akinoshiroihana
2025-03-30 21:14:51
28993文字
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ノーマルぷらいべったーゲッターネタ倉庫1




卒業式

東映無印ゲッターは1月から3月の再放送期間(おそらく誰が死ぬかとかの会議?)を挟んで5月最終回。なので意図された武蔵の死は3月だったんじゃないかと思われます
なのでこの時期に書きたかったネタ

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must ye then perish, and without me?


学校には今朝連絡が行った
彼がいなくなったことは、全校行事のある今日は、その後のショートホームルームで、まず彼の教室でのみ告げられるだろう。あれでどうして、「学園で知らぬ者はいない」一人である―――あった彼の急逝は。


戦いが激化する二か月も前なら、ミチルが兄の遺影を抱いて「ほかの先輩たちと一緒に卒業」することも考えられていた。だが今日研究所はてんてこ舞いで、彼女さえ学校に送り出すのを忘れているだろう。身体が空いているとすれば、それはもう負傷者ぐらいで。

「なんだ、早かったじゃないか」
新聞包みを広げながら竜馬は言う。みな出払った教室の一隅。
武蔵相手にもお宮参りしたがってる御卒業の先輩方がいるとは聞いていた、だから自分が代わりに出向いて詫びだけ入れてやろう、などと言いつつ、竜馬に続いて医務室でゆらりと身を起こした隼人の事を、彼は背後の気配でだけ感じ取りつつ先に研究所を出た。
「いやそれがやっこさん方、毒気を抜かれちまったみたいでさ」
気を落とすな大事にしろだって。なんだっていうんだろ
「そりゃあ―――
竜馬は振り向いて、教室入り口に立つ相手を見る。先だってのゲットマシンの事故による負傷で隼人の端正な面立ちの半分は大きなガーゼと包帯でいまだ覆われており、見えている方にはただ痛み苦しみをを耐え忍ぶしかなかった患者のような濃い疲労と、言っても詮無いものと救いを求める言葉を何度もこらえた、赤いものが今にも滴りそうな唇と眦が死人のような顔色の中にあった。そしてそれが今日まで学内でも目にしたことのない、浅間学園の黒い詰襟の学生服姿で、今日の卒業式のための正装かと見るにはあまりに重い、取るものも取り敢えず喪服代わりにようよう身にまとってここまで来たようなていであれば。
隼人は今にもそこにくずおれるか倒れかねなくも見えたのだろう、違うのに、悔しさと怒りで立ち尽くしたまま炎に包まれて吠え叫びそうだというのに。自分と同じに。そう竜馬は思った。

「制服、間に合ってたんだな」
転入時に仕立てが間に合わなかったと私服で登校し、ずるずるとそのままになっていた隼人だったが
「そりゃそうさ」
返した隼人は歩み寄る、同じく制服姿の竜馬にナフタリンくせえと小さく笑った。
「それを言うならお前だって」
「沙織嬢―――さおりさんとお祖父さんの表向きの葬儀の時にも着たとこだよ、これで二度目さ袖を通したのは」
その後すぐにクリーニングに出したらしいそれは、はたして式服めいた気持ちのいいよそよそしさが香った
「そうか。」

*

手洗いで花瓶を洗っていれば、体育館の方から起立、礼、着席を促すピアノの音がする。そして聞こえてくる校歌斉唱。
「武蔵の、黄色の花が咲いてないか研究所の庭を見たんだが、梅や桜ばっかりで、あとは小さなパンジーしかない。
 ほんの少し前までは黄色い梅が咲いてたと思ったのに」
「蝋梅は冬の花さ」
「正月から咲いちゃいる水仙は白っぽいのばかりで、黄色はこれからの花だって」
……ごめんよ」
窓の外はかすかに紅を帯びた白、桃色、寒緋桜の紅ばかりが群れ咲き風に揺れ、青く輝く空に散る。午前九時のほの温かいひかりとつめたい大気の向こう、鶯たちが鳴いた。
「しょうがないから花屋のおばさんに店を開けてもらって買ってきたんだ」
「チューリップが嫌いって奴はそういないと思うぜ」
「ああ」
その花言葉までは、竜馬は知らない
「これだけ活けて、在校生が戻って来る前に俺達は帰ろう、俺もお前ほど露骨じゃないが只事じゃない格好だ」
それに半ドンでうきうきしてる奴や先輩との別れにめそめそしてる連中と会うとなにかがうっかり爆発しちまう
腕を吊ったままの彼が言う
「そうだな、そうしておこうよ」

*


起立 礼 着席 ピアノの音


来年はちゃんと参加しよう、そして武蔵と三人で卒業するんだ
……

巴 武蔵        『はいっ』

あなたは本園での全過程を修了したことを証します昭和五〇年三月×日『おめでとう』
                               『ありがとうございます』


「足元、低くなるぞ」
「見りゃわかるよ……⁉」
「俺は絶対死なないぞ、死なせないぞ、死なせないでくれ死なないでくれ」
絶対にここに来るんだ

欠けた遠近感を補足するために差し出されたと思った手が強く引かれ、そのまま相手の心臓に押し当てられた
吐息が、溢れそうな涙を揺らすような距離で囁くように、内緒の約束事のように、二人だけのとても大切な話だからそうするのだというかのように、竜馬が言った
何かが零れそうになりながら隼人は思う、するよ、約束するよ、ああだけど

もしそれがかなわないならば
ただ同じ瞬間に死なせてほしい

言葉にできないそれを胸の奥へと落とし、ただ手を握り返し、仰ぎ見れば青い空にはよきわかれのうた

仰げば 尊し




(了)