生き延びた話
じゃんじゃか鳴り響くカノンに手探りで枕元のケータイを手に取る。
「もしもし
…」
『なんだ、立野、まだ寝てたのか?』
「うるせー、何の用だよ」
『合コン誘われたんだけどメンバー足りなくてさ、お前彼女と別れ』
話を最後まで聞かずに電話を切る。人の睡眠時間を奪って言うことがそれか、あの野郎。
寝直そうかと思ったけど、その前に何か飲みたい。と、冷蔵庫の扉を開けたところでまたカノンがじゃんじゃか鳴り響く。
野島の奴しつこいなと思ったけど、表示は実家からだった。無視したい気持ちをなだめて、電話を取る。
「はい?」
『もしもし、伊紀?ああよかった』
「何?どうかしたの?」
『どうしたのじゃないわよ、アンタ。ニュース見てないの?』
「見てないも何も、テレビないから
……」
『今ね、古彩町だったかしら、大火事で町が燃えてるそうなのよ』
古彩町が。
「マジで?」
『お父さんは距離があるから大丈夫だって言うけど、お母さん心配でね。伊紀も火の扱いには気をつけるのよ、夏だからって火事は怖いんだからね。ところでアンタ、お盆に帰ってくるつもりはないの?』
母さんの話に生返事をしながら、昨日まであの町に居たなんて話は飲み込んでおくことにした。
火事の規模ってどんなもんなんだろ、民宿のおばちゃんや町で出会ったじいちゃんばあちゃんの顔がよぎる。無事でいてくれればいいんだけど
……ところで論文のテーマ変えなきゃいけないかな、これ。
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伊紀生存if。
鳴り響く『カノン』は着メロ。
生きていれば電話を取るのでメッセージは残らない。
(関連:
メッセージが三件あります。)
2019/11/21
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