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ゑ/圓堂
2025-03-26 23:47:58
23375文字
Public
管理NO3250本丸
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【刀剣乱舞】その愛を何と呼ぶ・後編<web再録>【創作男審神者×一文字則宗】
2021年8月インテックス大阪開催の閃華の刻で頒布し現在は完売となったさにごぜ本のweb再録となります。こちらは後編となります。
再録にあたり(色々ととんでもなかったので)そこそこ加筆修正を行っています。
刀剣乱舞というジャンルにきて初めて出した、最初のさにごぜ長編です。前編のあと3250本丸が時間遡行軍の襲撃に遭い、それをきっかけにふたりが結ばれる話です。
本をお迎え下さった皆様本当にありがとうございました。
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主が執務室を出て隣の寝室へ向かおうと廊下へ出ると、何やら黒い影が廊下に居るのが見えた。
またしても誰も起きている者は居ないだろうと高を括っていた主の心臓は、大仰なほどに脈を打つ。
そろそろと近付く。
やがて月灯りだけの仄暗い世界に目が適応した時、やはり主は再び心臓を跳ね上がらせる羽目になった。
夜目にも見紛う事のない、ふわりと裾を広げる菊の花の如き髪。
月光の下でより透き通る白磁の肌。
薄玻璃の瞳が、ゆっくりと主を捉える。
「生き返ったか、死にたがりめ」
今宵も夜着の浴衣に羽織姿の一文字則宗の、相も変わらずじっとりとした陰険な声音に、主は比較的素直に頭を垂れた。
「お陰様で、だ。
……
悪かった」
主の謝罪に、板張りの廊下に直に腰を下ろしていた一文字則宗は緩慢な動作で立ち上がった。
そして、背にした柱に身体を預ける。
「どう悪かったか、解って言っているのか?」
まるで悪戯を叱る父親のように、一文字則宗は主へと尋問紛いの問いを投げかける。
主はバツの悪さを隠しきれずに、まだ少し水分の残る伸びきった髪を掻き回した。
「えらく責めるじゃねぇか。解ってるよ」
そう言いながら一文字則宗の前を通り過ぎて、主は寝室の中へと移動しようと試みた。
だが、その思惑は一文字則宗の手によって遮られた。
ひやり、とした彼の指が、主の手首を捕える。
その温度の低さにも、彼の指の感触そのものにも、主はぞくりと背筋を粟立たせた。
主は振り返り一文字則宗の顔色を窺ったが、夜闇に濃さを増した自身の影に塗り潰されてよく判らない。
御前、と彼を呼ぶ。
彼の下に集う一文字の者達がそう呼ぶから
——
そう彼自身には語っていた。その本心はしかし、出逢ってすぐの心持では、彼の名を素直に呼ぶ事に迷いがあったからである。
彼の纏う菊花の所以に、あの時はまだ余りにも囚われすぎていた。
ゆっくりと主の顔を見上げる一文字則宗の色素の薄い瞳が、金糸の睫毛の奥で揺れていた。
息を飲むほどに、美しかった。
あの晩とは反対に、一文字則宗が主の手を力を込めて引く。
主の身体が半歩ほど一文字則宗へと近付き、同時に一文字則宗も同じだけ距離を詰めて、主の胸の中へと自らその身を預けた。
愈々主の鼓動は煩いほどに全身に響く。
僅かに身じろぐ主をよそに、一文字則宗はその鼓動の中心へと静かに耳を当てる。
夜着越しにも伝わる一文字則宗の肌と体温の感覚に、主の胸はひりひりと灼けつく。
「
……
二度とこんな思いにさせてくれるな」
か細く震える、一文字則宗の掠れた呟きは、静かな夜更けの本丸でどんな音よりも主の鼓膜を揺さぶった。
主は、胸の中の一文字則宗の身体に両の腕を回した。
初めてその腕に抱き締めた一文字則宗の体躯は、想像していたよりもずっとしなやかで、それでいてしっかりと戦う男の身体をしていた。
「ああ、
…
約束する。
…
約束するから、」
俺だけのものでいてくれ。
そう告げて、主は一文字則宗を抱く腕に力を込めた。
彼の剥き出しの言葉に、一文字則宗は主の胸へと埋めていた顔を上げた。
今にも溢れそうな瞳の中の雪融け水が月の光にきらめく。
「何を言っている。僕は顕現してからずっと、お前さんだけのものだ」
一文字則宗の、震えながらも力強いその言葉に主は息を飲む。
少しだけ動揺し、やがてその言葉を飲み下し、彼は一文字則宗に向けて深く頷いてみせた。
肩から背へ、背から頭へ、彼を確かめる。
金の髪に指をくぐらせ、そっとあやすように撫でる。
やがて、一文字則宗の腕が同じように主の背へと回る。
主がそうしたのを真似るように、主の身体の輪郭を確かめるようになぞる。
互いの鼓動が混ざり合って心地好い。
まるで、今まで知らず知らずのうちに欠けていた何かが満ちていくように。
主がそっと恭しく一文字則宗の頬へと手を差し伸べる。
導かれるように、一文字則宗が主へと瞳を向ける。
静寂の冬の夜空の下、静寂よりも静かに二人の唇が重なり合った。
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