akinoshiroihana
2025-03-30 21:14:51
28993文字
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ノーマルぷらいべったーゲッターネタ倉庫1




「  」肥ゆる秋

ネオゲかサーガ號、自分にしてはめずらしく、この竜馬と隼人、デキてたようです

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「は、やと……っ」
そこ、切ってくれっ
熱い息とともにそうせがまれた相手は形のいい眉を微かにひそめつつ、目の前の赤と薄黄色に染まった木綿糸を音を立てて切る。じょきり、と。その僅かな振動だけで「おふっ」とおかしな声だか音だかを立てるのに、そういえばこいつはやたら声を聞かせたがるタイプだったと思い出す、AV俳優だったら女のよがり声芝居の邪魔をするなと怒鳴られているだろうと。相手がAV女優ではなかったからよかったものの、そう、ほんとうに、などと。

夜半、畜生やられたと山道の泥と赤いものに汚れて現れ、池に面する別荘の大窓を叩き割らんばかりだった親友はしかし、

縫合テープを持ってくるからまず傷の洗浄と消毒をさせろと取り出された救急キットの物々しさと匂いとに、それまで残っていたらしい酒気と赤らみがさーっと引いた。よせよせ冗談じゃねえ、お前が現役時代、てめえの傷口のゴミ取るのに新品の歯ブラシと消毒液持ち出した時の事は忘れてねえぞ、いや知らん、そんな事にささやかな脳味噌のありったけを使い切るな、うるせえ、と。俺流でいいから手伝いだけやれと、かくて今に至る。
最初は別荘族の連れて来た犬でも離れてんのかと思ったんだよ、だけど闇の中ばらばらっといきなり数で来やがって、しかも角かなんかが付いてやがるときた。先月の仮装でユニコーンかなんかのカッコさせられてるのがいたからよ、ありゃあカジキの角かなんかだったか危ねえったらねえ。だからこっちも「コラッ!」て怒鳴ってみたわけよ、そしたらさあ、
 ぎゃあおおっ
犬でもなけりゃ、鹿たちのぴいぴい可愛い声でもねえんだ。すげえ禍々しいったっらねえ
ぎゃあおっぎゃあっ、それにノコギリみたいなのが頭のどこかに付いたそいつらが怒ってんのか逃げ場所が無くて混乱してんだかで襲い掛かっても来て、しまいにはその歯に引っ掛かって押し切り?されてこのざまよ。きっちりやっつけはしたけど、なんだったんだよありゃあ、あいててシーッ!
季節ごとに住人が何かの果実酒を作るために補充されている35度のホワイトリカーをさっきまでは消毒に、今は水のようで面白みがない味だが痛みを忘れるためのコップ酒としてぐいと呷るその姿に相手は溜息をついた

「キョンに会うのは初めてだったか、お前」
「あ?誰だって」
「キョンだ。」
え、やっぱおまえんとこの誰かのペットだったのかよ、と慌てる男に、
陸のブラックバスさ、市役所に言って回収してもらえればいいんだが、怒られるかなたぶん、と彼は神隼人は細い顎の線に白く長いが男らしく少し爪を伸ばしっぱなしな手を宛て考え

          *

神さんなんだよ、しっかり休めって言われてたのにだめじゃん、とは言葉とは裏腹の若い嬉しそうな声。ほんとに食っちまっていいの?と一文字號はアヒージョの薫り高い油湯気にテカテカになりつつぴかぴかはしゃぐ
「おお」「ああいいぞ、急な貰い物だから冷蔵庫に到底収まらん」
残りはショウガとニンニクをうんと利かせて誤魔化すしかないか、とキッチンでエンドレス唐揚げ作りに突入している隼人と久しぶりに訪ねて来たというその親友が声だけで返す
「いいのかよあんなバンビちゃんみたいなの殺っちまって、その上食っちまうとか」
「やったのはお前で食ってるのはあの子だ、私は知らない」
「ウワー外道」
「だから地獄案内もできるのさ」
「  」

ああそれにな、いい犬は卵が産めなくなったと無慈悲に潰されたブロイラーの肉をこそ嫌がるぞ、もっと自由に生きて死んだ、血の味の濃い肉が恋しいと。
そう言い隼人は部下に持たせる土産の茶色い肉の群体の中のひとかけを、親友の口に放り込んだ
「あ、ウッマ。」

昨夜浅間山方面より麓に下り、郊外を騒がせると思われたキョンは、かくて永遠に行方不明となった。


*


「そういえば思い出したんだが」
「おう?」
「あの時お前があんまりわあわあ言って止めるから、『普段もっと声出せとうるさいお前は、これで身も世も無い声を出すかもしれない俺を聞いて行かないのか』と俺が言ってみて、そうしたらお前が怒った」
そうだよ!

「てめえの痛えのが具体的に想像できりゃあ、色呆けしたくてもできねえもんだよ」
お前がどんだけ痛えかって考えたらよ

ああ。なんだそういうことだったのか

皮肉気でも冷たくもなく笑んで彼は言う。


「だからお前は出て行ったのさ」




(了)