねない。穹はさっさと歩き出した。
一緒に行動していている筈が、穹が先を歩きその後を丹恒がついてくるという奇妙な状況。こんなこと滅多にないが、居心地が悪くてなんとなく早足になってしまう。
なんでこんなにモヤモヤするのだろう。理性的になれない。動物達に嫉妬している自分が嫌だ。でも、丹恒は俺のなのに――

――穹!」
「うぉ! ……っと」

後ろに強く引っ張られたかと思えば背中が何かに当たる。それが丹恒の身体で、瞬時に彼の腕で抱え込まれるのと、目の前に迫るエネミーが槍に貫かれるのはほぼ同時だった。
考え事に気を取られるあまり、ヘイトを集めてしまっていたことに気付かなかったらしい。危険な状況に置かれていたのだと認識した途端、現金な心臓が今更早鐘を打ち始めた。丹恒がいてくれなかったら怪我は免れなかっただろう。

「怪我はないか?」
「ないよ。……ありがと」

なるべく平静を装って無事であることを伝えたのだが、丹恒からは腕の拘束を解く気配が感じられない。背後から抱きしめられるような格好のまま数秒が経過した。その間に片腕だけの拘束が両腕になり、丹恒の尾も右足に絡みついている。
これでは動こうにも動けない。

「俺が何かしてしまったのなら謝らせてもらえないだろうか」
……丹恒は何も悪いことしてない」
「だが……
「とりあえず離して」
……分かった」

足に絡んていた尾が解かれ、両腕がゆっくり、名残惜しむように離れていく。大地の火種を受け継いだ丹恒は、普段よりも体温が高い。自分の身体からその熱が抜けていくように、自分の体温が戻ってくる。
それを迎えに行くように振り返り、丹恒の胸板へ顔を埋めた。

「怒ってたんじゃないんだ」

とくとくと脈打つ鼓動を感じ取りながら話を続ける。

「俺の丹恒なのに、って……思っちゃったら、感じ悪くなっちゃった」

あまりにも子供っぽすぎる八つ当たりだ。こんなのを吐露するなんて恥ずかしいのだが、丹恒との関係がこのままギクシャクする方がずっと辛い。
やっと再会出来たのだから、出来る限り一緒にいたいのだ。

「ごめん」
「そうか……。そうだったのか」

大きく息を吐き出してから丹恒はさらに穹の身体を抱きしめる。足が少し浮いてしまっているが、今の丹恒であれば問題ないだろう。
自ら撒いてしまったわだかまりの種を無事なかったことにできて安堵した穹の鼓膜が、無邪気な声を拾う。

『丹恒様、本当に救世主様のこと大好きなんだね』
『そりゃそうだよ。ずっと探してた番だもん』
『あっ、ラブラブだ!』
『ラブラブだね!』

なんだかもっと聞かせてほしいような、恥ずかしいような会話が聞こえてくる。恐らくキメラ達がすぐ近くでこの様子を見ているのだろう。それより、彼らの発言の方が気になる。主に、ずっと探してた番のあたりを詳しく聞かせてもらえないだろうか。
それまで丹恒の胸板にくっついていた顔をあげようとすると、後頭部に添えられた手のひらがそれを邪魔した。

「穹。外野が騒がしいから屋内に移動しよう」
……うん。それがいいな」

頼れる大地の半神が赤面しているところを見ていいのは俺だけだ。