伊紀の話

終さよキャラ化の話

存在証明


 ふと考える。立野伊紀は本当に存在したのだろうか?
 いま確かに自分はここに存在している。立野伊紀としての自我がある。記憶もある。けれど肉体はない。
 この町には立野伊紀の存在を証明してくれるものは何もない。家も。家族も。友達も。通っていた学校も。
 立野伊紀にとって、古彩町は故郷ではない。住んでるわけでもない。気に入って何度も訪れてはいたけど、将来的に住む予定もなかった。
 たまたま古彩町で最期を迎えることになった上、こんな不確かな存在となって居座ることになってしまったけど。
 この町を離れられない自分には確認できない。立野伊紀を知る、生きた人間を。
「こんなところで何してんです?」
 その声に振り返る。不機嫌そうに眉をひそめた顔。
 ──ああ、そうだ、そうだった。なんて皮肉なんだろう。
「おー、おにーさん。今日も外回りご苦労さま」
 この町で俺が唯一確認できる『立野伊紀が存在していたことの証明』が、大人になってしまったこの子だなんて。


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 戸里さんと。

 2019/11/17